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北海道の仕事と暮らし03 適正利益

北海道の仕事と暮らし03 適正利益

おはようございます。
 全身筋肉痛の日。脳みそまで筋肉痛……なわけはないが、それに近い症状だった。クリエイティブな活動はほとんどできず、夕方になってから小さな制作物を一点仕上げただけ。

弱肉強食の時代

前回は消費者の立場から価格について考えました。今回は受注者の視点で話を進めていこうと思います。
 僕は2000年5月、ソーゴー印刷に入社しました。我が社の社内は旧社屋を取り囲むように新社屋が建っていて、ちょっと複雑な構造となっています。段差があったり、用途不明の部屋がある。隠し部屋みたいなところもある。単純におもしろい。また、社内の壁にはさまざまな掲示物があって、僕はそれらを興味深く眺めていました。
 そうした掲示物のひとつに「適正利益の確保」というものがありました。僕は入社したばかりの頃、その意味をよく理解できていなかったようです。東京で仕事をしていた頃、僕には「適正利益」という概念がありませんでした。雑誌や広告の制作業では、常に限界利益率100%。外部のデザイナー、スタイリスト、ヘアメイク、モデルに発注する際、支払いは出版社や広告代理店が行っていたと記憶しています。フィルム代、現像代も出版社の負担。売上=限界利益ですから、金額が安すぎれば受注しないし、適正レベルであれば受注する。シンプルにできています。
 印刷業のような受注型の製造業では、売上金額が高いように見えても利益が確保できるという保証はありません。他の製造業でもサービス業でも同様でしょう。東京時代の僕らの仕事の仕方が特殊だったと考えるべき。
 その後、日創研帯広経営研究会に入会すると、基本思想「2つの目的」の2つ目が「適正利益の確保」となっていました。そうか、適正利益を確保するのは大変なことなんだ……。今さらながら、そう思い知りました。
 実際、その頃の我が社は適正利益の確保に苦しんでいました(今も楽ではありません)。僕の想像するところ、1990年代後半あたりからひどいデフレマインドに襲われていたようです。理由は「バブル崩壊後の需要の落ち込み」と「DTPの普及による印刷会社の付加価値低下」でしょう。クライアントからは情け容赦なく価格交渉され、それに応じなければ仕事を失ってしまう。その結果、価格対応力のある会社だけが生き残っていく。そんな弱肉強食な時代。今もその傾向は色濃く残っていますが、そんな暗い空気が社内を覆っていました。
 僕は我が社における適正利益とはどういうものなのだろう……と考えながらも、目の前の利益を確保するために動かねばなりませんでした。2002年、M氏、O氏(故人)とともに、「業績アップ6ヵ月特訓」という研修を受講。理論面を学びつつ、実習では変動費、固定費削減と売上アップのための活動を行っていきました。
 おかげで、短期的には成果を上げることができた。しかし、僕の心の中では「これで本当によいのだろうか?」という思いが強くなっていった。変動費、固定費を削減するために仕入先や協力会社に無理な依頼をしてしまうことがあったのです。仕事を受注するためには、外注先にも協力してもらわねばならない。しかし、度が過ぎれば協力会社を苦しめることになる。我が社の苦しみを他社に転嫁してはいけない。そんな気持ちになっていきました。

自信とプライド

我が社が受注する印刷物は、編集・制作を要するものが多い。単純に印刷するだけではないのです。データ入稿されるものであっても、当時は「不完全データ」がずいぶん多かった。今はそんなことはありませんが、当時、プロのデザイナーの中にも印刷知識のない人がいたようです。そのままでは使えないデータを社内で修正する。それを無償で行っていました。
 何よりもビックリしたのは、撮影料金やコピー料が印刷見積もりの中に「含まれている」ケースがあることでした。たぶん、かつては営業パーソンが自分で写真を撮り、コピーを考えていたのでしょう。「僕の撮影料がタダ?」と唖然としたことがありました。
 しかも、撮った写真が無断で使い回しされることも当時は横行していた。著作権という概念がほとんどない。しばらくかかって、同業他社と写真の貸し借りに関する取り決めをしていったのがこの時期。問題はクライアントに理解してもらうこと。著作権問題には息の長い取り組みが必要なようです。
 それはさておき、印刷会社に在籍して数年たった頃、適正利益とは「自社の能力に見合う金額」のことなのではないかと考えるようになっていきました。ここでいう利益とは営業利益のこと。本業に関わる変動費、固定費を差し引いて残った利益。
 適正利益を確保するために、安売りはしない。これは企業姿勢として正しいでしょう。しかし、もっと突き詰めて考えていくと、安売りしなければ売れないような商品をつくる自社の側に問題がある。そう考えるべきではないか? さまざまな商品を扱っていますから、価格競争にさらされる商品もあってよいわけですが、自信を持って高価格を提示できるような商品を開発することが印刷会社には必要だ。そんなふうに考えるようになっていきました。
 自社の能力、価値に対して社員は自信を持つこと。そして、自社の能力、価値を顧客に認めてもらうこと。そうすれば、適正利益を確保することができるわけです。最初に必要なものは「自信」とか「プライド」といったものでしょう。自信が持てないと、相手から要求される前にディスカウント価格を提示するようになってしまう……。
 実際によい商品を生み出す。できれば、突き抜けた商品を世に送り出す。それにより、自信とプライドを持つこと。インナーブランディングが最初にあって、アウターブランディングが可能となる。
 能力が低く、自信もないというところから適正利益が生まれるはずはありません。したがって、何が何でも自分、自社の能力を高めていくことが大切でしょう。また、今高評価が得られていたとしても、そこに安住すべきではない。さらなる高みを求めていかなければ、適正利益を確保し続けるのは困難。適正利益とは与えられるものではなく、成長し続けることによって自ら勝ち取るものではないかと思います。

ソーゴー印刷株式会社

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