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北海道の仕事と暮らし73 6次産業化論の前に……

北海道の仕事と暮らし73 6次産業化論の前に……

おはようございます。
 朝起きると、めずらしく雪が降っていた。少し早めに出発。8時半、本別にある北海道立農業大学校に到着。9時から「6次産業化論」の講義を担当。僕に期待されていたのは、効果的なPR方法とか、パッケージデザインといったものだった。しかし、話のメインはテクニカルなものよりも、マインド的なところに置くことにした。たとえ10%しか伝わらなかったとしても、その10%が大事だというのが僕の考え。約3時間の講義を行いながら、10%は伝わったはずだと感じた。帰宅後、次世代幹部養成塾の準備、同窓会報の制作準備、各種事務的作業等。予定よりもずいぶん遅れている。またしても締め切りに追われてきた。

歴史・文化を知る

商品は「理念が具現化したもの」ですから、健全な経営理念を掲げれば好ましい商品ができ、不健全な経営理念を掲げれば好ましくない商品ができあがる。ものすごく単純に言うと、そういうことになります。
 実際のところ、不健全な経営理念を掲げる企業、事業所はないはず。理念が明文化されていないところであっても、「人や世の中の役に立つ」という思いで経営している企業が多数を占めているに違いありません。
 しかし、その理念は本物なのか? そう問われたとき、確信を持ってイエスと答えられるかどうか。それは本人にしかわかりません。立派な経営理念を掲げていても、人の心は常に揺れ動いている。中には不健全な方向へなびいている人もいるかもしれません。
 立派な理念と不健全な気持ち。こうした状況の中でできあがる商品は、どちらかというと好ましくない商品となりやすい。常に好ましい商品をつくろうと思えば、理念が自社の隅々にまで浸透していなければならない。また、そうなるようなパワフルな理念であることが条件となってきます。しかし、現実にはそうした圧倒的な力を持つ経営理念を持っている企業は少ない。我が社にしても揺れ動く心を引き戻すだけの力を持った理念になっているとは言い難い。そういう理由もあって、僕は毎日理念について考え続けずにはおられないのです。
 昨日の講義の参加者は、全員後継者。それも3代目、4代目、5代目という人たちでした。創業者には創業者の大変さがあるものです。同様に、後継者には後継者としての大変さがある。それはたぶん、どの業種にもいえることでしょう。
 僕は可能な限り、「創業の精神」についてストーリー化することを勧めました。創業の頃の労苦を直接的に知ることができれば、それが一番望ましい。3代目の場合はギリギリ可能でしょうか。4代目、5代目となると、当事者から直接話を聴くのはほぼ不可能。残っている記録をできる限り集めるほかありません。
 そのようにして「創業の精神」と自社(農場)の歴史・文化を知ることが、後継者としてやらねばならないこと。これをしっかり行うと、自社に脈々と流れているDNAのようなものを感じるようになり、それを自分も受け継いでいこうという気持ちになるものです。
 後継者としての自分を実感できるようになると、今度は「少し違和感を感じている自分」にも気づくことになるでしょう。自社の歴史を調べた後は、自分史の謎を解明しなければなりません。僕は40歳を過ぎてから自分史年表をつくったため、けっこう時間がかかりました。20代の人であれば、僕の半分くらいの時間でできそうです。こうしたことは若いうちに取り組んでおくべきですね。

テクニックよりマインド

企業にも農場にも絶えず経営革新が求められます。経営環境の変化が激しい今日ではなおさらのこと。伝統をそのまま引き継ぐだけでうまくいくというケースは、ほとんどないと考えるべきでしょう。
 自社のこれまでの伝統の上に、新しい文化を築いていく。後継者にはそういう意欲が不可欠です。そこで、「創業の精神」をストーリー化し、自社の歴史・文化を知ったときに感じた「ちょっとした違和感」が重要になってくるのです。自社はこのままでよいのだろうか? そんな疑問に対して、後継者は答を見つけ出さなければなりません。
 「創業の精神」と「後継者としての自分の意志」。両者が組み合わされたとき、自社の中に新たな文化が創造されていくことになります。後継者としての意志を強力に押し出すか、これまでの伝統になじませるように徐々に浸透させていくか? このあたりはどちらがよいとは言い切れません。
 6次産業化においては、確かに農産物や農場の効果的なPR方法を知ることが重要となるでしょう。しかし、テクニックだけ覚えるのは危険なこと。まずは後継者としての自分のマインドを健全な状態に保つことが大切です。自分が本当に大切にしたいものは何なのか。どのような経営を行い、どんな地域をつくっていきたいと考えているのか?
 理念とビジョンがあってこそ、魅力的な商品が誕生することになるわけです。商品としての魅力が乏しい段階で、マーケティングのテクニカルな情報をインプットすると自社を誤った方向へ導いてしまうことにもなりかねません。
 昨日の聴き手は3~5代も続いている農場の後継者たちでしたから、つくっている農産物に魅力や価値がないはずはありません。価値ある農産物の背景にある精神やストーリーを知ることが最初に行うべきこと。次に、新たに付け加えるべきものは何なのかを見つけること。その上で、マーケティングに関する知識・技術を習得していけばよいでしょう。
 手っ取り早く何かを得ようとすると、一時的な成果は得られても長続きしません。本当に大切にすべき人生の知恵は、長く仕事を続けてきた先人たちの思想・哲学の中にあるような気がします。その本当の意味するところを理解できるようになるのは、どちらかというと人生が後半に差し掛かった頃のこと。今はまだ解明不可能な謎がある。そう自覚するだけでもよいのではないかと思います。人生の楽しみは後半にとっておくべきでしょう。

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