
おはようございます。
何年ぶりでしょうか。朝食も昼食も抜いた状態で夕方を迎えました。前日の夕食も食べ逃してしまったので、3食抜き。帯広から札幌へ向かう車の中でするめを食べただけ。おかげで予定より若干早く札幌に到着。北海道中小企業家同友会の全道総会。夕方はスロウの編集者2名とフォトグラファーS氏と合流。宿の向かいにある串カツの店で食事会となりました。
編集者と食事をする機会は多いが、同業であるフォトグラファーと取材先で飲食することは滅多にありません。昨夜はS氏の写真に対する考え方が語られ、僕としても学ぶところが多かった。ふたりの編集者も「知らなかった」という反応を示していました。表現方法は違えども、僕も共感を覚える考え方でした。
調理法と食べ方
昨日の串カツの店は何度目になるだろう? よく行きます。串カツといえば大阪。「ソース二度づけ禁止」はここでもお決まり。というか、すでに全国的な決まり事となっているはず。いつの間にか、大阪の串カツ文化は全国区のものとなり、ここ北海道でも説明するまでもなく守られています。
ルールにしばられるのは好きではありませんが、守りたくなるようなルールがあると、そのルールを広めたくなる。人間の心理をよくわかっている。このあたりに串カツ文化から学ぶものがありそうです。
僕らも、「守りたくなる」「人に伝えたくなる」「人と共有したくなる」ようなルールをつくっていけばよいのだ。そう思いますね。
かつて、そんなルールが我が社にもあったような気がします。会社が決めたルールではなく、たぶん月刊しゅん編集部から始まって出版広告部に広まっていったルール。アニバーサリー活動などに、そうした暗黙のルールのようなものがあった。このあたりを覚えている人も少なくなりました。
ルールというものは上から下へ押しつけるものではなく、むしろ自然発生的に湧き起こってくることが望ましい。ジンギスカンにしても、まず煮込みゾーンで野菜を焼き、ジンギスカン鍋の中央部で肉を焼く。明文化されてはいないが、ほぼみんな「そのように焼くのが常識」だと思っています。移住者、旅行者などジンギスカン文化になじみの薄い人には指導(?)することもあるでしょう。
串カツを食べながらおもしろいと思ったのは、串カツといいながら、実にさまざまな食材を揚げていること。串揚げというのが正確な表現。串カツの店なので、ここでは串カツで話を進めることにします。
僕らの食べた食材の中でも一番ユニークだったのは、カマンベールチーズでした。ちなみに、本来カマンベールチーズというのは、フランス・ノルマンディー地方で作られたもの。AOC(原産地統制呼称)の取得が遅かったため、カマンベールチーズは世界中で作られてしまっています。
それはともかく、串カツは調理法と食べ方を規定したもので、食材は「ほぼ何でもあり」という食べ物。大阪の食文化が北海道の食材を包み込む……。特に侵略されているといった感覚ではなく、双方の文化が融合して新たな魅力的な食べ物が誕生した。そんな感じがします。
北海道には「ジンギスカン」「ザンギ」といった魅力的な食べ物があるわけですが、どちらも素材は肉限定。釧路では野菜を揚げたザンギが存在するものの、ちょっと「ザンギとは違うかな?」というのが僕の印象。ザンギ文化の今後の発展の仕方によって変わってくるでしょうが、今のところは鶏肉=ザンギというイメージがあまりに強い。ジンギスカンにしても、ラムかマトン。拡大解釈をして鹿や豚肉というのもありですが、肉以外に発展する可能性は低い。
串カツ(串揚げ)のような文化。北海道外へ進出し、その地域の食材や食文化と融合するようなものがほしいですね。一番可能性を感じるのはスープカレーでしょうか。帯広にはインデアンカレーがあるため、僕はスープカレーについて深く考えたことはありませんでした(よく作る料理ですが)。時間をつくってじっくり考えてみたいと思います。
串カツの店ではなぜか最初に生キャベツがついてきます。二度づけ禁止である代わりに、「キャベツでソースをすくってかけてもいいですよ」という意味で生キャベツが添えられているらしい。こういうところが大阪のおもしろいところ。北海道の食文化の中にも、このようなちょっとした奥ゆかしさがあるだろうか? 調べてみたいところです。
僕自身、素材第一主義的な傾向が強いため、肉、アスパラ、ジャガイモといった素材の味に意識が向かいます。一方、素材に恵まれていない大阪では調理法や食べ方のほうが発展していった。食材が豊富ではないのに、「くいだおれ」の文化が生まれた。ここからはおおいに学ぶものがあるでしょう。
しかも、串に刺して揚げただけというシンプルな料理なのに、大阪という地域性を感じてしまう。たこ焼きやお好み焼きもそうですね。シンプルで庶民的な料理の中に文化を感じる。それが高じると、実際に現地まで食べに行きたくなる。
素材に恵まれている北海道の場合は、カニを食べに行きたくなる、何10種類もあるジャガイモを食べ比べてみたくなる……といった旅行目的が考えられるでしょう。調理法と食べ方という点ではジンギスカンあたりが有力でしょうか。今ある食文化をひとひねりして、洗練または発展させていきたいところですね。可能性のある食文化が道内にいくつも眠っているような気がします。