おはようございます。
このところ、我が社では結婚、出産に関する話題が続いています。我が家に子どもはいませんが、何だか親になったような気持ちですね。新卒で入社した人が結婚したり、子育てをする・・・。感慨深いものがありますし、時の流れを感じます。
ライフステージは変わっても、自分の一生の仕事というものは大事に持ち続けてほしい、といつも願っています。営業でも編集でもデザインでも、自分のコアとなる強みは、長い年月を経てコア・コンピタンスとなっていくものです。仕事人生の序盤では「好きになること」が重要ですが、ステージが変わったら「本気になること」が生き方の基本となります。
僕の場合、写真と並行して書く仕事を30年以上続けてきました。これだけ続けると、何の隠し事もありません。仕事が「好きか嫌いか」といった問題ではなくなるのです。仕事が呼吸のようになる。呼吸するのが好き・・・という人はあまり聞いたことがありません。そのくらい当たり前になるまで続けるのが、幸せな仕事人生ではないかと僕は考えています。
自分史を書こうとする人の多くは、書き手のプロではないはずです。したがって、文章を書くことに苦手意識を持っている人もいることでしょう。最初は苦手と感じるのが当たり前。まずは、書くことを好きになることから始めましょう。
書くことを通じて、自分の人生を好きになる
「好きか嫌いか」と「得意か苦手か」は別物です。世の中には、「好きで得意」「嫌いだが得意」「好きだが苦手」「嫌いで苦手」という4タイプの人が存在します。
その中で、たぶんもっとも少数派だと思われるのは「嫌いだが得意」という人ではないかと思います。どんなジャンルの能力も、好きになることが得意になるための最短ルートといえるでしょう。したがって、一冊の本を書き上げるためには、「書くことが好きな自分」をつくることがひとつの条件。そう考えるべきですね。
では、好きになるにはどうすればよいのか? 僕の専門分野である写真について考えてみると、「撮りたいと思う被写体がある」ことが最大の決め手。「写欲」なんて言葉、今も使うのでしょうか? 40年近く前のカメラ雑誌によく出てきた言葉です。
第二のポイントは必要な知識や技術が備わっているかどうか。最初のうちは最低限「作品として成立する」レベルを目指して技術を磨いていきました。専門書も読んだし、暗室の中で長時間を過ごし、試行錯誤を重ねていった。そうすると、停止液として使われる酢酸のにおいが好きになった。僕の「好き」はにおいから始まることが多いですね。クリーミーな香りがするイルフォードの印画紙も好きでした。
話が逸れました。ある程度の苦労は覚悟して知識を持つ、技術を身につけることが重要。それを仕事にする人であれば、5年、10年とかかるでしょう。けれども、これから自分史を書こうとする人ならば、数ヵ月もかからないと思います。速やかに文章力を身につけたい人は、「写真家的文章作成技法」をご一読ください。
文章を書くには「書きたいものがある」ことが何よりも欠かせません。自分史の場合には、自分の人生の中に書くべき事柄がちゃんと存在することが絶対条件といえます。そして、もうひとつ。「自分の人生そのものを好きになること」でしょうね。紆余曲折はあっても、自分の人生を肯定的に振り返ることができる。そんな人が魅力的な自分史を著すのだと思います。
そう考えると、逆もまた真なりといえるかもしれません。
書くという活動を通じて、自分の人生に対する理解が深まり、自分の歴史を肯定的に捉えられるようになり、人生を好きになる・・・。そんなパターンの人も自分史の著者の中には少なくないでしょう。
自分史を書く動機はさまざま。自分の人生について深く考えるために自分史を著す人もいるに違いありません。
「好きになる」というのは結果であって、最初に求められるのは、自分の人生に対する好奇心や探究心でしょう。強い意欲で書き続けることができるかどうか? ここが第一のポイント。
次に継続力を持って取り組むために必要な最低限の文章作成技術。これが求められます。最低限とはどのくらいのレベルなのかというと、「自分で読み返してみて意味が通じる」というレベルでよいでしょう。
世の中には意味不明な文章が意外に多いもの。稚拙で意味不明なのはわかりやすいのですが、知的で意味不明な文章に出合うと、混乱することがあるものです。書いてあることが理解できないのは、自分の頭が悪いからではないか? 人をそのような不安に陥れる文章もあります。知的だが文章力がないという人は、気をつけましょう。
上手下手を気にすることなく、簡潔でわかりやすい文章づくりを継続するうちに、文章作成技術は高まっていくものです。そして、どこかで「自分独自の文体」ができあがっていく。その頃には.おそらく書くことが好きになっていることでしょう。
書くことが好きな自分を手に入れることができれば、必要な技術は少しずつ備わっていくことになります。
「書くことが好きになる」と「自分の人生が好きになる」。これが車の両輪のように回って、自分史を書き進めることができれば理想的ですね。