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「第35回全道経営者“共育”研究集会 in とかち」(とかち道研)1日目

「第35回全道経営者“共育”研究集会 in とかち」(とかち道研)1日目

おはようございます。
 とかち道研の日。朝、担当している第1分科会の進行表を見ながら自分の役割をイメージしてみる。分科会では座長という役目。話をまとめるのは苦手な自分だが、そうも言ってはおられない。
 午後1時、道研の分科会がスタート。今年のとかち道研では19もの分科会がある。このうち、12~19分科会は移動分科会。バスに乗って十勝管内各地へ学びの旅に出かけていった。座学分科会のほうはホテル日航ノースランド帯広ととかちプラザに分かれて行われた。第1分科会の会場は、ノースランド2階フィオーレ。担当するのは全道経営指針委員会。
 講師としてお招きした渡邊博子氏は(株)スリーシー代表取締役。京都同友会伏見支部支部長でもある。渡邊氏の講演を聴くのは今回で3度目。聴くたびに発見があり、自分の歴史と符合する部分に気づく。渡邊氏と僕とでは、まったく境遇が違っているというのに。
 参加者はみな、さまざまな人生経験を重ねて、今ここ第1分科会に集まっている。ただ物語を聴いているわけではない。自分の経験や自分の会社と照らし合わせながら、渡邊氏の実践報告に耳を傾けているに違いない。講演、とりわけ実践報告を聴く価値はここにある。道研の分科会では、90分の報告の後にグループ討議の時間が設定されている。一方的に聴くのではなく、討議というアウトプットによって、自分の考えをまとめる、グループメンバーの考えを共有することができる仕組みとなっている。
 渡邊氏の実践報告は圧巻であり、各グループ討議の報告も興味深いものだった。最後に座長として、分科会のまとめをさせていただいた。中身の濃い渡邊氏の講演と熱心な参加者、さらには室長、副室長、記録担当らに助けられて、第1分科会は不思議な感動とともに終了した。
 6時半からは懇親会。800名を超える道研参加者が一堂に会しての懇親会。必然的に立食スタイルとなる。道外からの参加者もいる。自ら求めて学ぶ。学びたいことがあれば、どこへでも行くという姿勢に学ばされた。

創業者も何かを継いでいる

忘れないうちに、改めて第1分科会の渡邊氏の実践報告について感じたことを記しておきたいと思います。
 渡邊氏の話を聴くたびに思うのは、「創業するとはこういうことなのか」ということです。僕は2代目であるため、創業者が持つ独特なエネルギーというものを本当の意味で理解していないところがあるようです。単純にエネルギーの高い人、強烈にやりたいことを持っている人。そうした人が創業者になるというイメージを持っていました。
 もちろんそうした側面もあるかもしれませんが、企業を興すにはもっと深い理由がある。渡邊氏の場合、経営者になるべくしてなった……。そんな体験を人生の中に何度か持っている。今回の話には出てきませんでしたが、不動産業界に入ったことには必然性があり、独立も必然的な結果といえるでしょう。そして、渡邊氏が導かれていった先には、自分の使命に気づくような出来事が待ち受けていました……。
 このあたりについては、僕の文章ではなく直接講演を聴くか、「北海道同友」の講演録を読むのがよいと思います。ここで僕が記しておきたいのは、創業するには「創業しなければならない必然がある」ということ。それは通常「創業の精神」と呼ばれるものですが、これが弱いと経営理念がまとまらなかったり、お飾りのような理念となったりする。後継者の場合は、どれだけ創業者の精神に触れられるか、共有することができるのかが重要ではないかと思います。
 今回の渡邊氏の講演で僕が気づいたことは、渡邊氏は創業者であると同時に、後継者でもあるのだということでした。何もないところ、ゼロから起業したのは事実であるものの、目に見えない何かを受け継いで創業に至っている……。ここに企業経営者としての渡邊氏、あるいはスリーシーという会社の魅力があるのではないか? 僕にはそんなふうに思えたのです。
 誰から受け継いだのかは前回の講演でも今回でも示されていました。渡邊さんの場合は両親からであり、とりわけ精神的葛藤や反発の気持ちを持っていた父親からということになるでしょう。「父から人を生かすことを学んだ」という渡邊氏ですが、そのことに気づいたのはすでに他界した後のこと。存命中に伝えられなかった思いが、渡邊氏の今日の経営意欲につながっているのではないか? 伝えたい感謝の思いを社員や顧客に向けている。そんなふうに僕は感じました。
 創業者も誰かから何かを継いでいる。渡邊氏は父から志を継ぎ、やがては誰かに継いでもらうことになるわけです。

人を生かす経営

今回の道研テーマは「十勝からの挑戦 ~北海道新モンロー主義(循環型経済)を目指して~」です。道研当日にテーマが議論になることは少ないと思います。しかし、実行委員会でテーマについて話し合われたときには、大いに議論が盛り上がりました。最終的には「循環型経済」という括弧付きの文字をいれることで合意形成された。このテーマでよかったと僕は思っています。
 渡邊氏の講演にも出てきました。地域をよりよくしていく。社員も経営者も地域に関わっていく。そんな姿勢が今ほど重要な時代はありません。放っておくとグローバル化の波に飲み込まれてしまう。グローバル化にはよい点もたくさんありますから、グローバル化が逆行することはないでしょう。その一方で、地域間格差が生じることのないよう、自分の住む町、働く町をよりよくしていこうという意欲と行動が僕らには求められます。
 渡邊氏の活動は、「シングルマザーを採用する」だけには留まらず、もっと地域全体に目が向けられています。最初はシングルマザーの経済的自立というところから始まったわけですが、渡邊氏が採用したシングルマザーたちは、文化的、精神的にも成長していき、地域に少なからぬ影響を及ぼすようになってきている。
 僕らの事業活動も業種は違えども目指すところは同じ。経済的自立は外すことのできないところですが、そこだけに終始してはいけない。地域の魅力を伝える、魅力の創出につながる活動をする、自ら魅力的な人・企業となっていく……。自己成長と「地域をよりよくしていくこと」とがリンクしていなければなりません。
 自分が関わっている空間をもっとよりよくしていくこと。そしてもうひとつは、自分が関わりを持つ時間をよりよくする。ここにも渡邊氏は目が向けられていました。
 「子どもの病気や学校参観、学校行事を最優先させる」
 子どものためにいつでも休める。そんな安心感が社員同士の連帯感を生み、自主性を育てることにつながっているという話。我が社も、子どものためにいつでも休めるようになっています。たぶん、休みにくいという人はいないはず……。もし違っていたら教えてください。
 子ども=次世代。僕らの精神や文化、そして何よりも志を継いでもらわねばなりません。子ども、次世代の人たちは自分のやりたいことを思う存分やってくれて構わないわけですが、思う存分活躍できるような下地をつくってやることが現世代の役割といえます。
 「子どものために休める」という安心感のある職場、「人のために役立っている」という働きがいのある職場。僕らが目指すべき地域企業の姿はこのあたりにあるのではないかと思います。
 それが「人を生かす経営」であり、40年以上も前につくられた「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)の根底に流れている精神ではないか、と僕は理解しています。
 渡邊氏は企業と同時に同友会に入会し、「人を生かす実践道場」で経営指針を成文化しました。北海道では「経営指針研究会」(支部によって名称は違います)。強烈な人生経験を持つ渡邊氏であっても、使命に目覚め、今のような経営姿勢を持つまでには実践道場の仲間と助言者の存在が欠かせなかったといいます。道内各支部で開催されている経営指針研究会にも、経営指針づくりに意欲的に取り組んでいる仲間がいます。ぜひ、多くの企業経営者、後継者の方に参加してほしいと思っています。
 「人を活用する」の「活かす」ではなく、「生きる」「生かす」なのだ。そんな言葉も記憶に残りました。
 まだまだ書き切れません。昨日の講演内容を我が社の「人を生かす経営」に必ずや役立てていきたいと思います。

※写真は第1分科会開始前。分科会が始まると、さすがに写真を撮る余裕はありませんでした。

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