高原淳写真的業務日誌 > 写真を撮る愉しみ > 第9回 ノーファインダー

第9回 ノーファインダー

第9回 ノーファインダー

おはようございます。
 静かな土曜日。台風が迫っているとは思えない。半分休日、半分仕事といった過ごし方。午後4時、今進めているプロジェクトの出力紙を持って競馬場へ。買い物をしてから帰宅。夕方から雨が降ってきた。

おおらかなフレーミング

僕は元来、厳密にフレーミングを行うタイプ。主題と被写体との関連づけにはとりわけ気を配っています。といっても、シャッターを押すまでに時間がかかるわけではなく、ほんの2、3秒のうちにすべての作業が完了する。風景の場合、撮りたいという気持ちが最高潮に達したときがシャッターを押す最適なタイミング。あれこれ迷っていると、撮ることが義務的に感じられるようになっていく。スナップショットでは被写体が最適なタイミングを決めてくれるもの。風景では撮影者自身が自分にとっての最適なタイミングを計らねばなりません。
 この「厳密なフレーミング」というものが、場合によっては退屈なフレーミングになってしまうことがあります。「厳密な」が「計算された」という意味に近づいていくと、退屈になりやすい。写真には計算外のものが写り込んでいるほうがおもしろいのです。撮影者の意図を超えたところに写真の醍醐味がある。
 厳密に撮ることがあってよいが、やや力を抜いて撮ることも必要。そんな心境になったのは、雑誌「スロウ」が創刊され、カラーによる風景撮影を熱心に行うようになってからのことです。こんな宙ぶらりんなフレーミングで撮影してよいのだろうか? そう思いながらも、力の抜けたカットが増えていきました。
 50代に入ってから、自分の視力が弱くなっていることに気づくこととなりました。写真家としては致命的。メガネを変えてみても、以前のようには見えない。カメラに例えれば、レンズの解像力がイマイチという状態。カメラのようにレンズを交換できればよいのですが、そういうわけにはいきません。
 ただ、デメリットがあればメリットもあるもの。おおまかに捉える。おおらかにフレーミングする。そんな撮り方になっていきました。被写体がしっかり見えるときは今でも厳密にフレーミングします。暗かったり、逆光など、撮影条件が厳しいときには、おおらかな撮り方になりやすい。
 おおらかな撮り方が増えたのは、ミラーレスカメラが一因かもしれません。ミラーレスカメラでは電子ファインダーでフレーミングすることとなります。僕の使っているカメラの電子ファインダーはよくできていて、一見すると光学ファインダーと変わりないように思える。けれども、どこか「これは現実じゃない」という感覚になっているのでしょう。なんとなく不自然な気持ちになって、ファインダーを覗かずに撮ることが増えてきました。
 といっても、これはノーファインダーで撮っているということではありません。液晶モニター+目視で撮るということ。屋外では液晶が見にくいものですが、何となくフレーミングし、何となく撮ることもある。以前とはずいぶん撮り方が変わってしまいました。このままいくと、ノーファインダー撮影をするようになっていくかもしれません。

どの程度フレーミングをコントロールすべきか?

僕の仕事全般についても、写真の撮り方と同じようなところがあります。自分個人の仕事については、案外細部へのこだわりがある。文章を書くときも、写真の画質調整をするときも、「おおらか」というわけにはいきません。
 しかし、雑誌全体の仕事、会社全体の仕事となると、「おおらか」であったり、「ノーファインダー」だったりするものです。
 ノーファインダー経営……。ちょっと危険なにおいが漂いますね。やはり、ちゃんと光学ファインダーを使って、自社の事業展開をフレーミングするほうがよいでしょう。とはいえ、厳密にフレーミングすると、何となくおもしろみが感じられなくなっていくのではないかと思います。
 自分の知らないところで何かが動いている……。大まかには把握しているけれど、よくわからないところがある。そこに会社組織のおもしろさがあるような気がします。我が社の場合、それがちょっと行きすぎているためか、わからないところだらけになってしまいました。
 たとえば、2日間の予定が台風接近により明日1日のみの開催と決定した「スロウ村の仲間たち2018」。今年で6回目。毎年ノウハウを積み重ねていき、3年くらい前から僕は完全ノータッチ。何がどう動いているのか、わかりません。スロウ村に限らず、イベント関係には一切タッチしなくなりました。そうした、まったくわからない仕事が社内にはいくつかあります。
 写真に話を戻すと、ノーファインダーでは「予想されたもの」と「予期せぬもの」の両方が写り込む。写真家の気持ちとしては、自分の意図通りに写したいと思うのでしょうが、写真そのもののおもしろさとしては、予期せぬものが入っているほうがおもしろいことが多い。どの程度、自分の写真をコントロールすべきか? これは撮影者によって、考え方に大きな違いがあるのではないかと思います。
 中判、大判カメラを風景撮影のメインとして使っていた頃は、画面の四隅まで厳密にチェックして撮っていました。デジカメではシャッターを押すまで2、3秒ですが、中判では5、6秒、大判では1分くらいかかることが多かった。ファインダーで逆像となったものを頭の中で変換する作業もありますから、やや時間を要することになるのです。
 この「やや時間を要する」撮影の仕方を再び始めてみようと考えているところです。といっても、デジカメで撮ることに変わりはないので、1カット5秒くらいかな? 「撮りたい」という気持ちが醒めない適度なタイミングで「ややコントロールの効いた写真」を撮れるようになることが、今の僕のちょっとした目標です。

ソーゴー印刷株式会社

〒080-0046 北海道帯広市西16条北1丁目25
TEL.0155-34-1281 FAX.0155-34-1287

高原淳写真的業務日誌