おはようございます。
パソコンに向かったのは午後から。ギリギリの攻防が続いています。中堅幹部学校講義用の資料が思わぬ「大作」になった。単にページ数が多くなったというだけですが。夕方からは原稿を書くための準備。写真選び、インデザインへの配置。レイアウトは固まりました。いよいよ書けそうな気持ちになってきた。この「気持ち」が僕の場合は重要なのです。原稿関係は、今日で決着をつけねばなりません。
今朝は「門外漢の原稿作成技法」の続きです。
スーパー後割り
前回は「さまざま取材スタイルがある」という話でしたが、原稿の書き方にも各自のスタイルというものがありますね。
大きく分類すると、「先割り」(さきわり)と「後割り」(あとわり)という書き方があります。チケットの割引サービスのことではありません。先に割り付け(レイアウト)を行うか、後から行うかの違い。
先割りの場合は、できあがったレイアウトの文字数に沿って原稿を書いていくことになります。字数には制約があるものの、レイアウトができあがっていますから、ライターとしては書きやすい。初心者の場合は先割りのほうがなじめるのではないかと思います。
プロになると、どちらでもOKということになるでしょう。全体のページ数と入れる写真の点数とサイズ。これらをイメージして、おおよその文字数を頭に浮かべる。そうして、本文、見出し、キャプションを書いていく。完成したテキストデータと写真をデザイナーに渡す。これが後割りの仕事の進め方。
だいたいこれが常識的な進め方だと僕は理解してきましたが、最近になって「スーパー後割り」と呼ぶべき原稿の書き方があることを知りました。それは編集長M氏の書き方。本当にビックリしました。
というのも、僕は取材で写真を撮っても、編集者にデータを渡すまでに数日のタイムラグがあるのです。撮った写真全部を渡すのではなく、露出、ピントその他、使う可能性のない写真を削除してから渡すようにしています。この作業に時間がかかる。
M氏に対しても同様で、他の編集者よりもさらに数日待たせてしまうことがあります。で、待ちきれずに写真を見ることなしに原稿を書く。そんなことができるのか……。僕にはちょっと信じられません。後から写真と照らし合わせてキャプションは調整することになるのでしょうが、本文が書けるというだけでも神業級です。
こういう原稿の書き方をする人は、他にもいるのだろうか? いないだろうな……。手書きの時代から文字数をピタリと決めて書くことのできるM氏ならではの執筆術といえそうです。
スーパー先割り
一方、僕のほうはどうかというと、実は「スーパー先割り」なのです。ここが僕の門外漢的なところ。先割りよりももっと先を走っている。
通常の編集者はフォトグラファーから受け取った写真の中から使用する写真を選び、手書きでラフを書いてからデザイナーに渡します。そうすると、レイアウトができる。それから、原稿を書き始めます。
僕の場合は「手書きでラフを書く」ということができないんですね。手書きだと書き損じがやたら増える。3回くらい書き損じると、やる気が極端に失われる。したがって、あるときから「手書きのラフは書かない」と決めました。どんなページでも、自分でインデザインでレイアウトする。このやり方に変えてから、ストレスは激減しました。
使用する写真を選ぶ。その中からメイン写真を決め、インデザインで配置していく。実際にモニター上でレイアウトを見ていくと、しっくりこないことがあるものです。こんなとき、メイン写真を変更したり、写真点数を増減したり、自由自在に方向転換することができる。これも自分でレイアウトをするメリットのひとつ。手書きラフよりも時間はかかりますが、「書きたい」「書ける」という気持ちを高めるにはこのほうがよい。インデザインを使う前、イラストレーターをメインに使っていた頃から、僕はスーパー先割りを試していました。1996年頃のことでしょうか。
自分で作成したレイアウトをモニターに映し出し、メガネを外してぼんやりと眺めてみる。そうすると、文字が埋まっていてページが完成しているかのように錯覚するのです。実際に原稿を書き始めると、現実に引き戻されて苦労の連続となるわけですが、一瞬であっても完成図が脳裏に焼き付けられる。これが先割りの醍醐味といえましょう。
実はスロウ編集部の中にも、僕の手法を一部取り入れたいと考えている人がいるようです。インデザインを使って自分でラフを作成できたら……。いやぁ、わかります。この快適さ、みんなにも体験してほしい。
ただ、この方法にもデメリットがあります。デザイナーのやる気を削ぐことにならないか? そう考えることもあるのです。雑誌づくりでは、編集者、フォトグラファー、デザイナー、それぞれが均等にクリエイティブであることが求められます。僕は写真、原稿、デザインをひとりでこなしてしまうことが多いのですが、自己完結型がよいとは言い切れません。むしろ、デザイナー主導のページ、フォトグラファー主導のページがあってもよいと考えています。
自分の専門分野において能力・技術を確立し、その上で別なジャンルに関する知識を少しずつ増やしていく。一緒に仕事をしている他の職種の人たちの苦労を知るということが大切ですね。
誤解のないように補足すると、僕はレイアウトは自分で行いますが、デザインをしているわけではありません。あくまでも、ラフの延長線上にある作業。見栄えよくタイトルを入れたり、写真の位置を正確に揃えたりするのはデザイナーに任せています。
門外漢的な働き方をすると、自分以外のプロのすごさがわかってくるものです。実際にやってみると、プロとの違いがわかる。素人は知ろうとしなければなりません。