
おはようございます。
昨日は白糠、釧路での取材と打ち合わせ。天気がよく、気持ちのよい写真が撮れた。冬の道東は本当に素晴らしい。編集者I氏との会話の中でkeran keran(ケランケラン)の話が出た。来年は釧路版が発売されるようだ。
2010年に創刊した食と旅の本
keran keranとは「北海道・十勝発 食旅本」として2010年に創刊した雑誌。翌2011年には「釧路発」として発売。以後、十勝版と釧路版を交互に発行していきました。偶数年は十勝版、奇数年は釧路版ということになります。
ところが、2017年になぜか釧路版が発行されなかったんですね。僕はkeran keranの編集にはノータッチ。取りやめになった理由を知りません。帯広から釧路へ取材へ行くのが大変すぎるからかな……などと勝手に考えていました。
実際、そういう理由もあったのでしょう。keran keranはA4サイズ172ページ。スロウのようにゆったりしたレイアウトのページもありますが、一方では月刊しゅんのように情報の詰まったページもある。取材件数はスロウ本誌とは比べものにならないほど多い。しゅんとスロウの中間といった取材件数でしょうか。
十勝版の場合は地元であるため、しゅんと同じように取材・撮影することが可能。釧路版の場合は取材の仕方にひと工夫が求められます。
起点となるのは釧路に実家のある編集者。最初はそんなところからスタートしたという記憶が残っています。釧路出身者がいると情報収集しやすいというのもありますが、もっと現実的な理由が大きかった。「宿泊費がかからない」というもの。取材にかかる経費を抑えるため、最初のうちは釧路出身者がメインとなって取材が進められていった。
keran keranにはしゅん的なところとスロウ的なところがあります。実際、keran keran編集部はしゅんとスロウの混成部隊。最初のうちは、しゅん的要素の強い本づくりでした。その後、スロウ的なページが増えていく。釧路版でいえば、2015年のkeran keran vol.6(釧路版では3冊目)はずいぶんスロウ的になっているように思えます。
本のテーマは食と旅ですが、外形的な情報だけならネットから入手できる時代。我が社には事実の背景や書き手の主観を表現できるというところに強みがある。編集者が取材を通じて直接見聞きした話を記事にするには、ある程度の文章量が必要となります。
僕の捉え方では、情報に密度が求められるのが月刊しゅん、情報に純度が求めらるのがスロウ。両者の中間として存在するのがkeran keranということになるでしょう。本文172ページとは別に、A5サイズの「くしろ温泉めぐり」(日帰り入浴料割引クーポン付き)も付いていますから、ずいぶんお得な本といえます。
「道東」という地元意識
僕が「地元」という場合、狭くは「十勝」、広くは「北海道」を指しています。たぶん、同じような感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。
このため、ソーゴー印刷では十勝を取材エリアとする月刊しゅんと、北海道全域を取材するスロウの2誌を主力媒体として発行しています。
ところが、両者の中間として「道東」が地元であるという意識もそこそこ持っているのです。帯広と釧路は120キロ離れているものの、感覚としては隣町。釧路地方には道内の他のエリアとは少し違った親近感のようなものを感じています。文化的にはずいぶん異なると思うのですが、釧路には「兄弟」のような感覚を持つことがあります。ちなみにオホーツクの場合は「いとこ」、根室はたまに会う「親戚」といった感じでしょうか。変な例え方になってしまいました。
いずれにしろ、「道東」という地元意識も確かにあるようなのです。道東道を使わずに釧路へ行くと、車で2時間半。道東道なら2時間くらいでしょうか。ちなみに札幌へは車でやはり2時間半。距離はともかく、移動時間はだいたい同じ。ですが、心理的には釧路のほうが圧倒的に近い。
僕の感覚では、日高山脈の東と西でちょっとした違いがあるような気がしています。これは今でも感じることですが、日高山脈を越えて十勝に入った瞬間、「ああ、戻ってきた」という気持ちになるんですね。一方、釧路(音別)から浦幌に入っても、「ああ、戻ってきた」という感覚にはならない。置戸や津別から陸別に入っても同様です。やはり、道東という地元意識が作用しているようなのです。釧路、根室、オホーツクの人たちはどんなふうに感じているのでしょう?
さて、keran keran釧路版に話を戻すと、釧路には雑誌で紹介し切れていない魅力が大量に存在しています。道内の出版社は札幌に集中している。このため札幌に近いエリアの情報はずいぶん詳細なところまで伝えられています。一方、道東には未知のエリアや手つかずのスポットがある。僕らとしては単にレアな情報を発掘するということではなく、魅力的な人であったり、歴史的、文化的な背景とともに情報を伝えたいと考えています。このあたりはスロウの編集理念と同じ。めずらしいものやお得な情報を提供するというよりも、本当の魅力を知り、じっくり味わうというところに旅の価値があると考えているのです。
北海道はどこも魅力的ではあるのですが、僕個人としては素朴な魅力の詰まった道東の旅を多くの人に体験してほしいと思っています。その意味では、keran keranの十勝版と釧路版、そして「スロウな旅北海道」(東エリア版)を多くの人に読んでほしいところ。
編集部には十勝管外出身者が増えてきました。僕の持つ道東地元意識はわかりにくいかもしれません。ただ、地域の魅力を発見する目はみんな持っています。来春発行予定のkeran keran vol.9(釧路版)が楽しみですね。