おはようございます。
昨日は帯広市内でスロウの取材がありました。僕が感じたのは「理念が人を動かす」ということですね。企業に理念があるのと同様、個人にも理念がある。理念を持って行動すると一貫性が出てくる。それを10年、20年、30年と続けてくと、味わい深い仕事人生になっていくのではないかと思います。
目的と理念
今回は経営理念をテーマに取り上げます。固い組織を築いていくには、何といっても経営理念の存在が欠かせません。
我が社にはすでに経営理念があり、朝礼の時間に唱和しています。このため、我が社の人たちは理念があるのが当たり前と思っていることでしょう。
けれども、世の中、経営理念が明文化されている会社ばかりではありません。明文化されていなくても、立派に経営されている会社も数多くあります。ただ、その場合「理念に代わる何か」があるのではないかと思います。
僕の考えでは、経営理念はどんな会社にも間違いなく存在する。ただ、それが言葉で表現されているか、されていないかの違いがあるだけ。経営理念のない会社は、本当はないのではなく、適切な言葉が見つかっていないだけなのです。
では、そもそも経営理念とはどういうものなのでしょう?
僕は次世代幹部養成塾をスタートした2009年、「経営理念の前に経営目的があるのではないか?」と考えました。理念だけでは我が社の存在理由が表現されていないのではないかと感じたのです。
また同時期、経営学の神様といわれるピーター・ドラッカーの「企業の目的は顧客の創造である」という名言にも違和感を感じていました。僕の目的意識とちょっと違うような気がしたのです。
しばらく考え続けた結果、「顧客」という言葉の定義が違うのではないか、と気づきました。顧客という言葉を狭くとらえるのではなく、広く利害関係者(ステークホルダー)と考えればよいのではないか? 我が社の社員も協力会社の人々も、そして家族もすべて含めて「顧客」と位置づけてよいのではなかろうか? 顧客の創造とは、自社と利害関係者との関係をより強固に、より良好な状態に、そしてより大きなものにしていくことなのではないか? そう思えるようになってきました。
そこで2009年(第50期)、新たに定めたのが今の経営目的です。
「社員及びその家族が『調和のとれた豊かさと幸せ』を手にすること」
我が社の経営目的は、社員のみんながイメージしやすいよう、対象を「社員及びその家族」と狭い範囲に絞っています。なぜ範囲を絞ったのかというと、我が社の中には献身的な働き方をする人が多いと感じているから。僕としては自己犠牲的働き方ではなく、自分のために働いてほしいといつも願っています。
我が社の場合、経営目的と経営理念がワンセットとなっています。経営理念の対象範囲が狭い分、経営理念ほうは広がりのある内容となっています。
「私たちは価値ある情報を創造、発信、記録することによって、豊かさと幸せの輪を広げます」
経営目的では「自分と家族の豊かさと幸せ」が掲げられています。けれども、人間はそれだけでは豊かさや幸せを感じられないはず。「自分だけの豊か」というのでは虚しさを感じてしまうのです。
ですから、理念にある通り、「輪を広げる」ことが重要になってくるわけです。
判断基準は経営理念が基本
経営理念というものは、それぞれの企業、それぞれに経営者によって捉え方に違いがあるものです。我が社の場合は、経営目的をどのように実現させていくのか、その道筋を示したものであると考えています。
経営計画書の中では「理想+信念」と説明しています。自社は本来どうあるべきなのか。そして、目的に向かって成長していくために必要な根本的考え方、哲学。ここを明確な言葉で表現しなければ、みんなの考え方、行動の仕方がバラバラになってしまいます。
経営理念がなぜ必要なのか? それは社員一人ひとりが主体的に意思決定し、行動できるようにするためではないかと思います。
経営理念が明文化されていなければ、何を根拠に行動したらよいのかわからなくなってしまいます。その結果、いちいち上司の指示を仰ぐようになる。社員は指示待ち人間になり、組織は上下関係でしか回らなくなっていくことでしょう。
経営理念が浸透していくと、判断基準は「上司の指示」ではなく、「経営理念」となります。上司の指示を仰ぐことも必要ですが、より主体的に意思決定できるようになっていくでしょう。理念を根拠に、上司の誤りを正すことも可能。その結果、上下関係だけではなく、対等な人間関係の社風が形成されていくようになる。個人の自由度が増していくのです。
上司からの指示命令ではなく、経営理念に基づく自由度の高い行動。これが本当の意味での「固い組織」に欠かせません。恐い上司がいる組織が固いのではなく、経営理念に共感する社員が集まっているから固い組織になる。
経営幹部は経営者と一緒になって、自社の経営理念の浸透を進めていかねばなりません。何よりも、自分自身、日々経営理念に沿って行動すること(理念行動)が求められます。
(続く)
※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。