
美深町/2018.12.22
おはようございます。
午前中はゆっくり過ごす。午後から買い物へ。夜は食事会の準備。風邪は八割方治ったような気がするが、夜になると咳が出る。今年の仕事も残すところ実質4日間。時間が滝のように流れていく。
「印刷」か「出版と編集」か
11月13日、スロウ副編集長のK氏と一緒に北海学園大学人文学部で行った講義をもう一段階深めることはできないだろうか……。最近になって、そう考えるようになりました。
そのときの演題は「出版と編集で地域の魅力と価値を高める」というもの。学生向けの話としてまとめましたが、講義そのものは、地域企業に勤める人や自治体関係者向けと言ってよさそうな内容。たぶん、僕はこのようなテーマで来年「クナウこぞう文庫」から出版することになるでしょう。
年明けの1月18日、中小企業家同友会道北あさひかわ支部富良野地区&わかば会新年例会で、講演させていただくことになりました。北海学園大学の講義内容を企業経営者向けにアレンジしてみようと思っています。演題はそのまま。サブタイトルとして、「~経営指針づくりでわかった自社固有の役割~」を付け加えました。
僕の考えでは、経営指針づくりでもっとも頭を使うのは事業領域(ドメイン)の部分。創業から今日まで脈々と流れる自社の「創業の精神」と、自社固有の役割。両者が合わさって経営理念が形づくられていく。自社固有の役割は過去志向であってはならない。これからの我が社固有の役割は何なのか? ここを明らかにすることが、経営指針を成文化する上でもっとも重要なポイントとなるわけです。自社固有の役割がハッキリしなければ、超長期ビジョンも10年ビジョンもぼんやりとしたものになってしまいます。
我が社の場合、「出版と編集」で地域の魅力と価値を高めるというのが固有の役割であると考えています。もっとも核となるのが出版と編集。これに付随するものとして、写真、デザイン、文章、印刷、製本といった技術・ノウハウがある。
20年前であれば、「印刷」という言葉が最上位に位置づけられたことでしょう。今でも受注印刷物が売上の60%超を占めていますから、社内でも「印刷」こそ自社固有の役割と考えている人が多いに違いありません。僕もその考えを否定するつもりは毛頭なく、「印刷」という言葉の捉え方に温度差、個人差があるだけだと思っています。広義の「印刷」では、あらゆる情報発信活動(情報の大量複製)が印刷に含まれる。出版もそのひとつということになります。
インターネット等による第4次情報革命によって、印刷という言葉は非常に定義しにくいものとなりました。このため、印刷会社であっても「印刷」を自社固有に役割としてしまうと、活動内容がぼやけたものとなってしまいます。もっと絞り込まねばなりません。現在の我が社は、ほぼ間違いなく「出版と編集」でしょう。
もっと絞り込めば「編集」でしょうか。我が社の近年の活動内容を振り返ってみると、情報編集力を強化するような方向ですべてが動いていると思うのです。
あらゆる業種に求められる「情報編集力」
技術の進歩とグローバル化によって、世の中がどんどん複雑なものとなっています。日本のどこに住んでいても、ある程度便利な生活を送ろうとすれば、複雑化や高度化から逃れることができない。便利になる分、面倒な知識も必要となる。スマホの操作法など、便利さを享受するには相応のハードルを乗り越えなければなりません。
政治、経済はそれ以上に複雑化しています。新聞を読んでもテレビで解説を聞いても、どうもよくわからない……。そんな事柄が増えてきているような気がします。これは僕が老化したという理由ではなく、たぶん若手の人でも同じような感覚を抱いているはず。その証拠に、若手にそうした複雑化した事柄について尋ねてみることがあります。持っている知識は僕とどっこいどっこいといったところ。得意分野が違うので、情報交換は有益ですが、世の中全般に対する理解度では大差ないようです。
そうした複雑でわかりにくい現状に過度なストレスを感じている人は、手っ取り早い結論に飛びつこうとする傾向があります。それがポピュリズムを生む要因のひとつとなる。2018年の漢字は「災」でした。これには人災もけっこう含まれているような気がします。台頭するポピュリズムが引き起こした災い。それが来年以降、尾を引かないよう気をつけねばなりません。
僕は「あらゆる業種が情報発信業になっていく」と考えています。すでにSNS等を使って、さまざまな業種、職種の人たちが情報発信活動を行っています。15世紀、グーテンベルクの頃とは比較にならないほどの情報爆発が起こっている。情報の複雑化は留まることを知りません。その反動として、情報を極端に単純化しようとする人も現れることでしょう。
ですから、それぞれの国や地域で、心ある人や心ある企業が「複雑な情報をわかりやすく伝える」必要があるのではないかと考えています。そのためには「情報を編集する」という活動が欠かせません。
職業人であれば、自分の仕事に関する事柄についてプロとしての知識を持っているはずです。それを素人でもわかるように情報を編集する。そして、わかりやすい形で伝えていく。
スロウ編集部は北海道の魅力をわかりやすい形で伝えていくというのが固有の役割。しゅん編集部は十勝の魅力を伝え、十勝経済の活性化に貢献するというのが固有の役割。印刷事業では顧客の事業発展に貢献するためのツールを提供するというところに固有の役割があります。部署によって範囲は異なりますが、いずれも情報編集力が鍵となる。
単純化することで本質を隠そうとする動きが世界各地で見られます。その反対に本質をわかりやすく編集するというのが我が社固有の役割。そして、それは地域企業に共通する役割ではないかと思っています。