おはようございます。
昨日は北見、中標津、別海での取材。ロングドライブ。3人で運転を交代しながら、予定通り取材をこなす。曇り時々雨。天気はイマイチでしたが、中身の濃い取材。今日から我が社はお盆休みに入りました。
「対応」か「新創造」か
ビジネスには必ず売り手と買い手がいます。両者は次の4つの関係にあると考えられます。
1.売り手【商品開発済み】・買い手【顕在ニーズ】→マッチング
2.売り手【商品開発済み】・買い手【潜在ニーズ】→啓蒙
3.売り手【商品未開発】・買い手【顕在ニーズ】→対応
4.売り手【商品未開発】・買い手【潜在ニーズ】→新創造
1と2は商品開発済みですから、プロモーション活動や営業活動が重要テーマとなります。買い手のニーズがハッキリしている場合は、営業活動に力を入れることになるでしょう。同業他社も自社と同じような商品を持っている場合は、当然ながらそこに競争が発生します。
2のように買い手がニーズを認識していないようであれば、営業活動はあまり効果的とはいえず、啓蒙活動が行われることになります。営業よりもプロモーションがメインとなるでしょう。
商品がすでに存在する場合はマッチングか啓蒙を考えるわけですが、これから開発する商品については、「マーケットイン」または「プロダクトアウト」といった視点を持つ必要があります。ハッキリ意識しないまま商品開発が行われることもありますが、できれば事前に認識しているほうがよいでしょう。そして、両者どちらかに偏りすぎていてバランスが悪い場合は、両方の要素をミックスさせることもあります。
3のようなケース、顕在ニーズに向けて商品開発を行う場合は、「マーケットイン」という視点を持つことになるでしょう。すでに存在するニーズに対応する。これは日常的によく行われています。我が社のような印刷業は受注が基本ですから、顧客から商品開発を求められることが多い。求められているもの、そして目指すべきゴールがハッキリしているわけです。
それだけに、同業者との競争が激しさを増す。難度の低い商品の場合は価格競争にさらされることになる。技術力、製造力、販売力が弱いと苦戦を強いられることになるでしょう。
これに対し、4の場合はニーズが顕在化していません。したがって、同業他社との競争もこの時点では起こっていない。我が社が顧客の潜在ニーズを掘り起こすような商品を開発できたなら、宝の山を掘り当てた……と考えてよいかもしれません。
当然ながら4つのうちで、一番難度が高いチャレンジとなります。ニーズがあるのかないのかハッキリしておらず、しかも商品の開発はこれから。旺盛なチャレンジ精神が求められます。
日本経済が高度成長期にあった頃は、「プロダクトアウト」という視点で商品開発が行われていました。これはネガティブな意味でとらえると、「自社視点、自社都合による商品開発」ということになります。しかし、僕はもっと肯定的、積極的に解釈すべきではないかと考えています。
プロダクトアウトをどう見るか?
バブル崩壊後からだと思います。いつの間にか「市場から求められているものをつくりだす」というマーケットインが商品開発の主流となってしまいました。
その結果、どういうことになったのか? 顕在ニーズに対応する商品を開発するわけですから、顧客にとっては「想定の範囲内」の商品ということになります。つまり、驚きがないんですね。ウォークマンが誕生したときのような、人々の生活に変革をもたらす商品が誕生しない。その後、プロダクトアウト型商品は海外からもたらされることとなります。日本企業がリスクを負わなくなった……。それが「失われた20年」といわれる時期の特徴のひとつでしょう。
今は、少し状況が変わりつつあります。
一般的な言葉とはなっていないかもしれませんが、「マーケットアウト」という考え方から誕生する商品が増えつつあるのです。具体的にどのような商品があるのか? それを知りたければ、クラウドファンディングのwebサイトを開いてみればよいでしょう。ここにはプロダクトアウトとマーケットインの両方の要素が混じり合っています。商品開発者(売り手)が本当につくりたいと思っているものが載っており、それに対して共感・共鳴し、実際に購入したいという人が出資する。開発とマーケティングが同時進行しているわけです。
プロダクトアウトの弱点は、自社都合、あるいは自己中心的なものとなり、市場を創造できぬまま終わってしまうことが多いという点にあります。ヒットする可能性もあるが、不発に終わる可能性も高いのです。
市場は存在せず、ニーズも顕在化していない。けれども、ここにニーズが存在するはずだという仮説を立て、顧客のニーズを掘り起こしながら商品開発を行っていく……。そこにマーケットアウトの強みがあります。我が社の「月刊しゅん」や「northern style スロウ」は、今考えるとマーケットアウト型商品だったといえるのかもしれません。
商品開発には常に実験的要素がつきまといます。実験には失敗がつきもの。失敗を失敗と考えずにチャレンジし続けることで、革新的な商品が誕生するわけです。
そう簡単にマーケットアウト型商品が誕生するとは思えません。僕はプロダクトアウトでつくられる商品が、我が社にもっとたくさんあってよいと考えています。プロダクトアウト型商品は、売れても売れなくても自社を成長させてくれるもの。商品開発し続ける、新商品を継続的に世に送り出す。それによって、「おもしろい会社」「何かできそうな会社」という企業イメージが形成されることにもなるでしょう。
マーケットインという発想も必要不可欠ではありますが、どちらかというと我が社はプロダクトアウト型企業であり、その中でマーケットアウト型の商品づくりを目指すべきではないかと考えています。
※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。