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北海道の仕事と暮らし42 地域の読書文化をどうするか

北海道の仕事と暮らし42 地域の読書文化をどうするか

おはようございます。
 元旦は自宅にこもりっきり。資料を読み込んでいたら昼食を食べるのを忘れた。午後2時頃、知的体力が限界に近づいていた。映画や教養番組を見て過ごす。頭の中ではおおよそながら考えがまとまってきた。あとはこれを16000字ほどの文章にまとめるだけ。

八戸ブックセンタ

資料を読み込んでいく中で、気になる記事と出合いました。それはつい10日ほど前の日本経済新聞にあった「活字離れ、本に反転攻勢の動き」というもの。いくつか載っている事例の中で、僕は「八戸ブックセンター」が妙に気になりました。
 僕は八戸ブックセンターの存在を知りませんでした。調べてみると、2016年12月開店。最大の特徴は青森県八戸市の公営書店であるという点。図書館ではなく書店を経営しているのです。といっても、民業を圧迫するようなものではなく、「本との出合い、触れ合い」を行政が支援し、市内書店や図書館と連携しながら、まちを盛り上げる施設とのこと。日経の記事には「来店者月平均8000人」とありました。販売書籍数は1日平均32冊(Wikipediaによる)。民間では経営不可能な販売数です。最初から数千万円の赤字が出ることを見込んでの開設といえるでしょう。
 一般財源から年5千万円を投入してまで運営する目的は、「5年、10年後を見据え、市民に読書の文化を根付かせたい」というものでした。図書館でもよいではないか……という議論もあったと思いますが、「販売している」というところがポイントですね。ネットの普及により、情報はタダといった認識の人が増えていますが、当然ながらタダではありません。一冊の本を生み出すには相応の労力とお金がかかっている。八戸ブックセンターが書店という形態をとっているのは、「気に入った本は所有すべきもの」という思想が根底にあるためでしょう。
 書店のない自治体が増えています。ネット書店で買えるから不自由はないと考える人もいるでしょう。しかし、自分の人生を変えるような本に書店で偶然出合う、という機会は激減しました。書店も昔に比べると変わりました。多くの中小書店に置かれている本はマンガや売れ筋の本ばかり。売上を考えると、そうした品揃えは致し方ないとはいえ、何か物足りないものを感じている人も多いに違いありません。
 僕は「活字離れ」が進んでいるとは思っていませんが、「本離れ」が進んでいることに危機感を抱いています。税金から5千万円を支出するというのは、地域の文化レベルを高めるためと考えれば、実に適切な使い方だと思います。八戸ブックセンターで扱っている本は、民間の書店ではなかなか売れない専門書が中心。トークショーや読書会を開催したり、ドリンクを飲みながら本が読めるなど、人が集まる工夫が凝らされている。来店者のニーズや好みを市内書店に情報提供しているといった取り組みも興味深いところです。
 本離れの状態を放置したままの自治体と読書文化を育む自治体。将来、両者にどのような違いが生じることになるのか、気になるところです。

文章表現力の問題

本離れが進んでいる要因のひとつに、「文章表現力」の問題があるのではないか……。僕はそう考えています。これは、僕自身が「熱心な読書家とはいえない」ことと関係しています。
 知的好奇心や情報収集意欲はあっても、一冊読み終えるだけの集中力を維持できる本が少ない。いいことが書いてあっても、読み進むのに苦痛を感じるような本が多いような気がするのです。それは僕の知的体力や読解力に問題があるのかもしれません。けれども、中にはぐいぐい引き込まれるように読み進むことのできる本もある。ですから、僕の問題だけではなく、表現力の問題も大きいのではないでしょうか?
 やさしいことをやさしく伝える。これは比較的たやすい。難しいことをできるだけやさしく伝えようとする。これは難度が高い。けれども、本を手にする人は多くの場合、専門家ではありません。専門的なことを専門的な言い回しで書くのではなく、可能な限り一般人にも伝わるような文章表現が求められる。専門性が高まれば高まるほど、一般人には理解困難な文章となっている本が多い。これはやむを得ないことかもしれません。有能な編集者が何とかすべき問題でしょう。
 ネットの場合、「閲覧されること」が重要ですから、ものすごくわかりやすく書かれている文章に出合うことが多い。わかりやすい一方、疑わしい情報も多く、別な意味でストレスを感じることもあります。紙の本の場合、ネットと比較しての話ですが信頼性は高い。
 正確性にこだわりすぎることなく、わかりやすさに徹して人々の知的好奇心を刺激するような本が求められています。ベストセラーになるような本は、そうした条件をクリアしたものといえるでしょう。そうではない地味な内容の本であっても、伝わりやすい文章表現に徹することで読書文化の裾野が広がっていくことになるのではないでしょうか?
 印刷媒体の他にはテレビ、ラジオ、映画くらいしかなかった……という時代には、誰もが苦労して難解な本を読み解いていた。その結果、妙に理屈っぽい話を好む人の多い世代もあります。今は写真も動画もSNSも、情報を受信するだけではなく、自ら気軽に発信できるような時代。情報流通量が爆発的に増えました。今では「わかりにくい」というだけでスルーされてしまうというのが現実です。
 そんな中、本当に意味のある情報を伝えるには、著者も出版社も書店ももっと工夫を凝らさなければなりません。レベルを下げるのではなく、伝え方を変えたり、場を提供したり、別なツールと組み合わせるといった仕掛けが必要でしょう。
 我が社ももっとよい方法を考えなければいけないなぁ……。きっと地域出版に合ったやり方があるはず。ですが、まだ僕の頭に妙案は浮かんでいません。

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