おはようございます。
帯広に戻ってきました。4日間の取材と各種の集まり。撮影したデータの分量は、4日間としては過去最大級となりました。これからの分類、セレクトが大変です。
昨日は岩見沢、三笠でそれぞれ撮影。午後は札幌で行われた北海道青年印刷人フォーラムに参加。夕方、札幌ドーム付近の渋滞に巻き込まれ、帰宅が遅くなりました。それでも久々にたっぷり眠り、睡眠は十分です。
今朝は「新版・次世代幹部養成塾」の続きです。
ドメインとは
前回はクロスSWOT分析やポートフォリオ分析を通して、自社の成長、回避、改善、撤退戦略について述べていきました。今回は個々の商品戦略ではなく、全社的に捉えた事業戦略について考えてみたいと思います。
そもそもドメインとは何なのでしょう?
ドメイン(domain)とは「生存領域」を意味し、もともとは生物学から来ている言葉。これを企業経営における「企業領域」に置き換え、そのままドメインという言葉が使われています。
たとえば、淡水魚は海では生きられません。川や湖の中であれば生きていくことができ、種を保存することが可能です。大海原で暮らしてみたい、陸地に上がってみたいと思っても、すぐは不可能な話なのです。
同じことが企業の事業活動にもあてはまるのではないか? 企業の事業活動は淡水魚に比べると、はるかに自由度が高いわけですから、何をやってもよいのではないかと思ってしまいます。しかし、事業領域を自ら規定しておかないと、何の会社だかわからなくなってしまうものです。その結果、どんな会社を目指しているのか、経営者ですらわからなくなり、ビジョンが描けなくなってしまう……。そんな会社も世の中には少なくありません。
ドメインとは、自社のやるべきこととやってはいけないこととを明確に区別するための判断基準となるものです。自社の判断基準となるもの。そう聞いて思い出すものはないでしょうか? そう、経営理念ですね。自社の経営理念の中には、通常、ドメインが含まれているものなのです。
「私たちは価値ある情報を創造、発信、記録することによって、豊かさと幸せの輪を広げます」(ソーゴー印刷の経営理念)
この中の「価値ある情報を創造、発信、記録する」という部分がドメインを表しています。この経営理念を掲げている以上、それに反する事業活動を我が社は行うべきではありません。新規事業を計画する際には、「これは自社のドメインに合致しているかどうか」について、十分に検討を重ねることが大切です。
ドメインは環境変化とともに変わるもの
その一方で、ドメインは硬直したもの、固定化したものと考えるべきではないでしょう。時代とともに技術も知識もライフスタイルも変わっていくわけですから、自社のドメインも当然変わっていくものと考えるのが自然です。
印刷業の場合、2000年代の初めまでは写植、版下、製版フィルムなどが使われていました。ところが、デジタル化が急速に進み、まず写植を使った版下が姿を消してしまいました。さらに、データからダイレクトに刷版(印刷に使用する版)が作られるようになり、製版フィルムは不要となっていきます。つまり、写植、版下、製版をドメインとしていた会社は、ドメインを変更するか廃業するか、二者択一を迫られることになったのです。
印刷会社も他人事として考えるべきではありません。デジタル革命によって、印刷会社も変わっていかねばならない……。もう、10年以上前から「業態変革」という言葉が印刷業界では盛んに使われています。これは「ドメインを変えなければ生き残っていけない」という意味に捉えて差し支えないでしょう。
ただ、ひとつ考えるべきことは、印刷業と一口に言っても実に多種多様であるということです。我が社のドメインは同業他社のドメインとは当然ながら異なっています。
まずは、自社の現在のドメインを明確に認識しておくことが重要です。経営理念に示されているドメインは、あくまでも大きな方向性。これをもう少し詳細に捉えていき、現在行われている事業活動や商品群はドメインのどの部分なのかについて、認識すべきでしょう。
現状認識で重要なことは、「自社はどんな価値を顧客に提供しているのか」「自社はどのような影響を世の中に及ぼしているのか」を明らかにしていくことです。これは自然界を観察してみても明らかなこと。生物は何らかの意味と価値があって存続、成長しているはずです。その種が存在していることによって、環境がよくなったり、自然界の調和をとることができる……。そういう種が長期的に見ると存続、成長していくのです。
ドメインについて自社が考えなければならないのは、顧客から、世の中から必要とされる価値を生み出しているかどうか、という点。自社が生きていきやすいという理由だけでドメインを設定すべきではないと僕は考えています。自社の能力を生かすことができ、しかもそれが顧客や世の中に役立つものであること。そこに我が社の生きていく道があるのです。
そうすると、「今のドメインのままでよいのだろうか?」という疑問が湧いてくることでしょう。そのことについて考えるのが、今回のテーマである「戦略ドメイン」ということになります。
5年後、10年後、どのような業態によって社会の役に立つ企業となっていくのか? それを定めることが大切。今、これが流行っているから……といった受け身的な考えからではなく、「自社はどうあるべきか」「本当は何がしたいのか」について深く考えていくことが求められます。