
おはようございます。
全国ぷらざ協議会第94回勉強会2日目。各地からの情報交換とプリテックステージ60周年特集号の話。興味深いものがあった。昼過ぎの便で千歳へ。ミルキーライナーで帯広に戻る。7時からは中小企業家同友会とかち支部経営指針研究会の同窓会。企業変革支援プログラムの自己採点。続いて修了者3名の実践報告。3社とも経営指針を継続的に見直し、実践している。やり続けることが何より重要だ。
知の集積と国力の差
午前中は印刷業界について考え、夕方は地域経済について考える一日となりました。どちらも大切なもの。全国各地から集まった同業者の方々も、地元に戻れば地域経済について考えているはず。そして、「どうしたら自分の住む地域がよりよくなっていくのか」について、知恵を絞っているに違いありません。
僕らは印刷、出版、広告等によって地域をよりよく変えていくために力を尽くしたいと考えています。自社を成長させ、地域に貢献したいと思っている。地域の発展と自社の発展。両者が密接に関係していることを十分知っているからに他なりません。地域企業とは、言い換えれば「地域の成長とともに成長・発展する企業」ということになるでしょう。地域が疲弊する中で自社だけ発展することなどあり得ません。
それゆえに、地域経済循環をまず第一に考えますし、一消費者としてもできるだけ地域が豊かになるようなお金の使い方を心がけようとする。それが地元の企業や消費者の間で共通認識となっていけば、必然的に地域全体が豊かになっていくのではなかろうか? 少し単純すぎるかもしれませんが、そのように僕は考えています。
域外に流出するお金、域外に流出する仕事をできるだけ少なくする。これは個人、企業、自治体等、地域に関わるあらゆる人・組織が考えるべきことではないかと思います。
その一方、「ハッ」と気づかされる文章が「プリテックステージ」創刊60周年特集号に載っていました。全日本印刷工業組合連合会(全印工連)の元会長、浅野健氏のインタビュー記事。
「印刷は知の蓄積の量を拡大し、その伝搬のスピードを上げた。それによって起こった科学改革が産業革命を引き起こし、西欧諸国の国力を圧倒的なものに変えた」とあります。我が社の経営計画書の中にもこのあたりの記述がありますが、問題はグーテンベルクが活版印刷術を生み出した頃の西欧と日本の国力。日本では安土・桃山時代。この頃の日本は西欧と同等の国力でした。それが江戸時代の鎖国政策によって国力の差が開いていった。浅野氏の記事の中ではそのような認識が示されていました。
印刷によって知の集積を拡大させた西欧と鎖国によって情報を制限した江戸時代の日本。今の日本はグローバル化しているとはいえ、個人の意識レベルではどこかに情報を制限している部分があるのではないか? つまり、根強い固定観念が頭の中を支配しているために、外からの有益な情報が入ってきていないのではないか? バルブ崩壊以降、「内向きな日本」と言われることがあります。地域企業を経営する僕らが内向きになってしまうと、ものすごく狭い世界観の中で働くことになる。同時に、企業力という点で大きく後れをとることになるでしょう。
印刷業の果たすべき役割
明治以降、急速に日本が近代化していったのは、福沢諭吉らが書籍を輸入、翻訳し、書籍として広め、教育水準を高めたことが大きい。浅野氏の記事によると、印刷技術が日本の近代化に大きな役割を果たした……とあります。
それから150年ほどたった今日、日本では読書習慣を持たない人が増えてしまっているという残念な状況にある。インターネットによる情報爆発の結果、人々は手っ取り早い情報源を求めるようになってきているのかもしれません。そうして、戦前をイメージさせるようなポピュリズムが台頭する素地をつくることになってしまったのではないか?
今回の全国ぷらざ協議会では、紙媒体への回帰が起こっているという事例が紹介されていました。液晶画面など透過光によって得た情報よりも、印刷媒体(反射光)のほうが記憶として定着しやすい。世界の何ヵ国かでそうした研究結果が発表されています。Eインクディスプレイは反射光なので電子書籍というのもアリだとは思います。電子書籍を含め、書籍がもっと読まれるような世の中を目指す必要があるのではないかと僕は考えています。
循環型の地域経済を目指すには、世界の動きを知っておかねばなりません。印刷業界を理解する上では、他業界の動き、世界の動きを知っておく必要がある。世界のすべてを知るのは不可能ですが、ある程度知ることで、自分、自社、地域のことを客観視することができるようになる。鎖国政策によって大きく後れをとった歴史から学ぶ必要があるでしょう。
15世紀に起こった活版印刷による革命。その後に起こった宗教改革や大航海時代、さらには科学革命、産業革命。そこには当然ながら光と影があって、世界の人々にとって不幸な出来事もたくさん引き起こされることになったわけです。
今日のインターネット革命後の世界も似たような状況にあると考えられます。勉強会1日目には情報セキュリティに関する講演がありました。僕らは非常に危うい環境の中で仕事をしている。そう痛感させられる話でした。今さらインターネットを遮断してビジネスを行うことはできません。リスクを抱えていることを自覚しながら、活動していかねばならない。
考えるべきことは、500年前と同じような歴史を繰り返してはいけないということ。大航海時代に起こったのは植民地主義。国家間、地域間に極端な富の偏在や上下関係が生じるような世界であってはならない。個人においても貧富の差が極大化するようではいけないと思っています。その動きに待ったをかけるのが地域経済循環であり、人々の消費行動を変えていくことだと僕は考えています。そのために何ができるのか。もっと考えねばなりません。
