おはようございます。
午前中は休日として過ごす。午後1時、十勝経営者大学経済学コース第4講。講師は帯広畜産大学の仙北谷康教授。2部構成。前半は「あたらしい経済学と商品の価格」、後半は「十勝産商品の進む路」だった。さまざまな商品に見られる「実質値上げ」がどのようして行われているのか、よくわかった。前半の講義の中心となった行動経済学は、さまざな場面で活用できる考えであることが理解できた。後半はおもに6次産業化と農商工連携について。川上、川下にある業種と「対抗」ではなく「協力」することが重要。このあたりの意識改革は近年、ずいぶん進んできていると思う。4時半帰宅。それから買い物へ。食事会のための買い出し。夜は7時間半、たっぷり眠った。
価格設定と内容量
スーパーへ行くと「実質値上げ」されている商品が実に多いことに気づきます。消費者も敏感なはずですから、値段はそのままでも内容量が減少していることに気づいているはず。ただ、価格が上昇するよりも中身が減少するほうが心理的抵抗が少ないということなのでしょう。
今朝になって気づいたのは、消費者が「量」を求めなくなってきているのではないか、ということでした。日本全体が高齢化していますから、食品の場合、ひとりあたりの食べる量は減少しているはず。核家族化、そして単身世帯が増えたことにより、消耗品を大量に買い求める必要はなくなってきています。
つまり、実質値上げしやすい社会環境にあるのではないか? もしかすると、「価格設定」と同様、「内容量」の適正化を図ることがメーカーにとっては重要ではないかと思い至りました。
十勝経営者大学が終わった後、買い物に行きましたが、「これはどうなのだろう?」と思う商品に出合いました。韃靼そば茶500グラム、3400円(正確な金額は忘れました)。確か、POPに「お徳用」と書かれていたと思います。僕は30秒くらい迷いました。
500グラムもいらないんだけれど……。100グラムか200グラムなら迷わず買うところ。でも結局、買いました。500グラム入りを。きっと、購入をあきらめる客もいるのではないかと思います。お茶として500グラム消費するのは容易ではありませんから。ちなみに、僕はお茶としてではなくそのまま食べることが多い。韃靼そばの苦味はやみつきになります。
多すぎることもあれば、少なすぎると感じるケースもありますね。立派な箱に入っているのに中身がほんのわずかしかない。ほとんど空気が詰まっていると思うような商品もある。単純に箱を小さくするほうが運送費がかからなくていいような気がします。実質値上げの限界点に達した商品というべきかもしれません。
そんな観点からスーパーを歩いてみると、いろいろおもしろい発見がありそうです。
あまり目立ちませんが、「実質値下げ」ではないかと思う商品にも気づくでしょう。これは洗剤に多い。「50グラム増量」などとパッケージに書かれている。ところが、よく見ると増量していない他社商品のほうが価格が安く、増量していても割高に感じることもあります。差別化しにくい商品では、こうした価格と内容量をめぐる攻防が活発に繰り広げられているのでしょう。
対抗から協力関係へ
さて、我が社の商品に目を転じると、「実質値上げ」ができそうなものは皆無に近い。もしできるとすれば、雑誌のページ数を減らすか、価格の安い紙に変更することくらいでしょうか。しかし、商品の魅力度を落とすような意思決定はまず考えられません。出版、広告、印刷。どの商品も実質値上げには縁遠い。
そんな中、原材料費、運送費をはじめ、いつの間にかコストが上昇しています。我が社の商品には、値上げできるものとできないものとがあります。何も手を打たぬままでいると単純に利益が減少することになる。ですから、「不要なコストを圧縮する」「生産性を高める」「値上げをする」のいずれかを実施しなければなりません。
スロウの通販はどうなっているのだろう? そう思って確認してみたら、スロウ1冊の送料は200円となっていました。以前は送料無料。しかし、大幅に値上げされた結果、読者の方々に送料を負担してもらわなければならなくなった。ただし、定期購読では今も送料無料を維持しているようです。このあたり、他の出版社はどのようにしているのだろう? 気になります。
紙媒体である限り、紙、インキをはじめとする原材料や運送費の価格変動に影響を受けることは避けられません。「モノ」を扱う限り、どの業界でも同様でしょう。
原価が上がっているわけですから、値上げしにくい業種であっても、値上げをするべきである……。これがひとつの正しい考え方。ただ、需要が冷え込むというリスクも当然ある。運送業界の場合は値上げが浸透し、大手各社とも増益に転じているようです(中小はどうなのでしょう?)。需要家の理解が得られれば値上げはもっとも正しい解決法。
値上げによって需要が落ち込む可能性が高い業種の場合、どうすればよいのか? 僕はずっとこの問題について考えています。結論としては、業態変革に取り組む以外にありません。印刷に軸足を置きながらも、原材料費に左右されない商品を開発する。我が社の場合、多角経営にはならないでしょうが、印刷に一極集中させるのではなく、多極経営といったものになっていくことでしょう。長年の印刷事業を通じて培った編集力、制作力を印刷商品以外にも展開していくという考え方。我が社の場合、まだまだ道半ばといえます。
消費者の意識は少しずつ変わってきています。昨日の講義の後半にあった「対抗関係と協力関係」。生産者と消費者との関係も、昔とは違って「協力関係」に変わりつつあります。商品を購入することで、生産者や企業を応援しようという消費者が増えつつある。たゆまぬ企業努力は当然のこととはいえ、地域経済循環率を高める意味でも、消費者の「協力」に期待したいところです。