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第7話 クラフトビールとローカルファースト

第7話 クラフトビールとローカルファースト

おはようございます。
 少しだけスピードが上がってきました。午前中は写真セレクト作業と買い物に時間を費やしましたが、午後、真剣に取り組んだら、道が開けてきた。このスピード感を今日につながていきたい。
 夕方はホテルヌプカで行われた吹田良平氏トークセッションへ。ポートランドは今このようになっているのか……。僕がポートランドへ行ったのは一度だけ。たぶん25年ほど前。吹田氏の著書「グリーンネイバーフッド」が出版された2010年頃に訪ねておきたかったな。今のポートランドは、また違った状況にあるようです。

その土地らしい味わい

1ドリンク付きのトークセッションだったので、ヌプカではみな「旅のはじまりのビール」を飲んでいました。僕は残念ながらノンアルコールビール。僕の仕事は佳境に差しかかっていますからやむを得ません。
 1994年の規制緩和によって地ビールブームが起こり、全国各地に地ビールが誕生しました。これはおもしろいことになりそうだ。そう思っていましたが、その後、大手ビールメーカーが販売する発泡酒が猛威を振るい、高価格な地ビールは売れなくなっていくことに。帯広にも3つの地ビールメーカーがありましたが、今残っているのは帯広ビールのみ。
 しかし、ここ数年のうちに風向きが変わってきましたね。地ビールではなく、クラフトビール。呼び名が変わっただけで製法や酒税法が変わったわけではありません。
 今は地ビールブーム後の冬の時代を乗り越えたメーカーと新興メーカーが新たなクラフトビールブームを作っている。「ブーム」と呼ぶべきではないかもしれません。これは「ムーブメント」と言ってよいでしょう。ただの小規模ビールメーカーではない。経済活動に留まらず、文化活動や地域活性化のための活動でもある。地域企業の取り組み方の事例としても興味深いものとなっています。
 日本で見られる「とりあえずビール」の風習(?)も決して悪いものではありません。僕もホットな夏にはキンキンに冷えたビールがほしくなる。このとき手にするのは、きっと大手ビールメーカーのものでしょう。
 その一方、体を冷やす、喉をうるおす以外の目的でビールを飲むこともある。そんなときにはクラフトビールのほうが向いているのではないかと思います。クラフトビールがなければ、僕の場合は道産の日本酒ですね。
 日本酒の世界は実に多種多様。蔵元も多数ありますし、それぞれ味に個性がある。無限の楽しみ方があるといってよさそうです。かたやビールはどうかというと、大手4社による寡占状態が続いていた。そして、それぞれおいしいものですから、さして不満も疑問も持つことなく飲み続けてきたわけです。これが「とりあえずビール」の背景にある。

ところが、海外旅行でパブなどへ行くと、国にもよりますが個性的なビールと出合うこととなる。その土地のビールを味わうことがひとつの楽しみとなり、期待以上の味だったり、予想を裏切る味だったりする。ここでは「おいしいかどうか」よりも、「知らない味」や「その土地らしい味」であることに価値がある。
 郷土料理と同じような位置づけのビールがあると、旅をする楽しみが増すことになります。旅行者だけではなく、当然、地元に住む人にとっても「自分たちのビールだ」と思えるようになる。北海道民の場合はサッポロビールを愛飲する人が多いと思います。それももちろんOK。ただ、もっとローカルにこだわってビールを選ぶと、十勝の場合は「帯広ビール」か「旅のはじまりのビール」ということになりますね。ちなみに、「旅のはじまりのビール」に使われている大麦は士幌産。十勝人なら一度は味わってみるべきビールといえるでしょう。
 料理や日本酒を選ぶ際、僕はローカルファーストで考えています。基本は地元、たまに道外産。そんな比率でいけば、一応は地域内経済循環に貢献していることになるのではなかろうか? 

人は小さい頃からの味覚体験の積み重ねによって、自分の味の好みというものが形成されるわけです。お酒を飲むのは20歳になってからということになりますが、ビールにせよ日本酒にせよ、どんなお酒を飲んできたのかによって酒の好みが形づくられていく。
 いつもチューハイ、いつも大手のビール……では、おもしろくないと僕は思っています。旅先ではできるだけその土地のものを味わいたい。食べ物だけではなく、飲み物もそうあるべきでしょう。したがって、今のクラフトビールの盛り上がりは歓迎すべき状況ですね。
 最初の地ビールブームの頃は「残念なビール」もけっこうあったと思います。今、クラフトビールとして販売されているビールには、個性的でありながら味わい深いものが多い。旅行者だけではなく、地元の人にも愛される味に仕上がっている。それだけ文化として成熟してきたということでしょうか。
 問題は、飲み手である僕ら一般消費者の意識と味わい方にあるような気がします。
 味わい方といえば、ビールはどのようにグラスに注ぐかによって味がまったく違ってきます。僕は一時期、銅製のビアマグを愛用していました。これを使うと最高においしい。注ぎ方にも注意が必要で、若干時間がかかります。だから、みんなで飲むとき「最高の味」を求めると周囲に迷惑をかけることとなる。ビールをおいしくいただくには少人数で飲むのが一番。
 缶や瓶から直接飲むのは、大手のビールだけにしたいもの。クラフトビールはできるだけ最高の味を引き出すような注ぎ方、飲み方をすべき。大量生産品とは異なり、生産に関わった人たちの思いや労力が製品に込められている。そのあたりをイメージしながら味わいたいものです。
 僕の「佳境」はいつまで続くのだろう? ひと山乗り越えたら、ゆっくりビールを味わってみたいと思います。

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