第18講 価格戦略 1

第18講 価格戦略 1

おはようございます。
 お盆休み最後の日。終戦記念日。さまざまな問題はあるにせよ、平和を守り続けていかねばなりません。
 たまりにたまった撮影済みの写真。ようやくセレクトを終え、各編集者に届けることができました。2時間ほどかけ、土曜日に行われる帯広経営研究会8月例会の準備も完了。「顧客満足が先か、従業員満足が先か」というテーマで熱い議論が繰り広げられることになります。僕が日頃から変だと感じている定説を崩したいと考えています。
 夕方はある人物から届いた原稿類に目を通していました。イメージが湧いてきた。うまくすると年内、遅くとも年明けに出版できそう。ただし、簡単にはいかないだろうな……。僕の編集者、構成者としての力量が問われます。
 もう一仕事……と思いながらも時間切れ。重要な仕事を残したまま連休を使い切ってしまいました。次の土日に持ち越しとなります。
 今日は「新版・次世代幹部養成塾」の続き。前回は「商品開発」でした。今回は開発した商品の値決めはどうするのか、という問題についてです。

値決めはコミュニケーション

経営上、非常に重要な戦略であるはずのもの。それが「価格戦略」です。ところが、実際にはいい加減な価格決定が行われていることが多い。とりわけ中小企業にはその傾向が強く、自社が得られるはずの利益をみすみす逃しているのではないかと僕は考えています。
 そもそも価格とは何なのか? ものの値段、料金。どれも同じ意味ですが、その本質的な意味はどこにあるのでしょう?
 みんな不思議に思うことがいっぱいあると思います。100円ショップへ行くと、「どうしてこんなものが100円で売られているのだろう?」という商品がありますよね。また、逆に「どうしてこんな石と金具が何10万、何100万もするのだろう?」と思うことはないでしょうか? ちなみに、「石と金具」というのはダイヤの指輪のことです。
 そう考えていくと、価格とは「商品の価値を顧客に伝えるためのコミュニケーションツールなのだ」という結論に思い至ります。ダイヤの指輪には「永遠の愛の誓い」という価値を宝石商がつけてしまったのです。それも、きわめて巧妙な手法を使って……。
 自社商品に値付けをするということは、「この商品にはこれだけの価値がありますよ」というメッセージを送っていることに他なりません。
 そこで問題となるのが、値付けした価格が果たして適正なものであるのかどうか、というところ。単純にいえば、「高すぎると売れない」「安すぎると利益が出ない」ということになります。
 価格戦略は非常にデリケートなものです。高く売るべきものを安く売ってしまうと、自社のブランドに傷がつきます。逆に、安く売るべきものを高く売ろうとすると、まったく売れない、または会社の信用を失うことにつながってしまいます。それだけに、価格戦略には高度な経営判断が求められるものなのです。

コスト・プラス法

では、実際にどのように価格は決められていくのでしょうか?
 まずは、自社視点での価格戦略について考えてみましょう。この場合、戦略性はさほどありません。価格政策というべきかもしれません。
 印刷業のような受注産業をはじめ、広く一般に用いられているは「コスト・プラス法」と呼ばれる価格設定の方法です。我が社もだいたいこれに沿って価格が設定されているはず。商品の実コストを計算し、それに利益を上乗せする。もっとも確実で適正な利益が得られる方法といえます。
 コスト・プラス法で価格を設定する際、考慮すべきなのは「人時生産性」という考え方です。人時生産性とは、総労働時間1時間あたりの限界利益額のこと(人時生産性=限界利益額÷総労働時間)。ひとつの仕事に延べ何時間かかったのか? ここが積算から抜け落ちてしまうと、手間ばかりかかって利益が出ない……という仕事が増えてしまいます。
 しかし、緻密にコスト計算したつもりでも、コスト・プラス法には盲点があるんですね。それは競合他社の視点が考慮されていないというところ。競合他社が同じような商品を低価格で売り出したとき、コスト・プラス法による価格設定では売りにくくなるわけです。
 また、コスト・プラス法には顧客視点も欠けています。「我が社が自社商品に感じている価値」と「お客様がその商品に感じている価値」との間には違いがあるのです。一致することもあるでしょうが、多くの場合はギャップがあると考えるべきでしょう。
 印刷業のような受注型の製造業では、コスト・プラス法による価格政策が主流であり続けるに違いありません。かかったコストに自社の適正利益を上乗せする。実にまっとうなやり方であり、その方法は否定されるべきものではありません。
 しかし、コスト・プラス法を綿密に行えば行うほど、他社との競争に敗れたり、顧客との認識のギャップに気づかされることになるでしょう。残念ながら、コスト・プラス法はおおざっぱな価格政策であり、今日の複雑な経営環境を考えると、精度の低い価格設定方法といえるのです。
 次世代幹部となる人は、もう一段戦略的な価格設定方法を知っておくべきでしょう。それは「コスト」よりも「価値」に目を向けるやり方です。明日はPSM分析について考えてみたいと思います。

※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。

〒080-0046 北海道帯広市西16条北1丁目25
TEL.0155-34-1281 FAX.0155-34-1287

高原淳写真的業務日誌