
おはようございます。
最近は月に1度か2度しかお酒を飲まなくなっている。このため、たまに飲んでも翌日まで残ることはなくなった。昨日は午後3時から札幌取材。一般道も道東道も一部凍っていた。微妙に滑るような気がする。どの車も安全運転だった。それでも数ヵ所、事故現場を目撃した。帰路では事故通行止めに巻き込まれ、40分ほど遅れて帰宅。
取材では、ギリギリの光量の中で美しい写真が撮れたのではないかと思う。それにしても人が多かった。周囲の人を気にしながらの撮影だった。
フォトブックと写真集
根拠のあるデータを持っているわけではありませんが、アマチュアフォトグラファーの数は激増しているのではないかと思います。デジカメの時代になり、撮影で失敗することが少なくなった。撮影に必要な専門技術も大幅に減った。さらに、後加工によって見違えるような作品に仕上げることも可能になっています。敷居が低くなったため、写真の裾野は大きく広がっているに違いありません。
写真が趣味という人ばかりではありません。記念写真をたくさん撮る人も増えている。スマホでも十分にきれいな写真が撮れる。これはフィルムカメラ時代には想像もつかなかったこと。誰もがフォトグラファーになれる時代。ニエプスもダゲールもビックリ……ですね。
その結果、あっという間に「フォトブック」という市場が形成されるようになりました。主流はネットで注文するタイプのもの。驚くほど価格が安い。昔は、記念写真はアルバムに貼って保存するものでしたが、今はフォトブックにまとめるものなのでしょう。
カフェの取材をすると、フォトブックで作ったと思われる冊子状のメニュー表をときどき見かけます。さまざまな用途が考えられそうですね。
我が社では価格競争の激しいフォトブックを商品としては扱っておらず、代わりに写真集の印刷を受注することがあります。フォトブックと写真集との間に明確な線引きはありません。大雑把にいえば、一部のみ、または数部程度の冊子に使われるのが「フォトブック」という言葉。インクジェットやトナーを使ったオンデマンド印刷だったり、たまに銀塩写真を製本したフォトブックもあるようです。
通常、写真集という場合は、オフセット印刷によるもので最低でも100部以上のものを指すのではないでしょうか。また、オンデマンド印刷の品質も大幅に向上していますから、フォトブックと写真集の中間的存在の冊子もあります。こうしたものはフォトブックではなく、「写真集」として扱われることが多いと思います。
ソーゴー印刷では、オフセット印刷でもオンデマンド印刷でも写真集を作成することが可能。ですが、受注点数ではオフセットによる写真集のほうが多い。厳密に見比べると、やはりまだまだオフセットのほうに一日の長があるのでしょう。とりわけ、オフセット印刷の中でもFMスクリーンを使って印刷したものは再現性が格段に高い。使用する用紙にもよりますが、銀塩写真(印画紙)に匹敵するのではないかと思うことがあります。
制作のポイント
写真集を作るのは、実は非常に簡単です。もちろん、作品が揃っていればの話。どうして簡単なのかというと、文字の量が圧倒的に少ないため。ほとんどがキャプションですから、文字校正に関しては非常に楽。凝ったデザインにしない限り、制作作業もすみやかに完了するでしょう。
僕もこれまで3冊の写真集(ポストカードブック1冊を含む)を出版しましたが、1日か2日でできてしまいました。もっとも、写真の画質調整には時間がかかりましたが……。
画質調整では自分の写真集でも苦労しましたが、2014年に出版した関口哲也氏の写真集「道東 十勝の詩」では、画質の微調整にものすごく悩んだことを覚えています。原版はポジフィルム。オリジナルに忠実に色を合わせていかねばなりません。
デジカメの画像データは後処理することを前提にしたもの。一方、ポジは写真の完成形です。自分の作品ではないだけに、余計な主観が混じらないよう、細心の注意を払って色合わせを行いました。関口氏は病身にも関わらず印刷の際にも立ち会われました。写真家の執念を見た思いがします。
写真集の制作にはいくつか考えるべきポイントがあります。
まず何といっても写真選びですね。当然ながらテーマに沿ってセレクトするわけですが、ページを進めながらストーリー性が感じられることが望ましい。単独の作品として成立している写真であっても、自然にページを開いていけるような構成にする必要があると僕は考えています。ここに一番頭を悩ませることになる。写真力と編集力は別な能力ですから、プロの編集者に任せるのもよいでしょう。通常は、写真家と編集者の共同作業で進められていくことになります。
次にレイアウト。デザイナーが主導権を握るか写真家の思い通りに作るかによって、ずいぶん違ったものになりそうです。僕は自己完結型で写真集を作ってきましたが、センスのいいデザイナーに一任するのもよいかもしれません。写真家の場合、個展で作品を展示する要領でまとめればよい、と考えてしまいます。このため、単調な作りになりやすい。
最後(最初ということもあります)に紙選び。なかなか「これ」と思う紙に出合うことがありません。世の中には確かに存在するようだが、紙の見本帳の中には使いたいと思う紙がない……。そんなことがよく起こります。たぶん、写真家の多くは紙選びに悩んでいるのではなかろうか? 僕も印刷より、紙質が気になります。質感と硬さと色。三拍子揃っている紙は滅多にありません。
「写真集を作るのは簡単」と書いてしまいましたが、理想の写真集を作ろうとすると、とてつもない深みにはまっていくことになります。フォトブックと写真集は、やはり別物と考えるべきでしょう。