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第4回 さん付け効果

第4回 さん付け効果

おはようございます。毎日元気にお過ごしでしょうか?
 所沢での大規模な片付けから1週間。帯広に戻ってからは懸命の入稿作業。一昨日あたりから、何かおかしい……。原因がわかりました。今頃になって、筋肉痛その他の諸症状がやってきたようです。火曜日までは懸命すぎて症状を自覚していませんでした。こんなこともあるんですね。M氏も同じような状況にあって、僕より1日前に自覚症状が現れたようです。たぶん、今日あたりから回復することでしょう。
 そんな状況にあっても、僕のもとには情け容赦なく(?)さまざまな用件がやってきます。たぶん、それは我が社の企業文化によるものではないかと考えています。

役職付けによる錯覚

いつからだったのか忘れましたが、我が社では「役職」ではなく、「さん付け」にするよう、みんなに呼びかけました。
 確か、スロウ創刊からしばらくの間、僕は「社長」と呼ばれていました。ですから、さん付けが始まったのは10年ちょっと前のことだと思います。たぶん、最初はみんなぎこちなかったと思います。僕自身も、さん付けで呼ばれることにちょっとした居心地の悪さを感じていました。
 1、2年でほぼみんななじんだと思います。一部保守的、または頑固な性格の人(?)のみ、役職付けで呼んでいました。今はそれもほとんどなくなったかな……。ただ、僕に対してはまだ「社長」と呼ぶ人が2、3人いて、それはもう仕方がないとあきらめています。「社長」はニックネームなのだと考えることにしました。
 自然にできた企業文化とは異なり、意識的に変えようと思った「さん付け」ですから、意図通りにはならないだろうと思っていました。その割には、比較的スムースに移行できたのではないでしょうか。我が社には柔軟かつ革新的な文化がある。改めて、そう感じました。
 この点、新入社員の場合はまったく問題ありませんね。「我が社はさん付けです」と最初に伝えていますから、入社日以降はみんな素直に、さん付けしてくれます。○○課長とか、○○主任といった、ややこしい呼び方をしなくてすむ。僕としては、全員の役職を覚えるよりも、実際の業務を覚えてほしいと願っています。みんなの名前を覚えるだけでも大変なのに、役職まで覚えようとしたら2倍の情報をインプットしなければなりません。

もちろん、さん付けに変更したのには、もっと大きな理由があります。たぶん、さん付けを導入している企業の狙いはだいたい同じところにあるでしょう。
 上下関係ではなく、フラットな組織にしたいという意図。昨日書いた通り、言葉によって人の意識は変わりますから、人の呼び方が変われば人間関係も変わってくる。社長、部長と呼べば、本人の実力や人格とは関係なく「自分より上の人間なのだ」と思い込むようになる。
 上下関係意識を使って組織を動かしていこうと考える場合は、それがプラスに作用することでしょう。組織の末端にまで指示命令を行き渡らせたいと考えるなら、役職付けは好都合。けれども、個人の自主性を引き出したい場合には、さん付けのほうが好ましいのではないかと思っています。何よりも、役職に関係なく、さまざまな頼みごとをしやすくなる。この効果が意外に大きい。
 僕はフォトグラファーという立場なので、社長と呼ばれていた頃から写真に関する頼みごとをされることが多かったのですが、さん付けになると、他にもいろいろ頼まれるようになりました。社長という立場は変わらない。けれども、見え方は少し違ってくる。たぶん、他の役職の人にも同じような現象が起こったのではないかと想像します。
 組織というものは、ちょっとした錯覚を活用しながら成果を生み出そうとするところです。
 役職付けというのもそのひとつだと僕は考えています。役職が与えられるのは、その人に能力や責任感があるからに他なりません。ですから、役職者の発言や意思は尊重されて然るべきなのですが、それが部下の自主的行動や自由な言動を妨げるものであってはならない。このあたりのバランス感覚をみんなが持つこと。それが我が社の社員には求められます。

東京時代、僕は半年間を除いて「さん付け文化」になじんでいました。最初に1年間だけ務めた職場(会社全体ということではなく、僕の配属された部署のみ)も、実は「さん付け」でした。職場のトップだったのは、業界の中でも屈指の重要人物でした。だから、さん付けが徹底していました。フラットな職場ゆえの緊張感がありました。若手にも一流の仕事と一人前の成果が求められたのです。
 転職し、小さな編集プロダクションに入社すると、今度は「役職付け」が徹底していました。なじめない気持ちを持ったまま半年後にはその会社を退職。その後は、M氏と仕事をするようになり、再び「さん付け文化」の中で10数年仕事をするようになりました。
 そんな経緯を経てソーゴー印刷に入社しましたから、また「役職付け」かぁ……と正直言ってうんざりしていました。
 ところが、恐ろしいことが起こったのです。
 2000年12月社長就任(公式には2001年1月)。その後、「社長」と呼ばれ続けて2、3年たった頃のこと。「社長」と呼ばれても違和感を感じなくなった自分を発見したのです。それどころか、妙な居心地のよさのようなものを感じてしまっていた。
 社長としての実力を身につけていればそれでもよかったでしょう。しかし、どう考えても実力も実績もない。そんな中、役職で呼ばれてその気になってしまっている自分がいる。そのことに驚き、このままではダメになってしまう……。たぶん、そんな理由から「さん付け」の導入が決まったのだと思います(当時の記憶はほとんどない)。
 おかげで、僕自身救われました。僕同様、「さん付け」に救われた役職者もいるのではないかと思います。役職に安住するのではなく、役に見合った実力をつけるべく、努力し続けなければならない。そんな企業文化を築き上げていきたいものですね。

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