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第13回 単焦点レンズ

第13回 単焦点レンズ

占冠村/2018.10.14

おはようございます。
 昨日は占冠で秋の風景を撮影。紅葉が素晴らしい。森の中を散策しながら撮りたいところだが、かなりの難所であると聞き断念。道路から見える範囲で撮影を行う。帰り道、なぜか体の節々が痛み出す。原因は慣れない車に乗っているからか? 車検に出している間の代車で占冠まで来たのだった。夕方、自分の車に乗り換えると、不思議に痛みが消えた。自宅に戻り、庭に自生する山わさびを収穫。日曜日らしい一日だった。

標準レンズを使ったトレーニング

昨日の撮影は広角系と標準・望遠系の2本のズームレンズで撮影しました。35ミリカメラに換算すると、18~240ミリ。レンズ2本でここまでカバーできる。しかも、ミラーレスカメラなので驚くほど小さくて軽い。技術の進歩というのはありがたいものです。仕事ではこの2本のズームレンズに加え、50ミリの単焦点レンズを使います。50ミリは人物撮影用。取材現場ではこれで十分。ただ、ストロボ撮影になるとミラーレスでは撮りにくい。この弱点が解消されれば、雑誌取材用としてはほぼ完璧ですね。
 ただ、作品用となると、ズームレンズでは満足のいく出来映えにならないことがある。撮影しながら、どこか違和感を覚えるのです。便利さゆえに、何でも撮ってしまう。ここにズームの弱点があるような気がします。もちろん、自分で制御できる人であれば何の問題もありません。僕の場合は、どうも「撮れるものは撮っておこう」という気持ちになりやすい。レンズに撮らされている……。そんな状況に陥ることがあります。
 高校1年生のとき、最初に買った一眼レフのレンズは50ミリと135ミリでした。レンズ交換ができる。それだけで満足感を覚えていました。常時使うのは当然ながら50ミリ。当時、僕の写真の教科書はカメラ毎日、アサヒカメラ、日本カメラの3誌。このうち毎月1冊を購入し、残り2冊はバス乗り換えの待ち時間の間に立ち読みしていました。
 そうした勉強(?)を通じてわかったのは、標準レンズである50ミリを徹底的にマスターすることが重要だということでした。標準レンズとは肉眼の視野に近いレンズ。35ミリカメラの場合は50ミリ。僕はその後6×6の二眼レフを使うようになりましたが、そのカメラには80ミリレンズが付いていました。標準レンズの定義は曖昧なもの。「肉眼の視野に近い」というよりも、「広角的にも望遠的にも撮れるレンズ」と捉えるべきかもしれません。
 昔のカメラ雑誌には「標準にはじまり標準に終わる」といったことも書かれていました。幸い、僕は50ミリの他には135ミリしか持っていませんでしたから、最初のうちは標準レンズのトレーニングに明け暮れていました。
 被写体に近寄りつつ、F16まで絞り込んで広角レンズ風に撮ってみる。あるいは絞りを開放(たぶん最初に買った50ミリレンズはF1.7でした)に合わせ、バックをぼかしてみる。確かに、さまざまな撮り方ができる。そして、どんな撮り方をしても不自然さがない。ここが標準レンズのいいところなのかもしれません。
 その後、所有するレンズの種類は増えていき、望遠系ではズームも使うようになりました。

目が画角を覚える

1985年から2000年5月まで、15年間東京で仕事をしてきましたが、不思議なまでにズームレンズとは無縁でした。ズームを使っていたのは高校2、3年というごく短い期間のみ。今の撮り方とは対照的ですね。
 単焦点レンズのメリットには、明るくて、画質がよいことでしょうか。明るさゆえに、暗い場所でも速いシャッター速度が確保できますし、開放絞りでバックをぼかすこともできる。
 しかし、僕の考えるところ、メリットはそれだけではないのです。
 これは50ミリレンズでひたすら撮り続けていた頃にわかったこと。自分の目が50ミリの画角を覚えてしまうのです。同様に、28ミリレンズを使い慣れると、28ミリの画角を目が覚える。そのようにして、21ミリ、85ミリ、200ミリ……とマスターしていくと、自分がどの場所に立って撮ればよいか、一瞬のうちにわかるようになる。
 被写体との距離感に加え、広角から望遠まで写り方の違いも頭に入っていますから、カメラにレンズを装着した瞬間、自分のものの見え方もそのレンズに近づいていくことになる。そんな自分とカメラが一体となったような撮影の仕方。これはズームレンズでは不可能ではないかと思います。
 もうひとつのメリットは、「目移りしなくなる」ことでしょう。今の仕事では「チャンスを逃したくない」という気持ちが強く、カメラ2台にそれぞれズームレンズを装着し、何でも撮れるという状態をつくっています。それは必要あってのことですが、難点は目移りしてしまうことなんですね。このため、目の前の被写体に集中することができにくい。仕事ではよくても、作品の制作には不向き。あれもこれも撮りたいという誘惑から自由になる。そのためには単焦点がよいわけです。
 考えてみると、一番心穏やかに撮影できるカメラは、僕にとっては6×6の二眼レフでした。それも、ヤシカマットかローライフレックス。レンズは80ミリのみ。標準レンズ1本でレンズ交換できない。この不自由さを受け入れることで、心の自由を得ることができたのです。もし、二眼レフのデジカメがあったら、標準レンズ至上主義者には売れるでしょうね。
 僕の中では自分の人生計画よりも2年早く、作品づくりを再開したいという気持ちが盛り上がってきました。北海道に住んでいると、つい望遠ズームを多用することが多くなってしまうのですが、ここはぐっとこらえ、再び標準レンズから再スタートを切りたいと思っています。
 カメラと一体感を感じながら撮ることができるかどうか? 通常の仕事では今後もズームを使い続けることになりますから、感覚を取り戻すまでに2、3年かかりそうな気がします。

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