第7回 文体を考える

第7回 文体を考える

おはようございます。
 昨日は釧路で「人材確保セミナー」の講師を務めてきました。3回シリーズで今回が最後。テーマは「後継者の存在が求職者の安心感に」というもの。ちょっと不思議なお題をいただきました。
 確かに後継者問題は深刻です。そもそも、なぜ後継者不足なのか? それは後継者が生まれにくい家庭、学校、職場教育になっているという問題が大きい。安心、安定を求めるのは人として自然なこと。しかし、変化やチャレンジがなければ人も企業も成長していきません。どんな立場の人であっても、安心領域に安住しているべきではない。したがって、自己成長欲求を強く持つことが第一ですし、後継者を輩出するには自己超越欲求を刺激することが求められるでしょう。
 企業経営者であれば、後継者または次世代のリーダーとなる人に対して伝えたいことが山ほどあるでしょう。これをすべて口頭で伝えようとすれば、嫌がられること請け合いです(その人の人格にもよりますが)。ですから、自分史やビジネス書といった形で伝えるのがよいのではないか、と僕は考えています。
 今回は、「どのような文体で伝えるのが好ましいか」ということについて考えてみたいと思います。

目指すは、「品よくカジュアル」

これはある程度結論がはっきりしている問題かもしれません。
 ひと言でいってしまえば、「自分らしい文体で書く」のが一番なのです。本を出すからといって、よそ行きの言葉を使うのは非常に不自然。ふだん自分が書いている文章のテイストでよいわけです。
 ただし、気をつけねばならない点があります。ひとつは、前回書いた基本ルールを守ること。これは必須といえます。もうひとつ挙げるとすれば、「わかりやすい文章」を心がけることでしょう。このあたりについては、前著の「写真家的文章作成技法」(出版時には改題されているかもしれません)をご覧いただければと思います。
 ルールを守り、わかりやすく書く。それだけでも悪くはないのですが、できればもう一点、「どのような文体で書くか」ということについて、書き始める前に方針を定めておくとよいでしょう。これは「です・ます調」か「だ・である調」か、というだけの問題ではありません。文章のテイストをある程度最初から決めておくということ。

一般には、「です・ます」はていねい、「だ・である」は断定的な印象を読者に与えるとされています。本当にそうなのでしょうか?
 たとえば、「です・ます調」ではあるものの、体言止めが頻繁に使われている文章を読むことがあると思います。体言止めが増えると、全体としてはていねいだけれども「主張が強まった」という印象を受けるはずです。「だ・である調」の領域に近づいているというイメージです。
 逆に、「だ・である調」の中に、「・・・のような気がする」「・・・ではなかろうか」といった表現が多用されていたら、どんな印象を受けるでしょう? ずいぶんソフトなイメージになると思います。断定的とはほど遠い文章になるわけです。
 「です・ます」にするか「だ・である」にするかは、自分の書きやすいほうを選べばよいのではないかと思います。僕の場合、雑誌では「だ・である」、ブログや単行本では「です・ます」で書いています。誤解を招きやすいテーマについて書く際に「です・ます調」を使ってきたため、自然にそう使い分けるようになったのでしょう。

「ていねいかどうか」とは別に、「親密かどうか」という基準で文体を使い分けることも、考慮すべきではないかと僕は考えています。
 「格調高い文章」か「カジュアルな(またはくだけた)文章」か? 格調高く書かれた本を読むと、知的、物知り、正論、堅苦しい・・・といった印象を読者に与えます。本の内容によっては格調高く書くのがよいでしょう。
 逆に、親密さに重点を置いて書くと、身近な人、自分のことをわかってくれる、おもしろい、ちょっと怪しいかも・・・といった印象を文章から受けることになるはずです。
 僕個人としては、ややカジュアルな文章を書くことをお勧めしたいと思います。どうしてかというと、格調が高すぎると読んでいて眠くなるからです。書物以外にまとまった情報を得る手段がないという時代ならともかく、今はインターネットをはじめ、いくらでも情報伝達手段がある。読みやすく、親しみを感じなければ読まれない。そう考えるべきでしょう。
 無愛想だったり、強面で通してきた人の場合、カジュアルに書こうとすると、少し苦労するかもしれません。この際ですから、これもひとつのチャレンジだと思って、カジュアルな文体で書いてしまいましょう。自分史の場合は、カジュアルな中に品性が感じられるような文体が求められるのではないかと思います。

1.飾らず素直に書く
2.読者のことを思い遣って書く
3.自分が大事だと思っていることを曲げずに書く
4.誰かに語りかけるような文体で書く
5.少しだけなれなれしく書いてみる
 僕の場合はこの5つでしょうか。最後の「なれなれしく」というのは、その人らしいなれなれしさを表現するということです。初級レベルとしては、語尾に「ね」を使ってみることです。不自然さが感じられない程度に「ね」を挿入すると、読み手との距離感が適度に縮まってきます。これをいきなり「・・・だよ~ん」などと書いてしまうと、人格が疑われることになるでしょう。ご用心ください。

〒080-0046 北海道帯広市西16条北1丁目25
TEL.0155-34-1281 FAX.0155-34-1287

高原淳写真的業務日誌