
おはようございます。
朝7時20分出発。S氏とともに阿寒町へ。最初の取材は9時半から。レンズが曇りやすい場所。ドライヤーを吹きかけ、一瞬(といっても30秒くらい)のうちに撮影する。次の取材先は車で2、3分の場所。建物が興味深い。外形的にということではなく、その背景に興味を持った。取材3件目は阿寒湖。昼食は久々に奈辺久のわかさぎ天丼。数年ぶり……どころではない。10年ぶりくらいかもしれない。午後1時、取材再開。ここも建物に特徴がある。だが、それ以上に作品とコーヒーの味に深みがあった。終了後、再び阿寒本町地区へ。4件目は料理撮影。比較的初期のスロウ・バックナンバーが並んでいた。阿寒町最後の取材は菓子店。人が集まってゆっくり過ごせる場所を備えている。内観、商品のほか、外観も撮影したが、すでに夜景になっていた。
帯広到着は6時半頃。最後の取材は馬車BAR。意外にもしっかり撮った写真が手元にない。このため、写真と動画を撮ることになった。実は何を隠そう、馬車BARに乗車するのは今回が初めて。実際に乗ってみると、内部はけっこう広く感じられた。2階からの風景は新鮮なものだった。まったくの偶然だが、元社員のI氏と遭遇した。8時半頃帰宅。1日6件取材したのは久しぶりのことだった。
わかさぎ天丼の感動ポイント
昨日はツメツメのスケジュール。それでも昼にわかさぎ天丼を食べることができたのは実にラッキーでした。
僕が最初に奈辺久のわかさぎ天丼を知ったのは、スロウ創刊の頃。たぶん、創刊直後の2004年だったと思います。初代編集者H氏に連れられて食べたのが最初。他の編集者とも何度か来たこともありますが、最初に受けたインパクトあまりに大きい。いろいろなメニューがあるものの、以来、僕が注文するのはわかさぎ天丼と決定してしまいました。
僕には「いろいろなものを少しずつ食べたい」という欲求はなく、豚丼、ジンギスカン、とんかつといった、主役が明確な食べ物を好む傾向があります。わかさぎ天丼もそのひとつ。バベルの塔のように積み上げられたわかさぎの天ぷら。これをやや低めのアングルから数秒間鑑賞し、最上部のわかさぎを口にする。ここに最初の感動ポイントがある。だが、間もなく「ご飯をどのように食べるか」という課題に直面する。ご飯はわかさぎの下にほぼ隠れてしまっている。箸さばきを間違えると、塔が崩れてしまうかもしれない。そんなちょっとしたスリル感を味わいつつ、丼の縁に箸をこじ入れ、わずかな空間を広げていく。わかさぎと一緒に適量のご飯を口に放り込むことができれば御の字だ。適度な緊張感とわかさぎ+ご飯のベストバランス。ここが第二の感動ポイントである。この後の作業はわかさぎとご飯の配分を間違えないように食べ進んでいくことだ。半分くらい食べたところで小休止。ここでようやく漬物を口に入れることになる。折り返し地点を越えたからといって、油断は禁物だ。白飯という急流の上をわかさぎが滑り落ちる可能性があるからだ。滑り落ちても実害はないが、ここまで慎重に箸を運んできた僕としては、最後まで完璧に事を進めていきたい。昨日は10年ぶりのわかさぎ天丼にも関わらず、集中力が途切れることなく、実にバランスよく食べきることができた。すばらしい料理。そして食べ方だった。最後に味噌汁をすすったとき、満足感とともに静かな感動を僕は味わっていた。一連の心の動きをS氏とも共有したいと思ったが、たぶん共感は得られないだろうと思い、事務的に会計を済ませ、午後の取材先へ足早に向かった。
取材ではなく、わかさぎ天丼の話になってしまいました。高揚感がよみがえったためか、文章も「だ・である調」となりました。取材活動から得るものは大きい。そして、取材活動に付随する活動(たとえば食事や移動中の車の中での会話)からも、僕らは多くのことに気づき、何かを感じ、本づくりに生かされていくこととなります。次に訪れたときには、レイクロブスターことウチダザリガニを味わってみようと思います。