
おはようございます。
午前10時、池田で「りくらす」の取材。午後は日本政策金融公庫主催の「事業承継税制説明会」へ。何もわからずに参加した僕だが、少しだけわかった。夕方は求められている写真を担当編集者へ送る。ドロップボックスのアップロードに時間がかかる。
「北海道移住の本」の発展系
久しぶりに「りくらす」の撮影を行いました。りくらすとは「北海道移住の本」のエリア版。エリア内の自治体の協力を得ながら、移住したばかりの人やすっかり町になじんだ移住者らの体験談を中心にまとめられています。
最初にりくらすを発行したのは2016年。十勝エリアで一冊にまとめました。翌年は空知版。今年は先月発行されたばかりですが、旭川・富良野周辺版。昨日取材したのは2019年発行ということになります。池田で取材したということは、再び十勝版に戻るのでしょうか? 僕はこのプロジェクトについて、まったくといってよいほど知りません。知らないうちに、素敵な本ができている……といった印象。
りくらすの原型となったのは、おそらく別冊スロウアーカイブとして発行された「北海道移住の本」(2010年)でしょう。1年のうちに、vol.1、vol.2の2冊が発行されている。この2冊は編集部の中で「取材へ行くとかなり高い確率で移住者に出会う……」という話から始まったもの。僕の印象でも、取材先の7割くらいが移住者。それも、関西弁に出会う確率が高い。
本誌で掲載した中から「移住」という切り口で再編集。このような本にどれほど反応があるのだろう? そう思っていたら、意外なところから反響がありました。それは台湾の出版社から。ソーゴー印刷としてはたぶん初となる海外出版社への著作権販売。2冊とも中国語(繁体字)に翻訳され、台湾で発行されました。翻訳本は台湾から中国へ。2、3年後には中国語の簡体字版発行。「北海道移住」を、台湾や中国の人たちはどのように読むのでしょう?
スロウ編集部としては「おもしろい試みだった」という形で過去のものとなりつつあった「北海道移住の本」。これをよみがえらせたのが営業系編集者のS氏でした。あっという間に十勝管内自治体に提案してまわり、りくらすを実現させてしまいました。
ちなみに、りくらすの姉妹本として「わくらす」という本があります。りくらすでは移住生活がテーマであるのに対し、わくらすは移住者の仕事や勤め先がテーマとなっています。わくらすについては別な機会に紹介することにしましょう。
日本は今、人口減少時代の真っ只中にあります。なにげなく少子高齢化とひとくくりに言ってしまいますが、地方にとっては「単純な少子高齢化」ではありません。そもそも、出生率という点では東京よりも地方のほうが高い。それでいて地方の人口減少が激しいのは、人口流出数が多いからに他なりません。
この問題に対する有効な手立てのひとつとして、移住があるのではないか? 多くの地方自治体はそう考えていますし、僕らもそのためにもっとできることがあるのではないかと考え、行動しています。
「移住」という選択
高校までは地元で暮らし、大学進学をきっかけに札幌や東京へ。卒業後も大都市に留まり、そこが生活拠点となる。その後はたまに里帰りする程度……。そんなパターンの人が多いのではないでしょうか?
僕自身もそうでした。たぶんUターンすることはないだろうな、と考えていました。僕の場合は「跡を継ぐ」という十分すぎるほどの理由があったため、Uターンすることになりましたが、多くの場合は「今の仕事、今の暮らし」を優先させることになるでしょう。
その結果、出生率の一番少ない東京に人が集まり、人口が増える。そんな構図となっています。その結果、地域間格差や限界集落といった問題が深刻化する。さらに地域企業では人手不足の問題が広がっています。
ただ、その一方で別な動きがあることを、僕らは取材活動を通じて気づくこととなりました。「取材先では移住者によく出会う」という現象。ここには何かがある。最初は都会暮らしに嫌気がさした人たちが「北海道でのんびり暮らしたい」と思って移住してきたのかな……と単純に考えていました。
しかし、そんな単純な理由ばかりではありません。スロウで取材させていただいた方々は、みな魅力的な仕事や魅力的な暮らしを手にしている、または実現させようと努力している人たちでした。つまり、理想の仕事、理想の暮らしを叶えるために、「移住という選択をした」のです。
社会環境、ビジネス環境、そして何より人々の価値観が大きく変わってきました。かつては、「生まれ育った場所だから」とか「勤める会社がそこにあるから」という理由で居住地が決まるのが常でした。今は「自分の住みたい場所に住む」という人が少しずつ増えてきています。そのようにして十勝に移住し、我が社に入社する人もいる。会社の規模や年収ではなく、「暮らしたい場所かどうか」が大きな選択基準となっているのです。中には「ここで生活できるのなら、仕事は何でもいい」という人もいます。
そう考えていくと、魅力的な地域をつくっていけば、人口減少は食い止められるということになるでしょう。魅力的な人たちが集まってくるような、核となる魅力をいかにつくっていくかが課題でしょうね。
ソーゴー印刷としてできることのひとつは、地域の中で埋もれがちになっている魅力を発掘し、記事として紹介していくこと。スロウその他の雑誌では日常的に行われています。りくらすでは「移住」というテーマに絞って地域の魅力を伝えるのが目的。
それがさらに発展し、移住ツアーの企画・運営をする仕事も行われるようになりました。自分の住む場所は自分で決める。そんな時代ですから、魅力的な人に選んでもらえるような地域に変えていかねばなりません。道内にはまだまだ埋もれている素材が山ほどあるような気がします。
