高原淳写真的業務日誌 > 使える!ビジネス迷言 > 使える!ビジネス迷言・第34話「玄人には苦労が伴う」

使える!ビジネス迷言・第34話「玄人には苦労が伴う」

使える!ビジネス迷言・第34話「玄人には苦労が伴う」

おはようございます。
 仕事はたまっているのだが、一日休養日とする。午後は買い物へ。夕方、ある本を自炊(断裁してPDF化)。ちょっと変わった本で、本文がすべてえび茶色で刷られているのだ。このインキ色で読み通すと目が変になりそうだ。白黒でスキャニング。eインクのタブレットで表示したら読書は快適になった。

玄人には苦労が伴う

我が社は謄写印刷(ガリ版)から始まった会社。その後、活版印刷、オフセット印刷と主力となる印刷方式がシフトしていき、将来的にはオンデマンド印刷(無版印刷)が中心になると考えられる。孔版→凸版→平版→無版という言い方もできる。無版印刷の先にはペーパーレスが待っているのかもしれない。
 印刷の前工程では1990年代に一大変化が起こった。DTPである。DTPは大都市よりも地方の印刷会社から普及していった。大都市では、アナログの分業体制ができあがっていたためだ。我が社でも写植機が使われなくなった。写植オペレーターはDTPを覚えるしか、生き残る道はなかった。写植という職種がほぼ消滅した。写植の次は写真製版(アナログ製版)である。2000年前後普及しつつあったCTP(データをダイレクトに刷版に焼付ける機械)により、写真製版も不要となっていく。製版会社は事業領域を大幅に変更せざるを得なくなった。
 長い時間をかけて培ってきた技術・ノウハウであっても、数年のうちに使えなくなってしまうことがある。一つの技術のライフサイクルは急速に短くなってきている。僕も1977年から撮影技術・暗室技術を高めてきたが、2000年からデジタルカメラに切り替えると、一部の技術はまったく不要のものとなった。暗室に入ることはなくなった。暗室作業のすべてがフォトショップに置き換わった。
 多くの技術がアナログからデジタルに置き換わり、素人でも扱いやすいものとなっていく。それは世の中にとってはよいことなのだが、苦労して技術を積み重ねた玄人にとっては受難の時代と言えるかもしれない。何10年も苦労して身につけたのに、昨日今日始めたばかりの素人にも同じことができてしまうのだ。技術一本で生きてきた玄人は、センスのいい素人に太刀打ちできない。このような現象が世界中のあらゆる業界で起こっているのではなかろうか?
 玄人には苦労が伴う。ただ真面目に技術を覚えていけばよいというものではない。しかし、苦労して覚えた技術・ノウハウが無意味であるはずはない。体が覚えている技術がうまくパソコンやアプリとつながっていないだけの話である。
 玄人が避けて通ることのできない苦労とは何か? それは自分の身に付けた技術をもう一度デジタルで学び直すことだろう。デジタルネイティブ世代に比べて不利なように思えるが、案外そうでもない。デジタルネイティブの弱点はアナログ的な深みを十分知らないところにある。モノクロ写真の粒子をデジタルで再現することは可能だが、印画紙の上の粒子とは質的に異なる。LPレコードを聴くとノイズが入るが、CDやダウンロードした曲にはそれがない。
 アナログの弱点が作品の味になる。それをデジタルで再現しようとしても、本物ではないため、どこか人工的なものとなる。ただ、本物を知らない人には区別することができず、人工的な作品を本物として認識することになるだろう。そのようにして失われていくものはいつの時代にもある。昔は数10年単位での変化だったが、今は数年、早いものなら数ヵ月である。
 玄人には苦労が尽きないわけだが、自分が人生を懸けて積み重ねてきた知識、技術、感性が失われてしまうことはない。現役である限りは、今の時代にアクセス可能な最低限の技術を使いこなすべきではないかと思う。それにより「センスのいい素人」とは別次元で活躍することができるはずだ。
 素人も未知の世界を知ろうとして苦労している。玄人が素人以上に苦労するのは当然のことと言える。

ソーゴー印刷株式会社

〒080-0046 北海道帯広市西16条北1丁目25
TEL.0155-34-1281 FAX.0155-34-1287

高原淳写真的業務日誌