おはようございます。
丸一日、自宅の書斎にこもって、会報制作とスロウ次号の準備等を行う。ものすごく集中した結果、午後5時半には予定通り仕事を終えることができた。代わりに、眼精疲労と肩凝りに見舞われる。意識して定期的に休憩を取る必要がある。7時からS社にて帯広経営研究会総務広報委員会。次年度の事業等について話し合われた。
人材確保のツールとして
そういえば、10月14日の日本経済新聞に「いま社史がアツい 中小企業で発刊増、社員定着狙う」という記事が載っていたことを思い出しました。我が社の事業とも関連する話。保存しておいたのでした。電子版だと切り抜いてスクラップ帳に貼る必要はない。便利な時代ですね。
「社史をつくるのはこれまでは大企業中心だった」と同紙面では書かれていますが、これはたぶん東京など大都市での話でしょう。「社史」という言い方はあまり用いませんが、「記念誌」であれば、ソーゴー印刷では頻繁に制作が行われています。たいていの場合は創業30年とか50年といった周年記念誌。今は戦後に創業した会社が50、60、70周年を迎えていますから、記念誌づくりは盛んになってきています。
日経に載っていた社史も、記事を読み進むと記念誌と同じであることがわかります。ただ、発行する目的は従来の記念誌とはちょっと違っているらしい。ここが少しおもしろいポイントといえます。
これまで、社史・記念誌というと、「老舗企業が自社の伝統をアピールする」という目的で制作することが多かった。それが中小企業や社歴の浅い企業にも社史・記念誌が広がっていった。その理由として、「社員の愛着心を高め人材の流出を防ぐ」「知名度を上げ求人につなげる」といったものがあるようなのです。
僕はずっと以前から、社史・記念誌は「ビジネス書の形態に近づけたほうがおもしろい」と考えていました。社員が読むだけではなく、社外の人、一般の人に読んでもらうための社史・記念誌。そうすることによって、自社のPRや見込客の開拓につながるのではないかと思っていたのです。
離職率の高止まりと厳しさを増す採用難。大企業も中小企業も人材の確保に苦労している時代ですから、社史・記念誌をそのためのツールにしようとする動きがあるのはよく理解できるところ。僕の出版イメージ(ビジネス書化)と同様、価格をつけて販売されている社史もあるようです。
我が社で制作させていただいた社史・記念誌も、近年ではずいぶん変わってきたような気がします。
以前はハードカバーに箔押し……といった重厚な記念誌が多かったわけですが、そうした伝統を強調するつくりは減ってきました。歴史を伝えることは大切。ですが、伝統の重みは控えめに表現するようになってきたのです。歴史を親しみやすく伝えるような社史・記念誌。
このため、我が社で受注する場合には、「スロウみたいな雑誌風に」とリクエストされることがあります。実際、ほとんど中身はスロウと同じ作りになっている記念誌もあります。また、レイアウトは従来の記念誌を踏襲しながらも、文章の書き方が雑誌のようになっているものもある。ずいぶんソフトに変化してきました。
3代目経営者に向けて
僕は2017年から、「ビジネス書を年2冊出版する」という個人目標を掲げています。去年も今年も達成済み。来年用の原稿もほとんどできています。
あくまでも僕の予想ですが、今後、雑誌風の記念誌に続いて、ビジネス書風の社史・記念誌が増えていくに違いありません。これはほぼ間違いないと言ってよい。
どうして、そうした結論に至るのか? それは戦後に創業された企業が2代目から3代目に移行する時期にあるからなのです。2代目経営者と3代目経営者の違いはどこにあるのか? それは創業者から創業期について、直接話を聞くことができたかどうかの違いにあります。創業期のストーリー、エピソードをたくさん聞いてきたという2代目に対して、3代目は創業期のことを知らないケースが少なくない。
経営者には社史を後継者に伝える義務があるわけですが、事の重要性に気づくのは自分の引退時期について考えるようになってからのこと。引退前の周年事業のタイミングで、自社の創業の精神や創業期の伝説・エピソードを伝えておきたい……。そう考える経営者が多いに違いありません。
古参社員が中心となってつくる雑誌風の記念誌と、引退時期が迫った経営者がつくる社史。両パターン制作する会社も出てくるのではないでしょうか?
社史・記念誌を発行する目的もさまざまあります。従来型である「伝統のアピール」もあるでしょうし、「自社に対する愛着心を高める」「顧客に親しみや安心を感じてもらう」「自社の採用活動に活用する」「埋もれてしまいがちな歴史を次世代のために記録する」といった目的。カリスマ経営者のような人であれば、自分史と社史を兼ねたような本を制作するのもありでしょう。
僕としてはその中でも、一般書籍に近いビジネス書の形態がよいと考えています。これは制作者側からの考えではなく、一読者としての考えからきています。地元企業の社史は関係者でもない限り、ほとんど知らないもの。知っていたとしても、ごく一部分に過ぎません。これをノンフィクション、あるいはビジネス書として読むことができれば、興味が増すわけですし、魅力的な本であれば、読後、その会社に対する愛着心が増すことになる。
50年、100年という歴史の長い会社には限りません。創業10年であっても、節目の年に社史・記念誌を出版することで、社内外に自社の創業の精神や理念を伝えることができる。企業の重要な広報ツールとして、社史・記念誌は欠かせないものとなっていくでしょう。