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第18回 早起きの提案

第18回 早起きの提案

札幌市/2018.10.26

おはようございます。
 昨日は完全休養日。撮影データをハードディスクにコピーした程度。あとは取材場所に関する調査。久しぶりにパンを焼いた。あまりクリエイティブな日ではなかったが、こういう一日も必要だ。

秋冬のありがたみ

風景写真家はたいていの場合、早起きをする習慣を持っています。ついでに言えば、企業経営者にも早起きの人が多い。反対に、深夜まで飲み歩く経営者もいますから、中間ゾーンの人が少なく、早起きか朝寝坊かのどちらかでしょう。
 風景写真家が早起きなのは、朝一番に撮影したいと考えているためです。光がある限り目の前には何からの美しい風景が広がっているわけですが、強いて優劣をつけるならば、朝が一番美しい。昼には昼の美しさがあるものの、朝の美しさは格別です。
 フォトジェニックという点では、早朝が一番。二番目は夕方でしょう。僕の大学時代の恩師は風景写真家でしたが、朝と夕方に撮影し、昼間の時間は眠っている……と話していました。たぶん、そういう生活サイクルの写真家は他にも多いのではないかと思います。
 僕も早起きの効用には高校時代から気づいていました。影が長く伸びるのがおもしろく、木の影や自分の影を撮ったりしていました。早起きの習慣は大学時代から20代にかけて崩れてしまいました。最大の理由は深酒でしょう。それでも、20代後半から仕事量が増え、締め切りに追われるような毎日に。仕事のスピードが上がる朝が、僕にとってコアとなる原稿執筆時間となりました。1990年代、僕は撮影以外の理由で早起きの習慣を取り戻したのです。
 帯広にUターンしてから、多くの人が早起きの習慣を持っていることに驚きました。我が社は8時30分が始業時刻ですが、6時台に出社する人もいます。雪が降った日などはずいぶん早い時間から除雪作業をしている。そもそも、8時半始業というのが早いですね。北海道では普通ですが。
 東京時代の会社の始業時刻は10時でした。そんな中、僕は朝6時から3時間かけて原稿を一本仕上げていた。デザイン込みで仕上げる場合は、朝4時くらいから始めていました。そうすると、始業前にひと仕事完了する。変な仕事の仕方ですが、今も同じようなやり方をしています。
 それはさておき、フォトグラファーにとって早起きとはどういうことか? これは言うまでもない、「朝一番に撮影できるよう起床する」ということでしょう。したがって、春夏と秋冬とでは起床時刻が大きく異なってきます。日が長くなると、朝2時台に起きるということもあるでしょう。僕はそこまで厳密に朝一番を狙っているわけではないので、春夏に早朝撮影する場合は3時頃が起床時刻となる。
 一方、秋冬の場合は日が短くなりますから、5時頃起きても撮影に間に合う。この違いは大きい。僕は風景撮影をしない日でも4時頃には起きていますから、秋冬では普通に目覚めても朝一番の撮影ができる。これはありがたいこと。日が短くなることをネガティブに捉えている人もいますが、僕に言わせると逆ですね。早起きという努力をせずとも、朝一番の美しい風景を見ることのできる季節なのです。

「昼間」を美しく見るには

2006年から一日も欠かさずブログを書くようになり、僕の早起きの習慣はほぼ万全なものとなりました。基準は朝4時か4時半。ただ、僕の場合はアラームの音が好きではないため、アラームが鳴る30分くらい前に目が覚めることが多い。その結果、3時台に起床する。
 こういう早起き自慢的な発言をすると、自分が年寄りになったような気持ちになってしまいます。僕くらいのレベルの早起きをしている人は、たいていの場合、年配者か中小企業経営者でしょう。例外は風景写真家。
 風景写真家と年配者の生活リズムには近いものがあると思います。早起きで早朝に活動する。昼は大してすることはなく、眠ったり、ぼんやりとしている。夕方にもうひと仕事。夜更かしすることはありません。
 僕は一日のうちでもっとも美しい時間帯をブログの執筆時間に充てることが多い。ブログと撮影とどちらが重要なのかというと、僕の立場では撮影ということになるのですが、今はブログを優先させています。それは、朝一番でなければ浮かんでこない考え、イメージがあるからなのです。昼間の時間帯にはなぜかぼんやりとする。
 我が社の若手の人たちを見ると、逆のパターンが多いようです。早朝出発で取材に出かけると、しばらくの間、会話が弾まない……。半分眠ったような状態になっている。これは夜更かし習慣を持っているためでしょう。あるいは鉄分が足りていないのか? 美しい朝の光を味わうことなく、ぼんやりしているのはもったいない。撮影はしなくても、美しい光を網膜に映し出すことが大切だと僕は思ってしまいます。
 僕自身、早朝にブログを書くことが多くなり、一番美しい風景を見逃すような生活パターンとなってしまいました。その結果、必然的に撮影時間は昼か夕方ということになる。僕の目下の課題は、昼の光をいかに美しく捉えるか。
 これは前回書いた「北海道の幹線道路沿いから見える風景」というテーマに通じるものです。誰もが目にしているごく普通の光の状態で日常風景を見る。もし、そうした風景が魅力的に映るのであれば、より幸せなことなのではないか? 一番のおすすめは「早起きすること」なのですが、それが叶わない人であっても、美しい風景と出合うチャンスはある。そうした風景との出合い方、あるいは風景の見方を提示することも、風景写真家のすべきことのひとつではないかと思います。
 早朝という時間帯をある程度自由に使うことのできる人であるなら、できるだけ外に出て朝の光を浴びるのがよいでしょう。自分の中にある良質な部分が活性化するに違いありません。

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