第18講 価格戦略 3

第18講 価格戦略 3

おはようございます。
 訓子府での取材。午前10時の時点では激しい雨。それが取材時には小雨の状態に。奇跡的に畑の中で撮影することができた。青空というわけにはいかないが、ここ数日の中ではベストに近いコンディションといえる。夕方早めに帰宅。道北、とあるエリアの宿を予約しようと思ったが、まったく空室がない。8月いっぱいはこんな感じかな? 写真選びを終えた時点で眼精疲労がピークに達し、仕事を終えることにした。

高価格政策と低価格政策

今朝は低価格政策から話を進めていきます。
 これは思い切った低価格で商品を販売し、短期間で大量の商品を販売することによって利益を上げようという政策。つまり、市場占有率を高めようとする価格戦略です。どちらかというと、中小企業が苦手とする戦略。なのに、多くの中小企業が意図しないまま巻き込まれてしまっている価格政策なのです。
 市場に浸透することを目指す価格なので、「市場浸透価格」とも呼ばれています。
 低価格政策で思い浮かぶ企業はいくつもあります。消費者のデフレマインドは根強く残っていますから、低価格政策に徹した企業が大きくシェアを伸ばしています。ハンバーガーならマクドナルド、家具はニトリ、牛丼はすき家、衣料品はユニクロ……。財務体力の備わっている企業でなければ、低価格政策は成功しにくいものです。
 低価格政策は他社から真似されやすい商品、参入されやすい業界において行われるケースが多いものです。
 B2Bの場合は、ユーザーが競合他社に流れないようにする目的で低価格政策が採用されることも多いでしょう。印刷業もそうですが、顧客は一度購入(または発注)した会社から他社へ乗り換えることに、心理的抵抗感を覚えることがあります。したがって、業者はたとえ低価格でも、固定客になってもらうことで長期的に利益を生み出すことができる……。そう考えるのです。多くの企業が低価格なトライアル商品を持っているのはこのためでしょう。
 高価格政策も低価格政策も、ともにブランド戦略のワンステップです。「品質がいい」「ステイタスに感じる」という高価格政策による信頼性。一方、低価格政策には「ふだん使うならこの商品」「昼食なら食べ慣れているこの店」という信頼感。どちらもブランドとなり得るものです。
 ここで述べた高価格政策と低価格政策。印刷関連商品を数多く持つ我が社の場合、両者を効果的に組み合わせることが、価格戦略の重要管理点なのではないかと思います。
 たとえば、スーパーなどへ行くと、特売品もあれば定価に近い商品も売られています。利益率は商品一点ごと異なっています。その中で、どのように商品価格を組み合わせれば利益が最大化するのか? スーパーでは日夜研究され、それが値付けに反映されているのです。

価格決定権を取り戻す

価格戦略には理念、哲学、信念、ビジョンが必要です。
 理念が具現化したもの。それが商品。自社の理念の価値を人々に知ってもらうのが我々の事業活動です。その方法として、「この商品にはこれだけの価値があるのだ」と自信を持った値付けを行うのが高価格政策。逆に「まず一度試して、我が社のファンになってください」と訴えかけるのが低価格政策。どちらも、哲学と信念がなければ筋の通った戦略にはなりません。
 他社と比較され、価格交渉され、しぶしぶ価格を引き下げる……。現実にはこのようにして価格が決定されるケースもたびたび見受けられます。決して理念、哲学が弱いというわけではないのですが、多くの企業(我が社も含む)はこうした不本意な価格設定を余儀なくされています。市場が縮小していったバブル崩壊以降、価格決定権は生産者(製造者)から消費者へシフトし、深刻なデフレを招いているのです。
 こうした現状を打開するにはどうすればよいのでしょう?
1.圧倒的な製品価値をつける(編集、制作、製造部門)
2.圧倒的な商品価値をつける(全部門)
3.圧倒的な商品知識をつける(営業部門)
 僕の考えではこの3ステップです。ここでいう製品とは印刷物とか出版物といった形のあるもののこと。一方、商品とは「製品+サービス+イメージ」のこと。「製品の質は高いが、サービスはイマイチ」といった場合、商品価値は「イマイチなもの」として受け止められることになるでしょう。商品価値は全社で高めるべきものなのです。価値の高い商品があってこそ、営業部門は自信を持って販売することが可能となります。
 営業部門に求められるのは、圧倒的な商品知識です。ここでいう商品知識とは、自社製品に関する知識だけではありません。顧客が真に求めているニーズや抱えている悩みについて熟知していること。印刷事業、広告事業はソリューションビジネスの典型ですから、顧客の潜在ニーズに応えられるような圧倒的知識と提案力が求められるのです。
 圧倒的な製品価値、商品価値、商品知識。これにより、失われた価格決定権を自社に取り戻すことができる。そう考えて差し支えないでしょう。さらにいえば、自社商品の中で価格決定権をしっかり保有しているものを認識することが重要です。そこに我が社の真の強み、コア・コンピタンスがあると考えられるからです。

※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。

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高原淳写真的業務日誌