
おはようございます。
午前9時、某プロジェクトのミーティング。その後はたまりにたまっている仕事を片付けるべくパソコンに向かう。スピードはまあまあだが、ゴールが見えてこない。午後7時、帯広商工会議所青年部の例会で講義をさせていただく。テーマは「自社の魅力を言葉で伝えるには」というもの。キャッチコピーの話。講義時間は40分。その後はあらかじめ記入していただいた課題に沿って、グループディスカッションが行われた。限られた時間ではあったが、ユニークなキャッチコピーがいくつも誕生した。もう少し練れば実際に使えるものになるかもしれない。そう思わせるものもあった。
借りてきた言葉では意味がない
前々回書いた通り、自社の魅力をひと言で伝えるようなキャッチコピーを持っている会社は非常に少ない。大企業ですら、何の意味もないキャッチコピーを社名の横に添えている……。それが現実です。
中小企業の場合はどうか? 圧倒的多数の企業はキャッチコピーを持っていない。たとえコピーはあってもキャッチにはなっていない。ということは、持っている企業は、それだけでも同業他社との違いを際立たせることができる。そう言ってよいのかもしれません。
とはいえ、大企業がもっともらしく付けているようなキャッチコピーをこしらえても、自社のイメージアップにつながるとは考えにくい。もっと、頭を使わなければなりません。
企業のキャッチコピーも自治体のそれも、プロのコピーライターがつくったものは、何となくわかることが多いものです。洗練されている。あるいは、ひねりが加えられている。なるほどと思わせるところがある。ですから、完成度の高いものが多いわけですが、僕としてはあまりおすすめすることはできません。
それはなぜか? 企業のキャッチコピーは、商品のコピーや広告のコピーとは違うからです。
どちらかというと、自社のキャッチコピーというものは経営理念に近いものと考えるべきでしょう。経営理念を広告代理店やコンサルタントに外注してつくってもらう……。そんな嘘のような話もあります。信じられませんね。中小企業がそんなことをすべきではないし、そうしてつくられた経営理念には何の意味もありません。どんなにたどたどしい言葉であっても、「自分の言葉」として明示するから、経営理念が機能するわけです。借りてきた言葉では自社のものにはなりません。
自社のキャッチコピーはどんなに苦労しても自分たちで考える。これを基本とすべきです。ただ、誰もが言葉のセンスを持っているわけではありません。ある程度は、プロの手助けやアドバイスがあってもよい。我が社としても、そうしたアドバイス程度のことなら仕事として受けることがあります。昨日のグループ討議を見ると、異なる立場からの意見やアドバイスはなかなか有効なものかもしれません。
経営理念と同じように扱うべきコピー
僕は編集者、ライターとしては門外漢であるわけですが、さすがに30年以上もこの仕事をしていますから、社外の人から見ると一応はプロということになるでしょう。実際に依頼されれば、商品コピーも考えますし、たまにはネーミングを考えることもある。
ただし、どんなに依頼されても絶対に受注することのないもの。それは経営理念の作成代行です。会社のキャッチコピーもそれに準ずるものとすべき。そう気づいたのは、ずいぶん最近の話。去年のことでした。依頼を受け、考え、自分たちとしてはベストと思われる提案をしましたが、たぶん採用には至らなかった。広告コピーと自社のキャッチコピーとでは、外形的に似ているようでも、まったく意味合いが違ってくるのです。軽く引き受けてはいけない。後になってから、そう気づくこととなりました。
我が社の今の経営理念は2002年に明文化されました。文言の一部は後年手直しされましたが、意味するところは変わりません。2002年の7月から8月にかけて、僕はものすごく長時間、自社の経営理念について考え続けました。当時はまだ存在していた社長室にひとりこもって、ひたすら考えていた。西日が強烈に差し込み、もうろうとしながらも考え続け、ようやく絞り出したのが今の経営理念の言葉です。
決して、無から有を生み出したわけではなく、僕が行ったのは「自社の社歴の中から言葉を掘り起こすこと」でした。創業から今日まで、我が社の中で一貫して行ってきたことは何だったのだろう? それは単に印刷物をつくることではなかったはず。行っている仕事の外見ではなく、本質について考えていく。そうしてたどり着いたのが「価値ある情報」という言葉でした。
この言葉自体、何の真新しさもなく、印刷会社、情報発信企業としては、ごくありきたりなものかもしれません。けれども、これ以上の言葉を僕は発掘することはできませんでした。
嘘のない言葉。創業から今日まで、ひたすら追い求めてきたもの。素直にそう思うことのできる言葉ですから、朝礼で唱和しても違和感はまったくありません。心の片隅には「もっとインパクトのある理念だったらいいのに」という考えもあるのですが、たぶん僕の代ではこれを超える経営理念を生み出すことは不可能でしょう。経営理念は永遠に不変ということはありません。次世代の経営者、幹部となる人たちに理念をリニューアルしてほしいと思います。
自社の価値、自社の本質を短い言葉で表現する。それは短い言葉であればあるほど難しいものです。長い文章であれば、それほど苦労することはないでしょう。実際、会社案内や自社の紹介文を書く機会があります。他の原稿よりも作成に時間はかかりますが、書けないということはありません。わかっていることであれば書くことは可能。しかし、心に残るフレーズを数文字で表現するとなると、特別な表現力やセンスが必要になってくる。経営理念について来る日も来る日も考え続けたように、キャッチコピーにも同じくらいのエネルギー投入量が必要なのかもしれません。
