
おはようございます。
昨日は旭川での取材。「なるほど」と思う話がいくつもあって、興味深い。近い業界だけに、具体的インスピレーションを与えられる取材となりました。午後7時半頃帰宅。9時半、就寝。さまざまな夢を見た。ストーリー性のあるものでしたが、起床とともに忘れてしまいました。おもしろかったのに……。
統合された力
自社または自分のコア・コンピタンスを見つけるには、まず強みと思われることをリストアップしていきます。自社のコア・コンピタンスであれば、ブレーンストーミングするのがよいでしょう。たくさん出てくるはずです。
次に行うべきことは、コア・コンピタンスの条件を満たしているか、チェックすることです。前回、コア・コンピタンスの3要素を挙げました。
1.競合他社には真似できないこと(顧客価値を高めるもの)
2.自社ならではの価値(競合他社と異なっているもの)
3.企業の中核的な力(自社の企業力を広げるもの)
3の「中核的な力」とはどういうことか、ちょっとわかりにくく思われるかもしれません。事例とともに補足したいと思います。
たとえば、コア・コンピタンスの事例として挙げられる企業のひとつに、ミツカンがあります。ミツカンのコア・コンピタンスは酢製造技術。醸造酢から派生し、数多くの関連商品を生み出しているのはご存知の通り。重要なのは、異分野にもその技術が生かされいること。同社の「金のつぶ」納豆は酢の発酵技術を応用し、納豆が苦手な人でも食べられるよう改良されています。コア・コンピタンスがあれば、自社の企業力を異なる市場でも発揮することができるのです。
ただし、コア・コンピタンスには弱点もあることを知っておかねばなりません。事例としてはシャープが挙げられるでしょう。シャープのコア・コンピタンスは液晶技術でした。一時期、「液晶といえばシャープ」といわれるほど圧倒的ブランド力を獲得し、コア・コンピタンスの成功事例として名を連ねていました。しかし、ひとつの技術に依存しすぎると、経営環境が大きく変わったときにはもろいものです。液晶のコモディティ化とともに窮地に陥り、今は台湾の鴻海精密工業の子会社となっています。
ここでは2社の事例を紹介しましたが、その会社のコア・コンピタンスが何なのか、本当のところはわかりにくいものです。ホンダのエンジン技術、ソニーの小型化技術、富士フイルムの精密技術など、コア・コンピタンスの事例として知られていますが、これらは外部の人間がそう考えているだけに過ぎません。おそらく、各企業の経営陣はもっと異なる捉え方をしていることでしょう。
僕らがコア・コンピタンスを考える際に注意すべきことは、ひとつの技術をコア・コンピタンスだとは思わないことです。コア・コンピタンスは「束になった企業の総合力」である。そう捉えるべきなんですね。我が社で使っているコア・コンピタンス図では、コア・バリューのまわりに周辺バリューを配しています。個別のスキル、技術ではなく、統合された力と考えているのです。
個人のコア・コンピタンス=○○バカ
コア・コンピタンスを理解するしないに関わらず、我が社では全社員が「個人のコア・コンピタンス」を作成することになります。
社歴の浅い人は、何となく自分が強みだと思っていることをコア・バリューや周辺バリューに挙げることになるでしょう。最初はそれでもよいと思います。個人のコア・コンピタンスは毎年つくるものですから、年1回見直すうちに、次第にコア・コンピタンスらしくなっていく人もいます。自分の持つ「束になった力」に目覚めていくんですね。ただ、目覚める人はほんの一握り。多くの人は何となく記入しているというのが実情ではないでしょうか。
僕はあるとき、個人のコア・コンピタンスを一瞬で見つける方法に気づきました。あるライブ演奏の際、奏者のYさんが「自分は音楽バカなんです」と自己紹介していたのです。僕はピンときました。「○○バカ」。それこそ、個人のコア・コンピタンスを表す言葉なのではないか?
コア・コンピタンスは複雑に考えることも単純に考えることも可能です。複雑に考えられない人は、「コア・コンピタンス=○○バカ」と考えましょう。
そして、「単なるバカ」と「○○バカ」との違いもよく知っておく必要があります。自分の持つあらゆる資源を一点に集中することができるのが「○○バカ」。意識を向ける方向が分散し、自分を成長させることのできない人は「単なるバカ」ということになります。
情報爆発の結果、みんないろいろな意味で中途半端に賢くなっています。その結果、ひとつのことに集中することのできる「○○バカ」が少なくなっているのが今の世の中。「自分にはこれしかない!」と覚悟を決めることができず、「別な道もある」と安易に方向転換する人が多い。僕はここに今の時代の危うさを感じています。
自分の人生の道はひとつではありませんが、人間は「○○バカ」と人から言われるほどひとつの道を掘り進んでいき、固い岩盤を突き崩そうと努力すべきではないかと思います。そこに本当の充実感、幸せ感がある。バカになることを恐れるべきではありません。
同様に、企業経営においても、「この一点においてはどの会社も真似することができない」と思われるようなものを確立しなければなりません。もはや「真似しようという気持ちにすらならない」。そんなコア・コンピタンスができたとすれば、どうでしょう? あるいは、「どこがコア・コンピタンスなのかわからない」。そんなコア・コンピタンスを持つ企業もあります。世の中にはどのように成長したのかわからない、不思議な会社がいくつもあるものです。きっと、部外者にはわからない秘密のコア・コンピタンスがあるに違いありません。
※「新版・次世代幹部養成塾」はソーゴー印刷若手社員向けに作成しているものです。異業種、他社の方には当てはまらない考え方も含まれていることを、あらかじめご承知おきください。