誰の役にも立たない話をもう1回続ける。現像液について書いたので、フィルムの話も書き留めておきたくなった。
1977年、最初に写真を撮り始めたときはネオパンSSだったと思う。その後、もう少し感度がほしいということでSSS(「スリーエス」と読む)に。といっても感度はASA200。今考えるとずいぶん低い。増感して800で撮影することもあった。反対に低感度のネオパンFを使うこともあった。こちらはASA32だ。
ネオパンでも不満はないのだが、なんとなくネガの色が気になっていた。僕の感覚では定着不足のような抜けの悪さを感じていたのだ。その後、プラスX(ASA125)、トライX(ASA400)を使うようになった。プラスXの抜けは素晴らしかった。一時期、コニパンSS(商品名は「サクラパンSS」だったかもしれない)を使ったことがある。これも抜けのよさは抜群。愛用したいところだが、後述の事情により数本使っただけだった。
高校3年になってからイルフォードを使うようになった。イルフォードFP4(ASA125)とHP4(ASA400)。HP4はその後HP5と品名が変わった。抜けがよいとは思わないが、妙にイルフォードが気に入った。ネガの色はネオパンの紫色に比べ、イルフォードはグレーっぽかった。印画紙にプリントする分には何色でもよいのだが、僕の中ではイルフォードのほうがテンションが高まった。
ネオパンから始まり、コダックのプラスXとトライX、そしてイルフォードFP4とHP5。これらはすべて長巻を購入して、自分でパトローネに詰め替えて使用した。コニパンを使わなかったのは、長巻が売られていなかったからである。
長巻を使うと1本ごとフィルムを買うのに比べ、半額以下となった。長巻は1巻30.5メートル。たぶん20本分くらいあったと思う。ダークバックを使ってフィルムローダーに長巻フィルムをセットする。あとは明るい場所で作業可能だ。パトローネにフィルムを詰めていく。問題はパトローネの確保である。パトローネとはフィルムの容器のことなのだが、通常は一度使ったフィルムのパトローネを再利用する。だが、フィルム現像時にパトローネを歪めてしまうことがあった。こうなると使えない。ちなみに、コダックのパトローネは再利用できない構造になっていた。もっとも使いやすかったのはイルフォードのパトローネだ。
今でも長巻は販売されているようだ。価格を見るとビックリするほど高い。1本のフィルムも長巻もずいぶん高級品になったものだ。
大学を卒業すると、作品用と仕事用でフィルムを使い分けるようになった。仕事用ではイルフォードXP2。これは驚くほど使いやすい。ラチチュードが広いのだ。ISO25~800くらいの間で使えたと記憶している。露出を気にせず撮影できた。
このフィルムは変わっている。モノクロフィルムだが、現像はネガカラー。このため、街のDPE店で現像してもらっていた。それでいて、粒子が非常に細かく、プリントするとなめらか。ネガの色は好きになれなかったが、素晴らしいフィルムだ。仕事がハードになってくると、作品用としてもXP2を使うようになった。弱点はネガカラー同様、退色の不安が残ることである。30年経過した今でも問題はないが、100年持つかどうかはわからない。ちなみに、高校時代のネガは今も健在である。
※写真は1977年。デジカメと異なり、フィルムカメラは1本撮り終わるまで感度を変更できない。ASA100のネオパンSSで室内を撮るとシャッター速度は1/8秒くらいになった。
昭和の記憶05 モノクロフィルムの話
2023年4月6日 (Thu.)