
おはようございます。
午前中、ある会報の制作を一気に進めようとする。が、素材が十分揃っていない。予想通りの難航。休憩をはさみながら、夕方まで作業を続ける。午後7時から帯広経営研究会総会と8月例会。経営白熱教室と題したパネルディスカッション。僕はパネラーのひとりとして参加。テーマは「顧客満足が先か?従業員満足が先か?」というもの。「白熱」というわけにはいかなかったが、おもしろいと思う考えが会場内から出てきた。それは「社員は顧客満足を考え、社長は従業員満足を考える傾向にある」というものだった。確かにそう言えるかもしれない。
このテーマについては少し語りたいことがあるので、このまま話を進めてみようと思います。ちなみに、僕は「従業員」という言葉は使っていないので、「社員」に置き換えています。
顧客満足も社員満足もどちらも大事。この点で異論を述べる人はたぶんいないことでしょう。ただ、どちらが優先されるのかという点では意見が分かれるところ。現在の自社の置かれている状態、抱えている問題によって異なるに違いありません。
ところが、ネットで検索してみると、「社員満足なくして顧客満足なし」と結論づけている主張が多いことに気づきました。これは僕の想像するところ、「今日のご時世がそう言わせている」のでしょう。僕はここに根深い問題が隠されているのではないかと考えています。
昨日の例会の中でも、この問題の入り口となりそうな意見がいくつか飛び交っていました。あと1時間くらいあったら、もっと深い話になったことでしょう。顧客満足の「満足」とはどういうことか? あるいは、そもそも顧客とは誰か? そうした本質的なところで議論を深めることができれば、ネット上で飛び交っている社員満足優先説とは異なる展開になっていくのかもしれません。
僕は顧客満足(customer satisfaction)という言葉を健全な意味で使うのであれば、顧客満足を優先させて考えるべきではないかと思っています。
というのも、世の中には「不健全な顧客満足」が蔓延しているんですね。たぶんどの業界、どの会社の中にもある。その不健全さに気づき、不健全な顧客満足追求をやめた会社が、これから成長発展していくことになるに違いありません。我が社もそうした会社を目指しているわけですが、まだまだ道半ば。たぶん、僕と同じような思想を持つ経営者も多いのではないでしょうか?
では、不健全な顧客満足とはどういうものなのでしょう?
それは「お客様は神様」といった発想に起因する顧客第一主義にあると僕は考えています。お客様第一主義というのは悪くはない。けれども、「お客様は神様」とあがめているうちに、どんどん歪んでいってしまうことになる。お客様は神様ではないんです(当たり前ですが)。客自身も、そのことをよくわかっている。それなのに、神様として扱われているのですから、殿様か王様になったような気持ちになってしまう……。ここに重大な問題がある。
その結果、社員がお客様の奴隷か召使いのようになってしまうという深刻なケースが起こりやすい。たぶん、社員満足優先説の根底には不健全な顧客との関係が存在するに違いありません。
お客様も人間、社員も人間。単純にそれだけの話ですから、どちらが上、どちらが下ということはない。みんな対等である。誰もがそう考えれば、顧客との関係は健全なものとなり、誰も奴隷や召使いにならなくて済むわけです。少なくとも、ここ十勝ではそういうビジネス環境を整えていかねばならない。僕は18年前からずっとそう考え続けています。まだ成果は十分とはいえませんが……。
神様扱いされた顧客は、社員よりももっと深刻なダメージを受けていると考えるべきかもしれません。
それは「過剰サービス」という現象によく見られます。客に何もさせないことがサービスなのだ。そう考えている企業・店舗がけっこう多いんですね。これは顧客を子供扱いしているのに等しいのではなかろうか? 手取り足取り、あるいは至れり尽くせりのサービス。それは顧客が学んで成長する機会を奪い取ってしまうもの。過剰サービスが蔓延すると、「何もできない客」が増えていってしまいます。そうした何もできない人は、完璧なサービスでなければ満足できない人になってしまう。近年、クレーマーが増えているのはこのあたりにも一因があるのではないかと思います。
顧客は本当は「満足」など求めていないのです。ちょっと言いすぎかな……。満足よりももっと欲しいものが他にある。そのほうが正確ですね。
本当に欲しいもの。それは「成長」と「達成感」ではないかと僕は考えています。健全な社員は仕事に熱心に取り組むことを通じて、自己成長感、自己重要感、達成感といったものを手にすることになります。仕事力と人格力を高めていく。なのに、顧客の側は過剰サービスの結果、放置されてしまうことが少なくない。
「満足」を与えられ続けると、そんな物足りない気持ちになっていく。一消費者としての自分を振り返ると、そんな傾向を感じ取ることができる。もっと自分にできることがあるはずだ……と思ってしまうんですね。
今の時代に成長している産業や成長企業を観察するとよくわかります。過剰サービスを排して「一緒に物事を進める」というビジネス。このあたりに成長の種がある。各種ネット予約もそうですし、セルフスタンド、セルフレジ、シェアリングエコノミー……。もっといい事例がありそうですが、今は頭に浮かんできていません。
そうそう、我が社の自分史通販事業が普及すれば、「一緒に物事を進める」ビジネスの好事例となるでしょう。本を書き上げるという人生の一大事業を一緒に進めていく。顧客にとって、大きな成長感、達成感につながるはず。
健全な意味で顧客満足という言葉が使われているのであれば、僕は社員満足よりも優先させて考えるべきではないかと思います。自分も含め、社員は顧客満足のために、自分の能力を生かして「いい仕事」をしようと努力しているわけです。そこに仕事の喜びがあり、結果として社員満足につながることにもなるのです。
中小企業が圧倒的多数を占める十勝のような地域経済では、その気になれば顧客満足も社員満足も容易に高められるはず。人々の意識の中から、いかに上下関係を取り除いていくか? ここがポイントといえるでしょう。
