
おはようございます。
昨朝も今朝も、ふだんより1時間半遅れての始動となりました。いずれも前夜夜更かししたためです。しかし、いろいろ興味深い話を聞くことができました。一昨日は釧路、昨日は十勝の話。
昨夜の中小企業家同友会とかち支部5月例会の講師は、十勝総合振興局長、三井真氏でした。テーマは「故郷十勝への応援歌 ~十勝の無限の可能性について語る~」というもの。アイデア豊富で何ともおもしろい話。よく考えると不思議な講演でした。ビジネスプランのプレゼンを聴いているようだった……。聴くうちに、僕の頭の中にもイメージが伝わってきました。
地元愛の強い人はいい仕事をする
三井氏の講演の中に、何度か「愛着」「誇り」といった言葉が出てきたことに僕は着目していました。これは決してめずらしいことではありません。けれども、自分の言葉として口にされており、しかも多岐にわたる話の根底に愛着と誇りが貫かれている。このあたりに、僕は心強さと親しみを感じていました。僕と同じように感じた例会参加者は多かったのではなかろうか?
さて、十勝は北海道の中でもちょっと変わった目で見られることがあります。やけに元気な地域というイメージ。他の地域の人からは、経済的にも活気があると映っているようです。「帯広の夜は賑わっている」。一昨日は釧路で、昨日は帯広で同じ話が出てきました。単純に景気がいいというようなことではなく、十勝にはどこかしら特別な活気があるのでしょう。
そうした元気さの根底にあるのは、「地域エンゲージメント」ではないかと僕は考えています。地元に対する愛着心。これがやけに強い。十勝で生まれ育つと、自然にそのようになっていくのでしょうか?
思い起こすと、僕も地元に対する愛着心が強いことにあるとき気づきました。高校まで十勝で過ごし、大学進学のため1980年に大阪へ。すると、なぜか十勝のPRをしていたんですね。38年前、学友の大半は「十勝って何?」という状態でした。帯広市と十勝支庁(当時)の関係がわかる人は皆無。北海道に関する情報の薄さを何とかせねばならない。勝手に、僕はそう思って北海道、とりわけ十勝とはどういう場所か熱心に伝えていたのです。
僕はそれが当たり前のものだと思っていました。自分の生まれ育った土地に愛着を持ち、それがいかに素晴らしい場所であるかを説く。自然にそうしていたわけですが、世の中には愛着心が薄い人もいるということがわかり、少しだけビックリしました。「自分の田舎には何にもない」と言う人たちもいました。これはちょっとさびしいことです。
十勝には日本一と呼べるものがいくつもある。その多くは農産物ということになります。我が家の家業とはまったく関係ないわけですが、そうした日本一のものが地域にあると、やはり愛着心や誇りにつながっていくものです。地域には「日本一と呼べるもの」が必要ですね。
地域エンゲージメントは、自社へのエンゲージメントにも少なからぬ影響を及ぼしているのではないかと僕は考えています。
自社の成長・発展にはエンゲージメントが必要です。一昔前であれば「ロイヤルティ(loyalty)」という言葉が使われていたでしょう。忠実とか忠誠といった意味。今は、自社に対する忠誠心よりも、もっと対等な感じのするエンゲージメントという言葉を積極的に使いたいですね。エンゲージメントには、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう」といった意味合いもあるようです。地域エンゲージメントの場合は、住民と行政が一体となり、双方が成長に貢献しあう、ということになります。十勝をそんな地域にしていきたいものです。
我が社の社員に限らず、十勝で仕事をしている人は「十勝が好き」であることが望ましい。僕はそう考えています。我が社の社員に限って言えば、「十勝が好きでなければいけない」。我が社に勤める絶対条件のひとつですね。
十勝の中にももちろん困った部分があるし、好きになれない面もあるでしょう。けれども、すべてをひっくるめて「好き」とか「愛着がある」といえるかどうか? これは十勝に拠点を置く地域企業に勤めている以上、最低限必要の気持ちの持ち方ではないかと思います。地元が好きではない人が自社を好きになれるのか? 僕の中では答は明白です。
我が社は幸いなことに、十勝のよさや楽しさを伝えるという仕事を行っています。これは社員の地域エンゲージメントを高めていくことにきわめて効果的。それを狙って雑誌等を発行しているわけではありませんが、気づいたらそうなっていました。元々在籍している社員にも好影響を及ぼしますし、我が社を志望する学生や求職者の方々にも、地域愛の強い人が多い。我が社には道外出身者が多いのですが、みな北海道愛、十勝愛を持っています。自分の生まれ故郷も好きだけれど、十勝も同じくらい好き……。そういう人たちです。
これって、「いい仕事ができるかどうか」の条件のひとつなのではなかろうか? 「自分の大好きな地元に貢献できるような仕事がしたい」。面接の場面に出てきそうなセリフですが、この言葉はたぶん真実ではないかと思います。入社後に、こういう話をしてくれる人は間違いなく本心から出てくる言葉といってよいでしょう。
したがって、地元愛の強い仕事は地域企業の中でよい仕事をする可能性が高い。その純粋な働きぶりが周囲に好影響を及ぼし、社風や職場環境をよりよくするという点でも、貴重な存在となってくれています。
地元が好きということは地元に住んでいる人も好きということ。さらには職場の人も好きというふうにつながっていくはずです。エンゲージメントの広がりが好ましい社風を生み出し、好ましい地域をつくっていくことになるのではないか?
こうした土壌があってこそ、豊富なアイデアが生まれ、ユニークな商品が生み出されていくことになっていく。前にも書いた気がしますが、「アイデアは愛である」ということですね。