第13回 同時並行執筆

第13回 同時並行執筆

こんばんは。
 何としても今日一日で決着をつけよう……。そう思って原稿執筆、レイアウト、画質調整作業を進めていく。とはいえ、丸一日パソコンに向かっていたわけではなく、買い物と商品撮影に5時間くらい費やすこととなった。夜9時再開。日付が変わる頃、一通り完成した。18ページ分入稿。少し、肩の荷が下りた。だが、まだ何かやり残しているような……。

「何とかなる」思考

この道一筋というプロの場合、端から見ていても惚れ惚れするような集中力を発揮するものです。集中力の出し方は、僕の観察するところ2通りある。ひとつは、近寄りがたい雰囲気を漂わせるタイプ。もうひとつは、鼻歌交じりに仕事をしているのに実は集中しているというタイプ。
 社内にも社外にも事例となる人は豊富にいます。こうした人の働き方から多くを学ばねばなりません。
 僕の場合、集中力を発揮するにはいくつかの条件が揃っている必要があります。「締め切りが迫っていること」と「素材が揃っていること」。この2つが大きいかな? ただ、何といっても「差し迫った締め切り」がすべてでしょう。他の条件は満たされていなくても、何とかなる。この「何とかなる」というのは30年以上の経験によって、得ることのできた心持ちです。
 たぶん、30歳前後の数年間に経験した、とてつもない仕事量が僕の「何とかなる」思考を築き上げた。働き方改革は必要だと思うものの、こうした経験なしに仕事人生の中盤以降が乗り越えられるとは僕には思えません。若手の人たちはどのように自信を得るのか? 自分を働きづめに追い込むことのできない時代には、別な発想、別な戦略が求められます。
 ですから、僕のやり方はあまり参考にはなりません。体力的な衰えを感じる今でも、差し迫った締め切りを集中力強化に活用し、何とか乗り越えている……というのが現状。いい加減、この戦略は見直すべき時期に来ているのですが、これ以外の方法を僕はまだ見いだしていない。50代のうちに新しいやり方を確立せねばなりません。
 そんなわけで、写真以外の仕事については、それはもう、常識外れの仕事の進め方をしています。
 プロの編集者やライターの場合、取材ノートを見ながら頭の中で文章を構成し、パソコンに向かうというのが一般的な執筆の仕方でしょう。そうして、文字数ピッタリに原稿を書き上げる。できあがったテキストデータと写真をデザイナーに渡す(先割りの場合は先に写真、あとからテキストを渡す)。だいたいみんな、そんなやり方だと思います。
 僕も途中までは一般的なやり方で仕事を進めようと努力します。けれども、集中力にムラがあるようなのです。ふとしたことから、執筆が前に進んでいかなくなることがある。コーヒーを飲んでもチョコレートを食べても効果はなく、代わりに睡魔がやってきます。
 この時点では、まだ差し迫ってはいない。少しだけ時間に余裕があるから、睡魔の入り込む隙間ができてしまう。

視覚効果を活用した原稿執筆

本当に差し迫ってくると、睡眠時間はあまり関係なくなってきます。そうして、ようやく僕にも集中力が訪れる。少しだけハイテンションになっている自分を発見する。集中以前に感じていた眠気、頭痛、肩こりといったものは消失し、ただひたすら仕事に向かうこととなる。最近の傾向では深夜、または早朝にかけての時間帯がもっとも集中できるようです。単純に、電話がかかってくる心配がないからかもしれません。
 そして、門外漢ならではの裏技を使うこととなる。一太郎、フォトショップ、インデザインの同時並行使用による原稿作成。
 普通、原稿執筆、写真選びと画質調整、デザイン(レイアウト)は別々に行うもの。ですが、僕の場合は「差し迫った」状況にありますから、すべてを同時並行で進めていくことが多いのです。
 一番よくあるパターン。それは前にも書きましたが、「スーパー先割り」と呼ぶべきやり方。自分でインデザインを使ってレイアウトをしてしまうのです。それから、一太郎で「書けるだけ書いていく」。ここで、一気に原稿が完成することもあれば、途中で集中力が途切れそうになるケースもある。しかし、差し迫っていますから、何が何でも前に進まなければならない。
 そこで、書き上げたところまで、いったんインデザインに流し込んでみることになります。こうすると、どのくらい書き足りないのか、視覚的に把握することができる。この「視覚的」というのが門外漢には必要なんですね。
 本当にギリギリまで追い詰められているときには、「インデザイン上で原稿を書く」という裏技(?)も使用します。これは目を酷使することになるので、できれば避けたい手法。ですが、そうもいってはおられません。もう、何でもありの世界になっています。
 僕の場合、字数調整は完全にインデザインで行うべき作業となっています。他の方法はまず考えられません。キャプションも、たいていの場合はインデザインで書くことになります。いちいちコピペする必要がありませんから、このほうが断然早い。
 フォトショップはどういうタイミングで使うのかというと、思考が滞ったときですね。頭の中で考えすぎると、アイデアが出にくくなる。そんなときは写真の画質調整作業を行うと、作業が前に進むだけではなく、写真を見ているうちにひらめくことがあるのです。気分転換にもなって一石二鳥。画質調整済みの写真を再配置(それまではラフ用に縮小画像を貼り付けておくことが多い)すると、レイアウトがより美しくなる。原稿を書く上で、少しだけモチベーションが上がります。
 通常の編集者、ライターがやらないことまでやっているため、手間暇は当然かかるわけですが、この方法以外ではもうできなくなってしまいました。それゆえ、どうしても深夜まで作業が続くことになるのです。

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高原淳写真的業務日誌