
おはようございます。
午前中は増毛で取材。再びロングドライブ。といっても、運転の大半はI氏。熟睡している間に、帯広に着いてしまいました。夕方2時間ほど事務的仕事。気が遠くなりそう。ものすごく仕事をため込んだ状態で週末に突入することになりました。
今朝は久しぶりに「新版・次世代幹部養成塾」の続きを書くことにします。
売上とは何か?
当たり前の話ですが、個人も会社も毎日経済活動を行っています。豊かで文化的な生活を営むためには、経済活動を抜きにしては考えられません。どんなに崇高な理念や哲学を持っていたとしても、経済活動(売上・利益の獲得)を行わなければ、自立して生きていくのはほぼ不可能。理念や哲学なしの経営は世の中に害悪をもたらしますが、売上・利益が得られないような経営を続ければ企業は破綻を迎えます。理念を深めることと売上・利益を得ることとは、経営の両輪をなすものといえるのです。
我が社は創業から60数年にわたって事業活動を行っていますが、これは売上・利益が途切れることなく得られてきたために他なりません。
会社の決算書には、売上と利益の数字が正確に記載されています。月次の利益計算書(変動損益計算書)にも、月ごとの売上・利益が載っています。また、利益額は書かれていませんが、売上日計表には個人別、商品別の受注額や売上額が細かく載っています。こうした数字に対して、僕らはもっと敏感にならねばなりません。
その上で、日計表、利益計算書、決算書の数字に一喜一憂することなく、その本質的な意味と将来の可能性について考えること。次世代幹部にはそうした能力が求められます。
日計表や財務諸表に敏感になると、「売上とは何なのか?」という大きな疑問に突き当たります。僕らが何気なく「売上」と呼んでいるもの。それはもしかすると、人によって解釈に大きな違いがあるのかもしれません。
僕の想像も混じっていますが、営業職の人にとって売上とは「受注」とほぼ同義ではないでしょうか? 受注が得られれば、時間の差はあってもいつかは売上になる……。そんなふうに考える傾向があると思います。
その一方で、受注した製品は納品されなければ売上にはならないという歴然たる事実があります。製造部門では、売上といえば、「製品を納品した時点で発生するもの」という考えになるでしょう。
さらに、経理部門はどう考えるでしょう? 請求書を発送しても集金または振り込みされなければ、当然ながらお金は入ってきません。「回収された時点」を売上と見なしているはずです。
単純に考えても、売上というものは社内の立場によって、かなり意味合いが異なっているものといえそうです。
本当のところ、売上とは何なのでしょうか? 一般的な定義としては、「企業会計で用いられる収益区分のひとつ。商品やサービスの提供など、企業の主たる営業活動によって得た収益」ということになります。けれども、我が社の場合はもう少し機能面から売上について考えてみることにします。
固定費をまかなう限界利益はあるか
月末の給料日になると、全員もれなく給料が振り込まれます。これは会社が経済活動を行っているためです。
その結果、働きがいい人も働きの悪い人も、会社への貢献意欲が高い人も低い人も、金額の違いはあるにせよ、全員給料が入ってくることになります。この事実を当たり前と思っている人が多いかもしれませんが、これは実に大変なことなのです。
給料、つまり人件費を会社にプールするためには利益を獲得する必要があるのです。人件費ばかりではありません。車両費、旅費交通費、水道光熱費、電力費、運賃、交際費……。こうした固定費と呼ばれるものは、たとえ売上がゼロであっても、毎月固定的に発生するのです。売上がゼロだから給料もゼロというわけにはいきません。当たり前ですよね。
こうした固定費は何によってまかなわれるのか? これが最初に考えるべきポイントです。賢明な次世代幹部の皆さんなら、もうおわかりのことと思います。そう、限界利益によって固定費がまかなわれているのです。限界利益とは、加工高、付加価値とも呼ばれています。この3つには厳密に言うと違いがあるものの、我が社では一緒と考えてよいでしょう。
なお、社内でよく使われている「粗利益」という言葉は、限界利益とは異なるものです。売上から売上原価を差し引いたもの。それが粗利益。決算書の中に出てくる売上総利益のこと。製造原価の中には製造部門の人たちの人件費(労務費)が含まれています。
少しややこしい話ですが、会社全体の利益を考えるならば、限界利益と粗利益は別物と区別しなければなりません。部門の損益計算書に限定するならば、出版、広告部門の場合は限界利益と同じ数字と考えてもよいでしょう。
売上から変動費(原材料費+外注加工費)を差し引いたものが限界利益。限界利益が十分に獲得できていれば、固定費を支払っても会社全体にお金が残ります。その残ったお金が経常利益です。
つまり、経常利益の残すためには、固定費をまかなうことのできる限界利益を確保しなければならないということになります。
では、限界利益は何によって得られるのか? 当然、売上ということになります。つまり、「売上の中には固定費をまかなうことのできる限界利益が含まれていなければならない」。ここが重要なポイントです。
世の中には、限界利益を無視して原価すれすれの値引きを行って商品を販売する会社も存在します。ただ目先のお金を回して延命を図っているだけの会社。また、健全な会社であっても、限界利益に対して無関心な社員が目の前の数字を追いかけた結果、赤字となるような受注・売上を上げるケースがあります。
「限界利益のないものを売上と呼んではいけない」。これを社内のルールとしなければなりません。極端に利益率の低い商品とか、「受注残」として日計表にずっと数字が残っているもの。あるいは、請求書を出しても回収のめどが立たないもの。これらは真実の売上ではありません。偽りの売上なのです。
経常利益が得られるかどうかは、固定費をまかなうことのできる限界利益を確保できるかどうかにかかっています。重要なのは売上規模を追求することではなく、売上から変動費を差し引いた限界利益を高めていくことなのです。