第3話 油問題

第3話 油問題

おはようございます。
 朝から気温が高い。取材予定が延期となり、「今日こそ原稿を一気に進めるぞ」という固い決意でパソコンに向かう。だが、書いても書いても終わらない。午後はスロウの商品撮影。ミラーレスでストロボ撮影するのはなかなか大変。こんな撮り方をしているフォトグラファーは僕くらいかもしれません。撮影後は写真セレクト作業。そしてお決まりの眼精疲労。複数の締め切りが迫っている。いよいよ追い詰められてきました……。

主役ではないが鍵を握る存在

そんな中、今朝は油問題について書こうと思っています。といっても、ドロドロした話ではありません。僕が油に求めれているのは、いつも同じ。さわやかさなんですね。
 油の選び方、使い方って、時代とともにずいぶん変わったと思いませんか? 少なくとも、僕はものすごく変わりました。
 子供の頃は天ぷらやとんかつ、コロッケなど、自宅で作る家庭が多かったはずです。我が家もときどき揚げ物を作っていて、自称料理好きな僕も手伝うことがありました。
 しかし、とんかつにはまいりました。僕はアシスタント的立場だったので、任されるのは「肉を溶き卵を付け、それからパン粉に押しつける」という作業。この泥遊び的なプロセスがどうも好きになれなかった。僕は手がベタベタするのががまんならなかったのです。それでも、とんかつは好きな食べ物ですから、何度も手伝いました。僕が最初に学んだ「忍耐」。それがとんかつ作りでした。
 実家を離れてからは揚げ物をすることはほぼなくなりました。料理撮影のあるときくらいでしょうか。手がベタベタになる機会は通常の料理ではほぼ皆無となった……。
 そう安心していたら、あるとき「餃子大会」が行われることになったのです。溶き卵は使わないものの、これもかなりベタベタ感がありますね。しかも、作業としては実にちまちましている。餃子の皮の大きさに問題があるのではないか? 肉まんくらいの大きさだったらもっと楽なのに……などと不届きなことを考えながら、包んでいました。
 とんかつも餃子も好物なので、確かに手作りには意味がある。スーパーで買うのではなく、できたてを味わうほうがおいしい。ただ、おいしいものを味わうには相応の苦労が伴う。僕はベタベタ、ドロドロというプロセスを通過しなければ、おいしいとんかつや餃子が味わえないのだと知りました。
 たぶん、僕の人生全般にも通じる教訓なのではなかろうか? サクッとして中身はジューシー。そんなとんかつや餃子のような味わい深い仕事をするには、ベタベタまたはドロドロの工程が必要なのかもしれない。すべてをサクッと済ませることは不可能と考えるべきか。ならば、今月の僕の仕事の仕方も、道理にかなっているといえましょう。

ぜんぜん油問題の話になっていませんね。
 いいんです。油は料理の主役にはなり得ない。ただし、主役を引き立てる鍵を握っている。そんな存在であることは間違いない。
 昔はサラダ油とごま油の2種類くらいしか使っていなかったと記憶しています。今はすごく種類豊富。油と健康には密接な関係がありそうな気がしますから、油選びには気を遣わざるを得ません。
 かつて僕の頭の中では、油とは「フライパンに食材がくっつかないようにするために使うもの」といった認識しかありませんでした。または揚げ物に使うといった程度。マヨネーズにも入っている。そんな簡単なことを知ったのは大人になってからのこと。非加熱で油を口に入れることに不思議さを感じていました。
 2008年か2009年、とある研修で健康について学んだとき、油について考えさせられました。上質なオリーブオイルをスプーンで飲む。そういう習慣は僕にはまったくなかった。試してみたら、油だけなのにけっこうおいしい。油はそのまま口に含むのは、朝か昼がいいですね、きっと。夜ひとりでピチャピチャしていたら、かなり不気味に違いありません。
 その後、スロウの取材を通じて、オリーブオイルもちゃんと選ばなければ危険だと教わりました。また、道内で作られている亜麻仁油や菜種油のことも知り、油の世界は深くて広いということが次第にわかってきたところです。

今、我が家に常備されているのはオリーブオイルとごま油。そして、たまに使うのは亜麻仁油と菜種油。まれにひまわり油。
 僕が選んでいるわけではないので、選択基準がどうなっているのか本当のところはわかりません。ただ、今我が家にある油であれば、そのままスプーンですくって飲んでもたぶん大丈夫そう……。そんな感じだと思います。
 良質の油を購入すると、ずいぶん高いように感じるもの。ですが、一度に使いきるようなものではないので、油によってエンゲル係数が上がるとは考えなくていいような気がします。何となくではありますが、体によさそうなものを選びたい。
 といいながら、気になることがひとつ。外食やお惣菜に使われている油はどうなっているのだろうか? 油や調味料のレベルまで情報開示している店はまだまだ少ない。僕はそこまでシビアに選んでいるわけではないので、スーパーで普通にとんかつを買ったりしています。
 ただ、油、オイル、おいる、老いる? などど、頭の中で言葉がぐるぐるしてしまうことがあります。自宅用の油選びだけではなく、外食やお惣菜にも注意を払うべきなのかもしれません。
 自宅では揚げ物をしない……。我が家もそうですが、そういう家庭が増えていると思います。自分の目の届かないところ、管理できないところに関しては、頭の中でスルーしてしまう。そんな傾向があるでしょう。企業経営にも同じような問題が横たわっていますね。油問題は経営問題。料理と経営にはけっこう共通項があると僕は思っています。

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高原淳写真的業務日誌