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北海道の仕事と暮らし31 蓄積されていく豊かさ

北海道の仕事と暮らし31 蓄積されていく豊かさ

おはようございます。
 朝6時50分出発。10時屈斜路湖着。気持ちのよい青空。冬はやっぱり道東がいいな……。取材は興味深く、その一部は我が社の事業に参考となるものだった。何より、尽きることのない創作意欲が素晴らしい。午後の取材は阿寒。阿寒湖ではなく、阿寒の市街地。先週の釧路取材の続き。取材が進むにつれ、僕のよく知っている人とつながっていることが判明した。それはともかく、ここでもセンスを感じる創作が行われていた。道内にはまだまだ僕らの知らない魅力的な場所や人が存在する。担当編集者I氏も僕と同じような感想を抱いたに違いない。

大都市と地方のビジネスの違い

道内にあるまだ広く知られていない場所、人、活動。これらを読者の方々に知ってほしいと思って、僕らは出版活動を行っています。
 にもかかわらず、心の半分では「あまり広く知れ渡らないでほしい」という気持ちもあるというのが正直なところ。知ってほしいが知れ渡らないでほしい。矛盾するようにも聞こえますが、たぶんスロウの読者の方々ならわかってもらえることでしょう。人がいっぱい押し寄せて、場の雰囲気が損なわれるようなことがあってはいけないと思うのです。
 昨日は大都市のビジネスと地方(都市ではない)のビジネスの違いについて考えていました。大都市と地方都市、さらには屈斜路湖畔のような小さな集落。それぞれビジネスのやり方には大きな違いがあります。
 僕は東京で15年、帯広で18年仕事をしてきました。ですから、知っているのは大都市と地方都市のビジネス。仮に、屈斜路湖畔で仕事を始めたなら、いったいどんな感じになるのだろう……。僕には十分イメージすることができませんでした。
 人口17万人弱の帯広ですが、それでも「都会」と捉えている人もいることでしょう。帯広にUターンしてから僕の仕事はずいぶん変わりました。しかし、少しだけ東京的なところがある。それは「ある程度規模を追わなければ継続できない」というところ。そこがおもしろいところでもあり、苦労の絶えないところ。
 大都市は地価が高い。事務所を借りるにも家賃・管理費が高い。自社ビルを建てると返済の負担が重い。固定資産税も重い。事務所と住居にかかるお金が多額なものとなりますから、その分たっぷり稼がなければならない。東京に住んでいると、感覚が麻痺してしまうところがあります。走り続けなければ、あっという間に経済危機がやってくる。
 帯広の家賃も「高い」と言う人がいますが、やはり比べものにはなりません。駐車場が無料。しかも物置まで付いている。全力疾走し続ける必要はあまりなく、少し立ち止まって考える時間がある。残念ながら、企業経営者に立ち止まって考える時間はさほどありません。しかし、一般社員という立場なら多少は確保できるはず。たとえ、平日、ハードに働いている人であったとしても。

電子レンジと薪ストーブ

今朝になって思ったのは、「豊かさ」の感じ方が大都市と地方とでは決定的に違っているのではないか、ということでした。
 大都市では長く立ち止まっている時間はなく、変化が激しい。ぼんやりしていると、豊かさが感じ取れなくなる。したがって、「豊かさは消費するもの」といった感覚を持つ人が多いのではないかと思います。「モノ消費からコト消費へ」といっても、やはり「消費」というという点では変わりありません。
 消費があるから経済が回っていく。ですから、僕は「消費」を好ましいものと捉えています。貨幣経済が続く限り、消費を促進することが企業活動には欠かせません。
 その一方、地方には「蓄積されていく豊かさ」というものがあるのではないかと思います。変化がゆっくりとしている。急流ではないため、流されることなく積み重ねられていく。
 ものすごい勢いでお金を回していく大都市に対し、地方の場合はゆっくりと回っていく。地元の人同士の場合はお金ではなく物々交換だったり、労働の交換だったりする。
 変化がゆっくりしている分、流行廃りに影響を受けることは少なく、生き方に一貫性を持たせることができるというのも地方で暮らすよさといえるのかもしれません。一貫性のある生き方は、意志を持っていれば東京でも札幌でもできるでしょう。しかし、影響を受けやすい環境に身を置くことになる。強い自分をつくらなければ、流されてしまいやすい。
 一方、地方での暮らしには別な強さが求められるのではないか、とも考えます。自ら何かをつくり出さなければ、豊かさは蓄積されていかない。能力はともかく、努力は求められるだろうな……。昨日の取材の中でも「ゆっくりくつろいでいるときにも手を動かしている」といった話が出てきました。
 僕のイメージでは、大都市は電子レンジ。速攻で食べ物が温まる。地方は鍋を乗せた薪ストーブ。温まるのに時間がかかる。けれども、ストーブには部屋を暖めるという本来の目的がある。流れがゆっくりしているため、物事を同時並行して進めていくことができる。どちらがよいということではなく、自分にはどちらが向いているのか? 人によって異なるに違いありません。
 さて、中間ゾーンに位置する帯広のような地方都市はどうか? 僕の捉え方では「中間」ではなく、「どちらを選ぶことも可能」なところ。すでに実践している人も多いのではないでしょうか?
 会社では都会的な働き方をしながら、休日になると「蓄積されていく豊かさ」を享受しているというような人。あるいは僕のように仕事と休日がどんどんボーダレスになっていき、電子レンジにも薪ストーブにもなるというタイプ。僕は自分の生まれ育った場所であるせいか、帯広のような規模の都市に魅力と可能性を感じています。
 それにしても、昨日は魅力的な暮らし方を取材させていただきました。僕の帯広暮らしに欠けているものは、このあたりにあるのかもしれません。

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