第22講 戦略ドメイン 2

第22講 戦略ドメイン 2

おはようございます。
 写真セレクト作業に4時間ほど費やすこととなった。膨大な分量。早く終わったというべきか? 一気に行ったため、目がしょぼしょぼになった。さらに商品撮影数カット。これでほぼ力尽きた。あとは休日的な過ごし方。Googleカレンダーを見る。時間が決定的に足りないような気がする。このピンチをどう乗り越えるのか、見物だ(当事者ではあるが)。

自社は何業なのか?

自社のドメインを考える際、避けて通ることのできない質問があります。それは「自社は何業なのか?」というもの。
 ここで「印刷業です」「広告業です」「出版業です」と答えてしまってはいけないのです。確かに印刷業であることは間違いではないのですが、そのような外形的な捉え方では、戦略ドメインを設定することができません。初対面の人に対して自社紹介する際にも、事業内容ではなく、できれば自社の本質を説明すべきでしょう。
 気をつけねばならない点は、業種とドメインとは別物であるというということです。
 業種ということであれば、日本標準産業分類によって、「大分類E 製造業」「中分類15 印刷・同関連業」「1511 オフセット印刷業(紙に対するもの)」ということになるでしょう。言うまでもないことですが、そんな分類に縛られて事業を行う必要はありません。
 しかし、世の中には「印刷屋だから印刷商品しか受注しない」とか「八百屋だから野菜しか販売しない」といった会社があるのです。それで経営が成り立つのであればよいのですが、今日のビジネスは複雑化しています。商品の単品売りや産業分類通りのビジネスでは、成り立ちにくくなってきているのです。
 ドメインの設定は大企業であっても失敗する例があります。たとえば、世界最大のフィルムメーカーだったコダック。2012年に経営破綻したのを覚えている人も多いはず。倒産の理由は「フィルムにこだわりすぎたこと」。写真のデジタル化がこれほど急速に進むとは思わなかったのでしょう。皮肉にも、コダックは1975年、デジタルカメラを発明した会社でもありました。自社は「フィルム屋」だと規定してしまったため、こうした結果を招いたのです。今日、コダックはデジタルイメージング企業として再スタートしています。
 では、我が社の場合はドメインをどのように考えたらよいのでしょう? ここ数年、僕は「ドメインというものは厳密に規定しないほうがよい」と考えるようになってきました。広い意味で経営理念に沿っていれば、何をやっても自由……。そんなふうに思うのです。実際、我が社ではイベントを開催したり、ツアーを企画したり、通販商品を販売するなど、印刷業からかけ離れた活動を行うことが多くなってきました。
 世の中が劇的に変化しているわけですから、自社の活動を縛るような考え方ではいけないのです。

自由な発想と解釈

あるときから、ドメインが堅苦しいもののように思えてきました。特に、「印刷」に対する従来の概念が今の時代に合っていない。そう確信するようになったのです。
 印刷=紙媒体。ほとんどの人がそう考えています。だから、印刷業は縮小していくもの……と勝手に思い込んでいる。全然そんなことはないんですね。印刷産業が従来のままであれば、業界としては衰退していくことになるでしょう。けれども、印刷自体は夢のある事業ではないか? 10年ほど前、そう思ったのです。
 印刷業の本質は「プリント業」なのだ。これが僕のひらめいたこと。ありきたりな言葉なのでがっかりする人もいるかもしれません。もっと適切な言葉があれば差し替えたいくらいです。
 「印刷」を英語にすると、「プレス(press)」と「プリント(print)」、2つの単語が出てきます。プレスには「押しつける」「圧力をかける」「強制する」といった意味もあります。印刷の際、刷版に圧をかけてインキを転写する。つまり、従来型の印刷方法は「プレス」なのです。
 一方、プリントのほうはプレスより広い意味で使われています。たとえば、インクジェットは圧をかけずに印刷する方式。インクジェットプリンターはプレスではない印刷機といえます。
 さらに重要なことは、プリントには「心に刻みつける」「影響」「跡をつける」といった意味があること。語源はどちらもラテン語のpremereから来ているそうです。「押しつける」プレスよりも、「心に刻みつける」プリントのほうが、印刷業の目指すべき将来イメージといえるのではないでしょうか?
 我が社の場合、印刷事業を核としながらも、出版・広告事業と結びつけていくことで、プレス業からプリント業へ業態変革しつつある。そう捉えてもよさそうです。
 しかし、プレス(press)にも発展系がありました。接頭語を加えると不思議なことになるのです。「ex」(外に)をつけるとexpress(表現する)に、「im」(内に)をつけるとimpress(感銘を与える)になる。我が社の行っている事業の目指すところといえるのではないかと思います。
 我が社の戦略ドメインは抽象的で空想主義的なところがあります。それでよいのではないかと思うことがあります。方向性を明確にしつつも、柔軟に物事を考えられるようなドメインであるべきでしょう。デジタル写真の登場によってフィルムが使われなくなったように、今後も技術革新によって消えていく商品・サービスが増えていくはず。
 自社の本質は何なのか? 自社は何を顧客に提供してきた会社なのか? そして、自社の本当の強みは何なのか? 次世代幹部は常に考え続けなければなりません。 

※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。

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高原淳写真的業務日誌