file 10 電子書籍

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おはようございます。
 朝は会社で事務的な仕事。午後は富良野で取材。とある工房。ジャンルは異なるが、僕らの仕事とどこか通じるところがある。仕事場は写真の暗室に近いと感じた。晴れたり雨が降ったりという天気。時折、細かなあられも混じっている。そろそろ雪が降りそうだ。

2010年、業界に先駆けて発売したものの……

今回は、我が社の売上にほとんど貢献していない電子書籍について書こうと思います。いつブレイクするのだろう? そう思っているうちに8年以上たってしまいました。
 「電子書籍元年」といわれたのは、2010年のこと。2007年に発売されたKindleに加え、2010年にiPadが登場し、にわかに電子書籍が脚光を浴びることとなった。Kindleの日本発売は2012年。紙の本が駆逐され、電子書籍と逆転してしまうのではないかと思われましたが、日本では意外にも電子書籍が読まれていません。かといって、紙の本が活況を呈しているというわけでもない。単純に本や雑誌を読む人が減っている……。そんな状況です。
 ソーゴー印刷が電子書籍を最初に販売したのは、「元年」といわれた2010年。スロウに連載していた「オソツベツ原野の廃屋から」を英訳し、Kindleストアで発売したのでした。
 当時、マンガをPDFにして販売される例はあったものの、読み物としてKindleストアで販売する日本の出版社はなかったと思います。おそらく日本初。しかし、それを証明する手立てがなかったため、新聞に「日本初」と載ることはありませんでした。
 その後、僕の連載記事「北海道 来たるべき未来を見つめて」(上下巻)の電子書籍も発売。こちらはKindleではなく、EPUB形式にして電子書籍サイトで販売。あまり売れなかったのは、コンテンツに魅力が乏しかったのか、日本で電子書籍が普及していないためか……。
 今は、雑誌のオンライン書店「fujisan.co.jp」でスロウのデジタル版が紙媒体と並行して発売されているだけ。我が社の雑誌、書籍はおそらく今後も紙の本がメインであり続けるでしょう。社内でも電子書籍が話題になることはほとんどなくなりました。
 現在の電子書籍市場はどうなっているのでしょう? 伸びているのはマンガ。そして、雑誌の読み放題サービスあたりでしょうか。どちらも、我が社の雑誌・書籍とは無縁のもの。僕はビジネス書の電子書籍が伸びるのではないかと考えていたのですが、さほど売れているようには見えない。紙の本の付帯サービスといった感じです。
 では、本家アメリカはどうなのか? 驚いたことに、電子書籍が頭打ちとなり、紙の本に回帰しているではありませんか。電子書籍の下降傾向を受けて、アメリカの出版各社が印刷書籍部門への投資を拡大しているとのこと。

紙媒体の優位性

アルファベット26字で文章表現ができる英語であれば、Eインクディスプレイでも読みやすい。よって、英語の書籍はあっという間に電子書籍に席巻されることになる……と僕は考えていました。
 日本でもディスプレイの解像度が高まれば、もっと普及するに違いないと思っていたのですが、そうでもないようです。
 結局、みんな紙の本が好きなのだ……。そう結論づけたいところ。ただ、そう単純でもなさそうです。
 紙の本から電子書籍に変わっていくと考えたのは、「印刷コストがかからないから」というのが最大の理由。そのメリットは大きい。したがって、印刷コストが捻出しにくい出版物の場合は、電子書籍でのみ出版するというケースが今後も増えていくのではないかと思います。電子書籍ファイルフォーマットのひとつであるEPUBは一太郎でもインデザインでも作成できるようになっている。誰にでも比較的簡単に電子書籍をつくることができる。
 したがって、一部の自費出版や販売数が見込めない研究書、専門書といったものは電子書籍のほうが向いているかもしれません。
 それと、端末の使い勝手も将来的には大きく改善するに違いありません。Eインクディスプレイは、液晶とは異なり、長時間見続けても目が疲れにくい。質感は異なるものの、紙媒体と同じように本を読むことができる。このメリットは捨てがたい。ページ送りがスムースになったり、ディスプレーがカラー化するなど進化していけば、再び電子書籍市場が活性化しそうな気がします。
 我が社は印刷会社であるため、電子書籍に肩入れするような発言をすると社員から責められるかもしれません(そんなことはたぶんありませんが)。紙媒体のメリットは、「モノとしての確かな質感」にあるといってよいでしょう。僕はコンテンツにばかり目を向けてきましたが、読者の方々の声に耳を傾けると、「紙質」や「印刷の再現性」に関する感想が案外多いのです。
 「ディスプレーよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れている」
 電子書籍が普及し始めた2010年代から、そうした研究結果が次々発表されています。日本では2013年にトッパン・フォームズがDMに接したときの脳の反応を測定。紙媒体の優位性が確認できたといいます。
 ノルウェーの研究者アン・マンゲン氏の研究では、「紙の本を読んだ人のほうがストーリーを記憶している」との結果が発表されています。「ページをめくるという触覚が視覚をサポートするため」と分析。なるほど、視覚情報であっても、視覚だけでは長期記憶として定着しにくいのかもしれません。
 電子書籍がソーゴー印刷の主力商品となることは当面なさそうです。ただ、「検索ができる」といった電子書籍ならではのメリットもある。もし、スロウのバックナンバーが全部電子書籍になっていたら、編集者としては便利な使い方ができるに違いありません。

ソーゴー印刷株式会社

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