
おはようございます。
ハードな一日。来客4組。うち3組は我が社のツアー事業と何かしら関係のある話だった。観光という点で、十勝はまだまだ未開拓なエリア。伸びしろが大きい。まだスタート地点に立っただけの我が社だが、来年から積極的に動いていきたいところだ。それにしても原稿が未着手のままになっている。夕方、大量の写真をセレクトし、各編集者に送る。この時点でほぼ力尽きた。風邪の初期症状を感じたため、陶盤浴で体を温める。
忘れられた歴史
しゅん、スロウに続く第3の主力媒体として育てていきたい。そう思って2015年に創刊したのが「スロウな旅北海道」です。今の編集部の人たちはどう感じているのかわかりませんが、社歴10年以上の人であれば、よくわからないプロセスを経て誕生した雑誌と感じているかもしれません。
雑誌スロウの理念を受け継ぎながら「旅」に特化した雑誌を創刊したい……。そう考えたのは、2008年頃のことだったと思います。そのためにわざわざ専門の部署をつくりました。僕もすっかり忘れていましたが、部署名は「M&M」といいました。「お口でとろけて、手にとけない」のM&Mではありません。どういう意味でしたっけ? 本当に忘れました。思い出したら後日追記します。
新部署といってもメンバーは2人だけ。それにスロウのM編集長と僕が加わって新雑誌の構想を練っていったわけです。雑誌名はなぜか「てくて」というものでした。この名前も、どこから出てきたのかまったく覚えていません。なんとなくくたびれたイメージの雑誌名ですね。本当に全員一致で決まったのだろうか?
ともかく、テーマは「旅」と決まっていますから、2008年から取材活動が始まりました。まだ創刊時期もハッキリしていませんでしたから、プレ取材というレベルのもの。スロウのようにすでに媒体が存在し、誌面イメージが浮かんでくるようなものであれば、写真を撮る僕としても非常にやりやすい。けれども、雲をつかむような新媒体で、何をどう撮るかのわからない。とにかく撮る。編集者のほうも、とにかく取材するというスタイルだったと思います。
そうしたもやもやした取材が続いた後、何か形になったのか? このあたり、僕は事情をよく知らないのですが、なぜか方向性が変わっていきました。気づくと「とかちマメスロウ」というシリーズが誕生していました。第1弾は「豚丼」。第2弾は「お菓子」。6冊目の「パン」(2010年11月発行)を最後にマメスロウは消えていきました。
そして、今、クナウマガジンのウェブサイトを見ても、「とかちマメスロウ」の情報はどこにも載っていない。忘れられた媒体となってしまいました。これはこれでおもしろい本でしたが、クオリティとしては今一歩だったのかもしれません。そうして、「とかちマメスロウ」も「てくて」という言葉も社内の会話の中で、次第に使われなくなっていきました。
スロウ本誌のほうもこの頃、大きな問題が浮上していました。主力メンバーの退社が続いたのです。旅雑誌の構想はいったん脇に置き、スロウとチビスロウに集約させることになりました。
スロウの精神を受け継ぐ旅雑誌
再び態勢が整ってきたと感じたのは2013年あたり。この年、「スロウ村の仲間たち」を初開催。雑誌づくり以外に活動領域を広げていくことになりました。改めて旅雑誌のチームを編成。誌名も「てくて」ではなく、「スロウ」の名を冠したものに決まりました。
そう、我が社のちょっとした欠点は、新しいことを始めたとき、名称まで新しくしてしまうこと。事業や商品の関連性がまったくわからなくなってしまうようなネーミングをする傾向があるのです。やはり、「しゅん」と「スロウ」が2大媒体ですから、どちらかとつながりを持たせることが大切。
ということで、新媒体の名前は「スロウな旅北海道」と決まりました。表紙デザインは当時新入社員だったデザイナーのA氏が担当。この感覚はこれまで我が社になかったもの。おもしろい雑誌になるかもしれないと直感しました。
誌面づくりのほうが手探り状態が続きました。本当に僕らが伝えるべき旅の情報とはどのようなものなのか。編集者間に多少の温度差があるような気がします。また、スロウの理念をどのように記事に盛り込んでいったらよいのかという点でも、課題は多いでしょう。スロウ本誌に比べると文章量が圧倒的に少ない。その中でメッセージを的確に伝えるには、相当な文章力が必要となるのではないか? 限られた文字数の中での表現力をぜひ磨いてほしいと思っています。
M&Mという得体の知れない部署から始まって、今は「Slow Travel HOKKAIDO」という部署名となりました。発行する媒体は「スロウな旅北海道」と「Slow Life HOKKAIDO」の2誌。加えて、これからいよいよ始まるツアー事業もこの部署が担当することになっています。
気づくと、人員も6名に増えていました。今は我が社にとって初めてのチャレンジという活動ばかり。目の前の課題に取り組むだけで精一杯という気持ちかもしれません。誰にとっても未経験であるため、僕から何かアドバイスをするということもできません。一人ひとり、創業者のような意識を持って取り組んでほしいと思っています。
ただ、忘れてならないことはスロウ創刊時から、さらに言えばしゅんの創刊から脈々と受け継がれてきた精神を念頭に置きながら商品開発を行っていくこと。ここを置き去りにすると何のために始めたのかわからなくなってしまいます。あらゆることがめまぐるしく動いていますから、ときどき初心に戻ることが大切です。これはみんなに……というより、自分に向けての言葉といえそうです。