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紙の本と電子書籍11 児童書の電子書籍

紙の本と電子書籍11 児童書の電子書籍

おはようございます。
 昼間は休日として過ごす。夕方近くになって、2時間だけ仕事。頭の中は少し整理されてきた。だが、何か忘れていることがあるような気がする。

児童書の電子書籍

気になる記事があったことを思い出した。それは「家庭の蔵書数と子供の学力」について。今年の5月、文部科学省が小学6年生と中学3年生200万人以上を対象に調査したもの。
 これによると、家にある本の数が25冊以下という回答が約3割。26冊~100冊が3割強。101冊~500冊も3割強。501冊以上が約5%。学力テストでは、家庭の蔵書数が多いほうが正答率が高いという結果が見られた。もちろん、家に本がいっぱいあれば子供の学力が上がるという単純なものではない。だが、日常的に読書に親しんでいるかどうかが、子供の学力に影響を与えていると考えるべきだろう。蔵書数の差には親の収入格差が関係している、と記事には書かれていた。教育格差につながらないような方策が必要だ。
 9月18日の新聞に「ポプラ社が小中学校向けに電子書籍読み放題サービス」を立ち上げたという記事が載っていた。現在は無料体験版で、2022年度から有料版に切り替えるそうだ。児童書の読み放題サービスを始めたのは、「住む地域や家庭環境、経済状況に関係なく本に触れる機会を提供すること」が目的という。ポプラ社のほか、10社が参加表明し、2000冊の児童書が揃うことになるらしい。
 出版社としては「紙の本へ誘導すること」も重要な目的といえる。果たして、電子書籍に親しむことで紙の本を読みたいと思う気持ちを高めることができるのか? ここはやってみなければわからないというのが正直なところだろう。紙の本で育った大人世代からすると、電子書籍では物足りない、紙の手触りを感じながら読むことが大事……などと考えたりする。最初に読んだ児童書が電子書籍だったとしたらどうなのか? 電子書籍だけで満足する子供が増えるような気がする。
 児童書の電子書籍読み放題サービスによって、読書機会の格差はある程度埋められるに違いない。だが、一般の人が電子書籍を読むようになってから、まだ10年しか経っていない。電子書籍が読書に必要なすべてを備えているわけではない。長い歴史を持つ紙の本の魅力と価値について知る機会を増やすことも重要だろう。
 紙の本で案外重要ではないかと思うのは、背表紙である。書店の中には面陳列(表紙を見せる陳列方法)にこだわっているところもあるが、僕には背差し(背表紙を見せる陳列)のほうがわかりやすい。本のボリュームが一瞬でわかるからだ。知りたいこと、インプットしたい情報はたくさんあるものの、読了までに膨大な時間が必要な本は読みたくない……。そんな心理が働くためか、知りたいテーマと本の文字数を比較し、字数の多すぎる(または少なすぎる)本は避けることがある。僕の書棚にある本を見ると、1.5~2センチの厚み(単行本の場合)が圧倒的に多い。
 電子書籍に背表紙という概念はない。あったとしても、バーチャルな背表紙であり、本の文字数とは関係ない。ボリュームのある本を手に取って、「これを読み切るぞ」と覚悟を決める(大袈裟かな?)。紙の本ではそのようなプロセスを経て購入する。
 電子書籍で育った子供が紙の本を読むようになるかどうか。ここは何ともいえないところ。だが、人は基本的にアナログなものが好きなようである。音楽をダウンロードで聞いていた人がLPレコードを買うようになったり、スマホで写真を撮っていた人がフィルムカメラを使うようになったりする。電子書籍以外知らないで育った子供が増えていったとしても、紙の本がなくなることはないに違いない。それよりも、あらゆる方法を使って読書機会を増やすことが重要だと思う。

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