おはようございます。
昨日は十勝経営者大学第3講を受講してきました。今期のテーマは「法律論」。いやはや、どんなにわかりやすく伝えられても僕には難しく感じられます。法律の文章に親しみを感じないからでしょうか。ひとつ「なるほど」と思ったのは、憲法にも法律にも「無駄な言葉がない」という話。
憲法は簡潔な文章、法律はまわりくどく感じられる文章ですが、それでも無駄なくつくられている。反対に、僕がふだん書く文章は無駄だらけです。つまり、文章表現における親しみや味わいといったものは、無駄な言葉の中に存在するといってよいのかもしれません。そして、自分の人生の中にも「無駄と思える時間」の中におもしろみがある。そんな気がします。
法律は解釈にぶれが生じることのないよう無駄を排除してつくられる。一方、自分史、エッセイ、ビジネス書といったものは、自由に解釈できるもののほうがよいわけです。無駄と思える言葉に意味や思いを込めて作成していく。そうしたメッセージは作者の意図とは異なるものかもしれません。それでよい。むしろ、そのほうがよいのだと思います。
本当は何を伝えたいのか?
どのような種類の本であっても、一冊の本を作成するには、まず「読者は誰なのか」をイメージしなければなりません。
一番狭い範囲の読者設定は「自分」ということになるでしょう。その場合は文体も中身も自由。好きなようにつくればよいだけです。しかし、もう少し広い範囲の人たちに読んでもらいたい・・・。そう考えたならば、読者にとって有益な本であることが求められます。
自分史の場合は、家族、親類、友人といった範囲でしょうか。最小単位の家族だけに向けて書かれる自分史もあるでしょう。あるいは、友人・知人の範囲を越えて広く読んでもらいたいと思う自分史もある。こうなると、自分史というよりも、自叙伝に近いものとなるでしょう。
企業経営者であれば、後継者や次世代の社員に向けて書いてみたい、という人も多いに違いありません。真っ先にイメージするのは、日本経済新聞の「私の履歴書」でしょうか。1回の文字数は1350字前後。30回の連載だとすれば、40500字。一冊の本としても読みやすい分量です。
これから書こうとする自分史を一番読んでもらいたい読者は誰なのか? ここがぼんやりしてしまうと、自己満足的になったり、事実を羅列するだけで終わったり、メッセージの伝わりにくい文章になってしまうでしょう。
想定する読者範囲は広くても構いません。けれども、ただひとり「誰のため」と心にイメージして書き始めることをお勧めします。自分の子ども、後継者、一番親しい友人。あるいは、まだ会ったことのない「自分の仕事を承継してくれる人」でもよいでしょう。ターゲットを定めて、その人にメッセージが伝わるよう思いを込めて書いていきます。
読者ターゲットが明確になれば、今度は目的を明らかにしていきましょう。何のために本を書くのかということ。
単に自分の足跡を残すため・・・であっても、もちろん構いません。自分史づくりの目的は本来そこにあるのですから。しかし、残したいものはそれだけではないと思うんですね。自分史の中に何かしら「思い」「メッセージ」「哲学」を残したい、伝えたいと考える人が多いのではないかと思うのです。
そうした自分の中に秘められている欲求を明らかにすることが、自分史づくりを開始する上で、重要なことなのではないでしょうか?
ほとんどの場合、自分史は自分よりも若い人に向けて作成されるものです。次世代あるいは後世の人たちのための本。そこには、世代の異なる人にはわかりにくい心情や価値観、哲学といったものがあるはずです。同時代でなければわかりにくいものを言葉と写真で伝え、理解、共感してもらう。そこに自分史づくりの意義があるのではないかと思います。
誰に何を伝え、どのような影響を与えたいと思っているのか? これはふだん雑誌づくりを行っている僕らもよく考えていることです。立派な本をつくろうとか、センスよくまとめたいとか、うまい文章を書きたい・・・といったことは、副次的な目的であるはずです。自分の本当の欲求を特定することで、生きた文章、生きた本ができあがることになる。
ぜひ、本づくりを開始する前に、読者と目的と本の与える影響についてイメージしてみてください。そうすると、本の仕上がりイメージもおぼろげながら明らかになっていくことでしょう。
それでもまだイメージが湧かない・・・。そんな人がいたら、ひとつ試してみてほしいものがあります。
僕は勝手に「天職工程表」と名付けましたが、自分の人生を10年ごとに区切って、テーマを明確にするというもの。エクセルでも手書きでも構いません。上の図版を参考に自作してみてください。図の上部に「0~100%」とあるのは、自分のエネルギーの高低をグラフ化するためのもの。10代、20代だからエネルギーが高いとは限りません。人生の後半からエネルギーが高まる人もいます。
こうして、10年一区切りで自分の人生を振り返ってみる(同時に将来の計画を立てる)ことで、自分史の全体像が見えてくるに違いありません。この図は人生ビジョンを作成するためにつくったものですが、自分史づくりにも大いに役立ちそうな気がします。
次回からは具体的な作成手順に話を進めようと思います。