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第1話 味覚のグローバリゼーション

第1話 味覚のグローバリゼーション

おはようございます。
 今日から新シリーズとなります。どんな方向へ話が展開するのか、今のところ皆目見当がつきません。第1回目に難しそうなタイトルを付けてしまいました。全体としては柔らかい話を増やしていきたいと考えています。
 ちなみに、昨日は午前中に写真セレクト作業、午後は実家の片付けを行っていました。茶の間で作業しながら40年前を思い出していました。高校生の頃に食べていたもの。今日とは大きな違いがあるような気がします。単純に「昔がいい」というつもりはありません。ただ、過去と現在とをどうしても比較してしまいます。
 その結果、最初のテーマは「味覚のグローバリゼーション」となりました。

「全国同じ味」という恐怖

その昔、我が家の食卓にいつもあったのはワニソースでした。ところが、ワニソースといっても、誰にも通じない。北海道民であっても、知っているのはほんのひと握りの人だけ。ネットで調べても詳しい事実は載っていない。小樽にあったそうですが、それ以上のことはわかりません。
 お酒にしろ、調味料にしろ、交通網の発達していなかった時代には、地元で作られることが多かったわけです。交通が便利になると、遠くで作られたものが入ってくるようになる。そうすると、競争が激しくなる。大手メーカーによる大量生産品のほうが価格競争力がありますから、地場の産品が淘汰されていく……。
 その結果、そうなったのかというと、地域ならではの味というものが危機にさらされることになった。実際のところはどうなのか、正確にはわかりません。ただ、僕の感覚としては、地元の味がどんどん失われてしまっている。そう感じています。
 僕が最初に味覚のグローバリゼーションを感じたのは、中学生か高校生の頃のこと。ハンバーガーチェーンのデイリークイーンが帯広に進出したんですね。といっても、これも知っている人はごく少ないに違いない。古い話が続いて恐縮です。初めてハンバーガーを食べたのがデイリークイーン。マクドナルドは大阪・阿部野橋で食べたのが最初。
 そのあたりから、あれよあれよという間に食べ物から地域性が失われていったのではないかと思います。厳密には違うのかもしれませんが、大阪で食べても東京でも帯広でも、どこでも一緒という食べ物が増えていきました。家庭料理とか地元の定食屋で食べると、今でも地域ごとに違いはある。けれども、全国チェーンの店になると違いは感じられない。
 全国どこでも同じ。これを安心と捉えるべきか、退屈と感じるか? 食べ物に限っていえば、僕は退屈と感じてしまうし、それ以上に少し恐ろしいものを感じることもあります。

それは地域独自の味覚の歴史とか記憶といったものが失われていくのではないか……という恐怖感。
 おいしいとかまずいといった基準では計ることのできない価値があると思うんですね、地域の味覚には。郷土料理をレシピ集として残していく必要がありますし、それ以上に今も普通に地域料理を食べることが大事なのではないか? そう思うことが多い。
 たまに食べたいと思っても自分で作ることができない料理が増えてしまいました。そういうものは、外食で味わうことも困難。また、同じ料理名、食品名であったとしても、すでに「別物」になってしまっているものが極めて多いですね。市販されている漬物は、「ほぼ別物」ばかり。甘味料、保存料、着色料によって、見た目も味も別な食べ物になっている。
 食べ物のグローバリゼーションが進んでいくと、保存性が重要になってくるのでしょう。味が濃くなったり、保存料が使われるようになる。安全性に疑問が生じると同時に、味覚的にも許容範囲を超える食べ物が増えてきている。
 ただ、こうした味に慣れてしまっている人も少なくないはず。スーパーでは保存性重視の食品を多数扱っていますから、疑問を感じることなく、ごく普通に食べている人が多いことでしょう。よい悪いを論ずるつもりはありません。僕も他に選択肢がない場合は、購入し、食べることが多い。ただ、本心としてはできるだけ余計なものの入っていないものを選びたい。僕と同じような考えの人も多いと思います。

たぶん、安心・安全というところから食における地産地消が始まったのだと想像しています。「食の安全性」は非常に重要な問題ではありますが、ここでは脇に置いて考えます。あくまでも「味覚」がテーマなので……。
 グローバリゼーションによって保存性が優先された結果、食べ物の味が犠牲になっている。僕にはそう思えてなりません。市販の漬物などは、最初に口に入れた瞬間、サッカリンかステビアの味がわかってしまうため、ほとんど食べられなくなってしまいました。
 まあ、僕も子供の頃はチクロの入った炭酸飲料がおいしいと思っていた人間ですから、偉そうなことはいえません。発がん性の問題からチクロが禁止され、その後、「全糖」と表示されていた時代がありました。「全糖はイマイチだな」と子供ながらに思ったものです。子供の味覚って変なものですね。
 僕が子供の頃、チクロがおいしいと思ったように、今の子供もステビアをおいしいと感じるのだろうか? このあたり、気になります。
 20~30代の若手の人の中には、味覚のセンスが素晴らしいのではないか(あくまでも僕の想像です)と思われる人がいます。子供の頃にどのような食べ物を食べてきたのでしょう? 味覚体験の積み重ねが今の自分の味覚を形成しているわけですから、きっと好ましい食生活を送ってきたに違いありません。
 僕はジャンクフードからちゃんとした料理まで、ずいぶん幅広い食生活を送ってきました。今はジャンクフード比率は低下していて、比較的健全になりつつあります。しかし、過去の悪習(?)がありますから、本当に素晴らしい料理の微妙な違いがわからないのではないか? 自分の舌に100%の自信が持てずにいます。
 スロウで食関連の取材をすると、「今はリハビリ中なのだ」と思うことがありますね。

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