皆さん、おはようございます。
あっという間の一週間でした。気づくとまた土曜日です。どうしてこんなに猛スピードで日々が過ぎていくのでしょう?
昨日は我が社のコア・コンピタンス委員会の新年会でした。今回は趣向を変え、お好み焼きとたこ焼きが主役。お酒を飲むのは数人かと思いきや、半数近くの人が飲んでいました。日本酒、ワイン、自家製梅酒、さらには得体の知れない酒も・・・。「マジックリンのような味がする」と言いながら飲んでいました。そんなお酒、我が家のどこにあったのだ? 謎です。変でもある。
変な宴会の翌朝なので、今朝は「易」という言葉から話を進めてみようと思います。
易は音読みでは「えき」または「い」。「えき」と読む場合は、おもに「変わる」と「占い」、2つの意味があります。不易といえば「変わらないもの」という意味ですし、易経といえば「占いのテキスト」。そして、「い」と読む場合は「やさしい」「手軽」といった意味。平易、簡易、容易・・・。よく使う言葉です。
易しさは「変」に通じる
易という漢字の起源には、トカゲの象形文字とする説があるそうです。いともたやすく自分の身を変化させる。だから単純に「変わる」と「やさしい」になったのか? さらに、これからどう変わるのか知るために「占い」という意味を持つようになったのでしょうか? 詳しいことは僕にはわかりません。
ただ言えることは、トカゲ説が正しいとすれば、「変化を受け入れること」と「やさしさを取り入れること」が文章づくりに好ましい変化をもたらしてくれるのではないかということ。特に、文章にはやさしさが重要であると僕は考えています。
たとえば、読む気にならない文章の典型は次のようなものです。官報から引用させてもらいました。
次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改める。
正確さを期してこのような文になっていることはよくわかります。読みにくいポイントのひとつは、「・・・に掲げる規定の傍線を付した部分」が重複していること。さらに「傍線を付した」という言い回しも一般人にはなじめない。
こうした文章は世の中の至るところにあふれています。とりあえず、官報なら引用してもいいだろうと思ってここに載せただけのこと。とんでもなく難解な文章は、書店に並んでいる本の中にも、ネット上にも、会社でまわってくる稟議書に添付された資料の中にも発見することができます。そして、難解な文章を書く人に対して、僕は何回でも指摘したい。「易しさは優しさ」なのだということを。
正しさを主張すればするほど、優しい人ではなく、難しい人、扱いにくい人、自分の頭を悩ませる人になってしまいます。法律や契約書といった文章であれば、正確さが命であるわけですが、普通の文章であれば8割正しく伝われば御の字としましょう。まずは読んでもらうこと、次に大事なのは「おおよそ理解してもらうこと」です。
近年、海外出身者と日本語で会話をする機会が増えてきました。外国人旅行者が増えていますから、今後はいろいろな言葉が飛び交うことになるでしょう。そんな際、果たして難しい言葉を使うでしょうか? 使わないですよね。
難解な→難しい
希求する→求める
平易な→やさしい
進捗度合い→進み具合
これでもまだ難しいかな? いかに易しい言葉に置き換えることができるか? 誰もが相手の理解度を思い遣って言葉を使うことになるでしょう。易しさは優しさ。そう気づくに違いありません。
日本人に対しても、同じように優しい気持ちを持って文章を書くべきだと思います。
自分の文章はどこまで易しくなれるのだろう? これはある種のチャレンジともいえます。僕の文章もまだまだ中くらいの易しさというレベルでしょう。自分をどんどん易しい方向へ変えていかねばなりません。
さて、易しさをとことん突き詰めていくと、どんなことになっていくのでしょうか? たぶん、「変な文章」になるのではないかと思います。1万語の言葉を組み合わせて文章を書くのと、500語で同じ文章表現をするのとでは、伝わり方がずいぶん変わってしまうことになる。おおよその文意は伝わるものの、日本語としては変になる。
難しい概念を文章表現しようと思えば、易しい文章を書くことに苦労することになるはずです。それでもチャレンジすると、きっと変な文章になるに違いない・・・。僕はそう考えています。
「それでよい」と思うのです。変だと思われても、書き手の人格が疑われる心配はないでしょう。易しさは優しさですから、変な文章の中に、むしろ書き手の愛が感じられるはず。自分でも「変」と感じるような表現を残しておくことが、魅力的な文章には不可欠ではないかと思います。変な部分はその人らしさでもある。変をすべて取り除いていしまうと、文章は無機的なものになっていく。
最後に、自分の書いた文章が易しいかどうか、一瞬で判別する方法をご紹介しましょう。
写真家的文章作成技法では、見た目の直感を重視します。パソコンの画面上よりは、一度プリントアウトするほうがよいでしょう。出力された原稿を見て、瞬間的にどう感じるのか? ここが重要です。
「黒っぽい原稿」になっていないかどうか?
黒っぽい場合は、難しい漢字がたくさん使われていると想像されます。自分の頭が凝り固まっているとき、原稿が黒っぽくなることがあります。易しい言葉に置き換えたり、難しい漢字があれば、できるだけひらく(ひらがなにする)ようにしましょう。
易しく変わる。どこまで優しい人間になれるのか、お互いチャレンジしてみませんか?