おはようございます。
午前中は会議の準備、校正その他。午後はミーティングと帯広市産業振興会議。2部構成になっていて、終了したのは9時過ぎだった。
それにしても、台風が猛威を振るっています。異常気象が常態化している。これをどう捉えるべきか? これからの経営には気象リスクを組み込む必要がありますね。またそれ以前に、こうした現象からメッセージを読み取るべきではないかと思ってしまいます。
「決算書を読む」の3回目は損益計算書(P/L)です。
P/Lに載らない「限界利益」
P/Lはこの1年間、企業がどのような活動を行ってきたのかを示すものです。一番上に売上の数字、一番下には純利益の金額が明示されています。
僕らはふだん何気なく「利益」という言葉を使っていますが、P/Lには5種類もの利益が載っています。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期純利益。これらがP/Lに記載される5つの利益。しかし、もうひとつ忘れてはならない利益があるのです。そのもうひとつとは「限界利益」のこと。第19講の中に出てきた言葉ですが、これは決算書に載ることはありません。とはいえ、企業経営においては非常に重要な数字といえます。
まずP/Lに載ることのない限界利益から説明していきましょう。経営者の考え方にもよりますが、僕は限界利益こそ、もっとも重要な利益であると捉えています。なぜなら、限界利益は「加工高」「付加価値」とも呼ばれる通り、企業の魅力度や仕事能力を示すものだからです。
限界利益額は我が社の場合、月次で作成される利益計算書(変動損益計算書)に載っています。計算式は「売上-変動費」。変動費とは原材料費+外注加工費のこと。限界利益とは、自社で生み出した価値を金額に表したものなのです。
我が社の場合、紙やインキは他社から購入することとなります。一方、情報の編集やデザイン、製版、印刷、製本といった仕事は社内で行われ、その結果、顧客へは原材料費の数倍の価格で販売されることになるわけです。この差額が限界利益。我が社の能力、実力が高まれば、限界利益額は増えていく。他社と同じような商品を作っていれば、価格競争が起こりますから、限界利益額は減ってしまいます。言い換えれば、我が社で働いている一人ひとりの実力を数値化したもの……と考えてもよいのではないでしょうか。
5つの利益
P/Lに登場する最初の利益は売上総利益です。売上総利益は粗利益とも呼ばれています。限界利益と混同してしまうことがあるので、ここは区別していただきたいと思います。ただ、業種によってはほぼ同じ金額になります。我が社の中でも部署によっては粗利益を限界利益と同じものと考えて差し支えないでしょう。
売上総利益=売上-製造原価。製造原価には原材料費、外注加工費の他に、人件費を含む製造部門の固定費も含まれています。つまり、売上総利益を見ても、自社の能力を正確に把握することは不可能なのです。このため、多くの企業では費用の項目を変動費と固定費に分類し直して、利益計算書(変動損益計算書)を作成しています。我が社においては、売上総利益の金額よりも製造原価の内訳に目を向けるべきかもしれません。
2番目に登場するのは営業利益。その名の通り、本来の営業活動の結果残ったものが営業利益です。どの会社でも重視している利益といえます。
計算式は「営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費」。我が社の利益計算書に当てはめると、「営業利益=売上-変動費-固定費(営業外損益を除く)」ということになります。つまり、支払利息や受取利息、それに税金等を含めず、実際の事業活動の中でどれだけ利益が生み出されたのかを示す金額であるということです。
3番目は経常利益。これもよく使われる言葉。経常利益は営業利益から営業外損益を引いた金額です。大雑把にいえば、支払利息と受取利息の差額を営業利益から引いたもの(利息がプラスとなった場合は加算したもの)。企業によっては営業利益よりも増えるケースがあります。
経常利益は何を示す数字なのでしょう? 一般には「企業の総合的な収益力」とされています。借り入れの多い企業の場合は、せっかく営業利益が出ていても、ここでガクンと利益額を減らしてしまうことになります。
残る利益はあと2つ。
税引前当期利益とは、経常利益から特別利益、特別損失の差額を引いた金額(これもプラスになることがあります)。特別利益、特別損失には固定資産税売却益(損)や災害などによる損失など、その期にだけ発生した特別な損益を計上します。
そして、最後の利益は当期純利益。これは法人税等を差し引いて最終的に残った金額です。この純利益の数字は、B/Sに記載されている利益剰余金に加算されることとなります。つまり、利益剰余金とは、創立から当期まで毎年積み重ねられた利益または損失の総額を示しているということです。
ここまで、B/SとP/Lについて説明してきましたが、どちらかというとP/Lのほうがわかりやすかったのではないでしょうか? 一年一年の積み重ねがB/Sに反映される。そう認識して、まずはP/Lの数字の中身をよりよいものにしていく。最初のうちは、そのように考えるようにしましょう。それぞれの利益の意味を理解し、自社及び所属部署の課題に取り組んでほしいと思います。
※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。