第19回 緻密な仕上げ

第19回 緻密な仕上げ

せたな町/2018.9.14

おはようございます。
 昨日は早朝撮影。朝5時過ぎから約2時間。せたなの風景を撮ることができました。絶好のコンディション。久しぶりの盛り上がり。ああ、これが今の自分には必要だったのだ。そう思わせる朝でした。
 取材は午後1時から。場所は銭函。JRを乗り継いでやって来た編集者S氏と合流。すでにK氏、T氏がいますから、僕を含め、総勢4名体制となる。S氏と僕が取材している間、他の2人はカフェでノートPCを開いていた。パソコンとWi-Fiがあれば、原稿執筆はどこででもできる。それがこの仕事のいいところ。
 銭函での取材は一風変わったものとなりました。どんな記事になるのか楽しみでもあります。僕は自分の嗅覚だけを頼りに撮影していきましたが、果たしてS氏の意図するものとなっているのだろうか? フタを開けてみなければわかりません。ともかく、1時間弱、懸命に撮り続けました。
 取材後は札幌へ。北海学園大学で打ち合わせ。1時間ほどで終わり、S氏と僕は札幌の宿へ。T氏は函館へ、K氏は札幌の自宅へ戻る。夕食後、S氏は市場調査的活動。僕も札幌駅周辺をひとめぐり。自分の今後の写真活動についてぼんやり考えていました。

新入社員時代の学び

自分を客観視する。それは大事なことだとは思うのですが、客観的になりすぎると「自分に自信を持つ」ことができにくくなるのではなかろうか? 自分という人間を、あるいは自分の仕事ぶりをどのように評価したらよいのか。過度に客観視すると、自分の欠点が目につくようになり、自己評価はシビアなものとなりやすい。客観視しようとすればするほど、客観的ではなくなっていくに違いない。僕はそんなふうに思っています。
 客観視しつつも、別な評価の仕方が必要でしょう。単純に「自分はよくやっている、いい仕事をしている」と認めることです。自分を偽るわけにはいきませんが、実際によくやっている人であれば、「よくやっている」という事実を自分で認め、自分の弱点にフォーカスしすぎないことが重要だと思います。
 ただし、それは仕事が終わって夜眠る前に行う自己評価。仕事中には当然ながらシビアさが求められることになります。
 僕は1年半だけ会社勤めをした経験があります。新卒で入社した会社の壁には次のような貼り紙がありました。
 「大胆な切り口、緻密な仕上げ」
 デザイン、コピー、プランニングを主体とする職場。確かにそうだな……。そう思いながら仕事をしていましたが、僕自身は大胆にも緻密にもなれずに1年たった頃、退社していました。
 なぜ、このフレーズを今も覚えているのか? それは、緻密に制作を進めていく大変さを、僕は学生時代からよく知っていたからです。もちろん、制作とは写真作品のこと。学生時代はオリジナルプリントの制作に励んでいましたから、暗室作業には時間と労力をたっぷりかけて緻密に作業を進めていたのです。
 この学生時代の経験は社会人1年目にはまったく役に立ちませんでした。なぜなら、新入社員時代の職場では写真力を使う場面はほとんどなく、仕事の大半はデザイナーのアシスタントだったのです。緻密になれるほどの知識も技術もない。緻密以前。できるのは、ていねいになることだけ。職場で学んだことは、デザイナーの緻密な作業の進め方。とりわけ、最後の数%を追い詰めるときにすごいエネルギーをかけているということ。これは僕のプリント作業と同じだな、と思いました。

最後の数%をどう詰めていくか

門外漢であることの弱点は、最後の数%を詰められないことではないか? そんなふうに考えることがあります。写真の場合、残り数%をどのように詰めていったらよいか、よくわかっています。理論的にではなく、感覚としてわかっている。けれども、自分の専門外のこととなると、ほとんどわかっていないのです。僕だけでしょうか? たとえば、自分の書いた原稿の完成度を100%にしたい……。そう思っても、100にはならない。93くらいのところで壁に突き当たり、そこから先へ進まないことが多い。
 体裁を整えることに意識が向かってしまうと、自分の考えとは異なる形で完成度100の文章を仕上げてしまいます。これは自分にとっては不本意な100%。不本意であり、しかも自分自身に対して不誠実な100%ということになります。
 ならば、100までたどり着かなくとも、自分が表現したいと思っている世界を93%の状態で入稿するほうがよいのではないか? 僕はそう考えていて、実際にそのようにしています。その結果、当然ながら校正では赤が入ることになる。
 誰もが100を目指して仕事を進めているわけです。しかし、100になるものとならないものとがある。100にならないからといって、最初から93を目指してしまうと、実際に書き上げる文章は90にも届かないでしょう。100を目指してギリギリまで努力するから、93までたどり着く。自分の今の実力では不可能だとわかりながらも、100に挑むことが大切なのだと思います。
 自分の仕事の結果が100ではなかったからといって、自分に対しての評価を下げてしまうのは問題ではないかと僕は考えています。むしろ、簡単に100の結果が得られるような仕事の取り組み方をするほうが問題。常に、自分の実力よりも上の能力が求められるような仕事に挑むこと。そういう困難なテーマを最低ひとつは抱えながら仕事をすべきでしょう。
 僕は北海道には素晴らしい仕事をする人が大勢いること知っています。そうした人たちを何度も取材してきました。そしてまた、素晴らしい感性を持つ人も大勢いて、これから才能を開花させそうな人が何人も控えている。「何に挑むか」と「最後の数%をどこまで詰めるか」。この2つが重要です。特に、我が社の若手の人たちには、より困難でやり甲斐のあるテーマを持ってほしいと思っています。
 運よく人から与えられることもありますが、自分のテーマは自分で見つけなければなりません。

ソーゴー印刷株式会社

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高原淳写真的業務日誌