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北海道の仕事と暮らし08 なぜ地域雑誌なのか?

北海道の仕事と暮らし08 なぜ地域雑誌なのか?

おはようございます。
 9時、会社で荷物を積み込み、S氏とともに札幌へ。昼頃札幌着。K氏と合流。昼食がてら講義内容の打ち合わせ。といっても、さほど打ち合わせることはなく、決めたのは時間配分のみ。早めに北海学園大学に入り、しばし休憩。2時、人文学部のS先生の案内で34教室へ。2時20分から講座が始まる。
 第3回北海道観光・地域振興特別講座。講師は僕とスロウ副編集長の片山静香氏(K氏)。この組み合わせで講義を行うのはたぶん初めて。テーマは「出版と編集で地域の魅力と価値を高める!」というもの。このテーマは僕が原案を出し、K氏が修正したもの。確かに、地域の魅力を高めるには編集力が必要だ。話ながら、改めてそう感じていた。内容が盛りだくさんな講座だったが、熱心に聴いてくれる学生が多く、話しやすい雰囲気だった。学外からの来聴者もあった。講義の最後には、S氏から就活イベント企画チームメンバー募集の呼びかけが行われた。さっそく数名の応募があった。
 4時からは人文学部との間で交わす連携協定の調印式が開催された。これにより、これから北海学園大学人文学部との間で人的交流やコラボレーションが活発に行われることになる。我が社のツアー事業もまだスタートを切ったばかり。今後の展開が楽しみだ。

地元の魅力と価値に気づく

講義の中で、僕は「企業にはグローバル企業と地域企業がある」という話をしました。企業規模の大小ということではなく、グローバルに展開するか、地域に根ざした活動をしているのかの違い。
 同じように、雑誌媒体にも地域雑誌というものがあります。グローバルな雑誌というのはあまりありませんから、地域雑誌と比較すべき雑誌は全国誌ということになるでしょうか。かつては全国誌=雑誌。地域雑誌はタウン情報誌と認識する人が多かったのではないかと思います。
 今も、「地域雑誌」という呼び名は一般的とはいえず、ネットで検索してもほとんど出てきません(もっと適切な名称があるのでしょうか?)。スロウのような雑誌の作り方はまだめずらしいようです。けれども、情報誌ではない地域雑誌がいくつかある。僕が最初に地域雑誌だと思ったのは「東京人」でしたが、同誌には「新・都会派総合誌」という副題がついています。やはり東京は「地域」ではないのか? その後、しばらくたってから書店で「イーストサイド」を見つけました。スロウを創刊する前のこと。これは紛れもなく地域雑誌でした。弟子屈でつくられていることを知り、驚きました。
 今日本全国にどれだけ出版社があるのか、正確な数はわかりません。どこまでが出版社なのか、ボーダーレスになっていますから。僕の手元にある資料では4107社という数字。このうち、3170社が東京に集中しています。77.19%。首都圏に範囲を広げると、80%以上になります。ちなみに、北海道は29社ということになっていて、占有率は0.71%。出版という点でいえば、圧倒的に東京一極集中という状況なのです。大手出版社は東京に本社がありますから、出版点数で占有率を見れば、さらに一極集中しているに違いありません。
 その結果、僕らは特に意識することなく、東京視点による膨大な地域情報に日常的に接するようになる。僕はここに地方の大きな問題がある……。そう、ずっと考え続けています。
 地元に住む自分たちが、地元の魅力と価値に気づくことが地域振興の出発点ではないか? 1998年創刊の月刊しゅん、2004年創刊のスロウ。雑誌のテイストも収益構造も異なる2誌ですが、目指しているところは同じであるといってよいでしょう。

ローカルな取材に徹するとグローバルな価値が生まれる

月刊しゅんが軌道に乗りつつあった2003年、「新雑誌を生み出したい」という意欲が伝えられ、熱意に押し切られるように、僕もスロウ創刊に関わるようになっていきました。当初、創刊メンバーの思いは、それぞれ違っていたはず。それが議論を重ねるうちに、次第に編集理念としてまとまっていく。「足元の豊かさに光を当てながら、わくわく北海道をつくります」。最終的に、この理念が明文化されたとき、目指すべき雑誌像が明らかとなった。みんな「北海道」への愛着心がますます高まっていくことになりました。
 北海道は日本の中で広大な面積を有しています。その一方、「地元は北海道」という意識も強い。
 道外へ行って初対面の人と会ったとき、どのように自己紹介しているでしょう? 僕は「北海道の帯広から来た……」といった言い方をすることが多い。帯広を省略して「北海道から来ました」と言うこともある。帯広市民としての自分、十勝人としての自分、北海道民としての自分。どれが一番強いかは場面によって異なりますが、紛れもなく北海道というものが自分の中にある。
 ですから、地域貢献といったときには、狭くは「十勝」(帯広だけということはありません)、広くは「北海道」を指すことになるでしょう。それは道内の多くの企業に共通しているのではないかと思います。
 自分の住む地域をよりよくしたい。そう考えるのが地域企業です。同じように、自分の住む地域に価値ある情報を発信し、よい影響を及ぼしたい。そう考えるのが地域雑誌といってよいのではないでしょうか。実際に住んでいる編集者の視点で、地域の魅力や価値を伝えていく。そういう雑誌が少しずつ増えてはいますが、まだまだ十分とはいえません。
 ここ数年、おもしろい現象が起こっています。最初は道内出身者(編集長を除く)が立ち上げたスロウでしたが、近年、道外出身者が増えているのです。移住者の視点。実際に帯広に住んでいる北海道民なのですが、異なるバックボーンも持っている。すると、そこにユニークな解釈が生まれることがある。
 地域雑誌というものは閉鎖的なものではなく、むしろ広がりを持つもの、自由なものであるような気がします。道外にも熱心なスロウ読者がいることを伝えられることも多い。これはK氏が講義の中で語っていた通り、「好きだと思えるものを紹介する」という編集方針があるからでしょう。自分が「心からいい」と思ったものだけを記事にする。とことんローカルに徹した記事づくりがグローバルな価値を持つようになっていく。この点は、雑誌に限らず、あらゆる商品に当てはまるのではないかと思います。

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