第15講 人材育成 1

第15講 人材育成 1

下川町/2018.7.22

おはようございます。
 昨夜はM社、S社社長らとの会食でした。話の大半は働き方改革について。話は多岐にわたりました。一番考えさせられたのは、「時短を進めることで人材育成のための時間を確保できなくなる」という話。今後、どの会社でも起こりうる問題。僕は「人材の二極化」が進むのではないか……という悲観的な見方をしています。そうならないよう、他の何かを犠牲にしてでも人材育成に力を入れていかねばなりません。

人材の4タイプ

「企業格差は人材の格差である」とよく言われます。もう少し正確に言うと、創業期から現在までの人材力の総和が、自社の今日の企業力をつくっているということになります。優秀で意欲的な人がどんどん増えてけば企業力は高まり、能力の低い、または意欲に乏しい人が増えてしまうと企業力は弱まる。単純に言うとそういうことでしょう。
 人材は4つのタイプに分かれます。入社したばかりの頃は、言葉は不適切かもしれませんが、「素材」という段階。すなわち「人材」です。これから成長するかどうか、自社へ貢献する人かどうか、未知数の状態といえます。
 人材はここから2つの方向へ分かれていきます。
 望ましい方向は、人材から「人財」となっていくことです。自社にとって財産といえるような人。成長を積み重ね、技術的にも人格的にも高まっていく人を企業は求めています。人財をどれだけ増やしていくことができるか? 自社の成長・発展を目指す上で、人材育成を強化することが欠かせません。と同時に、個人の幸せという観点から見ても、「成長すること」は必要不可欠なプロセスではないかと思います。
 人材から分かれていく、もうひとつの方向。それは「人在」です。これは「ただ会社にいるだけの人」。自社に貢献していない人です。さらに人在は4つめのタイプ「人罪」へと変質する可能性があります。会社にいることによって害をもたらすタイプの人。こうなると、企業としては放っておくことができなくなります。
 単純に言うとこの4タイプの人が会社にいることになります。もちろん、明確に分類できるわけではありません。ひとりの人間の中に「人財」と「人罪」が混在する場合もあるでしょう。今、我が社を広く見渡すと、100%人罪だという人はひとりもいないはず。そして、一人でも多くの人を人財に変えていかねばならないと考えています。
 このため、人が育ちやすい社風を形成することが重要ですし、制度面、とりわけ教育研修体系をつくっていく必要があるわけです。この点では我が社はまだまだ不十分であると感じています。

教育理念と自己成長のあり方

我が社の経営計画書に書かれている教育理念を思い起こしてみてください。
 「対等な人間関係のもと、個性・潜在能力の開発と、自己成長・自己実現をバックアップ」
 教育理念は会社の都合ではなく、あくまでも個人の自己成長・自己実現を目的とするものです。これは僕の思想から来ています。企業活動は自社で働く一人ひとりの幸せにつながるものでなければ意味がない、ということ。現実には幸せ感を感じ取れないまま働いている人もいることでしょう。けれども、我が社の経営目的にもある通り、目指すところは「調和のとれた豊かさと幸せ」にあるのです。
 「会社のために……」という気持ちを持つことも大事ではありますが、成長するのはあくまでも「自分個人」のため。自分の人生ビジョンを達成したり、人生目的に近づいていくために自分を成長させるのです。会社組織はその実現をバックアップするものであり、職場はそのためのステージ。自分を成長させようとする意欲的な人々が集まることで、活気ある組織が生まれ、業績の上がる企業ができあがっていくのです。
 仕事に対して「やらされ感」を持つ人は、会社のため、お客様のため、上司のため……という気持ちが強く、「自分のため」が置き去りになってしまった人なのかもしれません。自分を成長させるには、まず「自分のため」に働き、それがまわりの人や地域に役立っていると実感することです。
 社員一人ひとりの成長は、教育研修制度の整備や上司からの指示・命令ではうまくはいきません。最大の課題は「個人の成長意欲をいかに引き出すか」というところにあるでしょう。自分で自分を育てる。そうした意欲がなければ、自分を大きく成長させることは不可能なのです。
 仕事観は人それぞれ異なっています。異なる価値観を一概に「よい・悪い」と決めつけることはできません。しかし、その一方で法人という人格を持つ企業も、それぞれ自社の理念、哲学、価値観を持っています。企業の一員である社員は、自分独自の価値観を持ちながらも、組織の価値観を受け入れ、自分の価値観をなじませていかねばなりません。
 我が社は「自分をより成長させるような働き方をする」「自分の限界にチャレンジする」(第58期経営計画書「我が社の価値観」より)という価値観です。最小限の努力で済ませ、ほどほどの人生を送る……。そうした生き方に豊かさや幸せはないと考えています。人それぞれやり方に違いはあっても、新しいことにチャレンジしたり、日々研鑽することで自己成長していき、自己実現に近づいていくわけです。成長意欲旺盛な人であることが人財になるための最低条件といえるでしょう。
 働き方改革が急速に進む今日、企業の人材育成計画が立てにくくなっているというのが実情です。教育研修体系を整える必要があることはもちろんですが、時短と両立させることは困難を極めます。これまでのようにOJT(企業内教育)とOFFJT(職場外研修)を組み合わせるという考え方が通用しなくなりつつあると僕は考えています。
 自ら危機感を持って、あるいは自分の楽しみとして、「自分で自分を成長させる」という人が少しずつ増えてきています。自分の意志で「朝活」を行っている人もいますし、業務とは無関係に異業種交流に加わっている人もいます。世の中は企業の時代から個人の時代へ移行しつつあるようです。

※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。

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