おはようございます。
取材というよりも、中川町内の視察。津和野町3名、中川町2名、移住希望のY氏と同行。工房、林業の現場、そして数棟の建物。中には歴史的建造物もあった。そこには無数のエピソードが秘められているようだった。午後3時頃、取材・視察終了。帰途につく。途中、2度ほど仮眠。三国峠と糠平温泉の間、鹿が道路の真ん中で仁王立ちしていた。スピードが出ていなくてよかった。そんなことが2度起こった後、今度はエゾユキウサギ(たぶん)が道路を横断した。全身真っ白だった。十勝では初めて見た。8時帰宅。
体験型の先にあるもの
中川町へは日帰りするには厳しい距離(不可能ではない)。通常は1泊、たまに2泊することもあります。たとえば、1週間くらい滞在してみたらどう感じるのだろう? そんなイメージがふくらむ今回の取材・視察旅行でした。
暮らすように旅する人もいれば、旅するように暮らす人も増えつつあります。風来坊という意味ではありません。地元目線、生活者目線で旅をしたいという旅行ニーズは着実に増えているはず。一方、地元で暮らす人の中には、旅行者の視点を取り込みながら、日々の暮らしをワクワクするものにしたい……と考えている人も多いでしょう。
「旅する」と「暮らす」がこれほど近くなっている時代はありません。誰もが旅行者になることができ、その気になれば、誰ものが世界中の町の町民になることができる。両者を隔てているものがあるとすれば、それは住む(または宿泊する)場所の違いということになるでしょう。
旅行者は宿に泊まり、住民は自宅に住んでいる。あとはグレードの違い……というのがこれまでの常識でした。民泊が登場し、両者の境界はずいぶん曖昧なものとなっていきました。また、これとは別に移住促進を目的とする「ちょっと暮らし」の施設も増えています。以前、ちょっと暮らし施設が単なる安宿のように使われることがある……という話を聞いたことがあります。しかし、真剣に移住を検討している人にとっては貴重な体験となるはずです。
国内旅行者数が落ち込んでいた時期がありました。今はずいぶん回復基調にあるようです。インバウンドも今なお増えていますから、観光関連産業はこれからも拡大していくことでしょう。
そんな中、これまでの「体験型」旅行では物足りないと感じる層が増えていくのではないか、と僕は考えています。もちろん、旅行の中には「体験」という要素が欠かせなくなりつつある。しかし、もう一歩踏み込んだ何かが求められていると思うのです。
僕はその感覚をちゃんと理解しているというわけではありません。たぶんこういうことなのだろう……。そう考えているものがあるのですが、正しいかどうかわかりません。
というのも、僕のふだんの旅行は、仕事の要素が大半を占める取材旅行であるからです。取材では「体験」を超える体験がありますし、取材相手の生活や人生に深入りすることとなります。場合によっては、近所に住む人よりもその人の人生の深みを知るというケースもある。
加えて、取材の場面では「逆取材」を受けることも案外多いもの。求められれば、自分の人生の一部を語ることもあります。したがって、取材相手との距離は縮んでいき、何度も訪れるうちに気心が知れた仲になっていく……。
一緒に何かをつくり出す
スロウを創刊してもうすぐ15年。取材を通じて知り合った人たちが道内各所にいます。老後を語るのはまだまだ先の話ですが、今よりももう少しスロウペースで仕事ができるような身分になったら、道内各所で「半住民」のような暮らしをするのもおもしろいかもしれない……と考えることがあります。
僕と同じようなことを考えている人も案外多いのではないか? そんなところから、去年あるアイデアが浮かびました。似たような考えを持つ何人かの人と複数の場所にタイニーハウスを共有する。別にタイニーハウスに限定することはなさそうですね。普通の民家でもいい。公共料金をどうするのかといった問題はあるでしょうが、シェアをして、必要な人が必要なときにそこの泊まる(または暮らす)。
そんな半住民体験をすると、その町の別な魅力や知らなかった可能性のようなものが見えてくるのではないか? 魅力と同時に欠点も見えてくることになるでしょうが、マイナス面もひっくるめて好きになること。それが真の地域エンゲージメントでしょう。
町にいろんな人たちがやってくると、もともと住んでいる人たちも何かしらの刺激を受けることになります。そこにちょっとした抵抗感や摩擦が生じることになるのかもしれません。ですから、半住民型旅行を試みる人には地元ルールに従うなど、なじむ努力が求められるでしょう。ただ、そこから得られる体験は通常の旅行では味わえないものとなるような気がします。
旅行需要が増えていくにつれ、「おもてなしの質を高めよう」とする動きも強まってきています。「北海道には富裕層のニーズを満たす高級宿が少ない」という声もあります。そういう旅行ももちろんあってよいのですが、たぶん我が社のツアー事業は別な価値観から進められていくことになるでしょう。
サービスを提供する側と提供される側がハッキリ色分けされるような旅ではなく、その立場が入れ替わったり、一緒に何かをつくりだすために協力し合うような旅。もはや旅行という範疇を超えるようなところに真のおもしろさがあるのではないか。
これは僕の個人的な考えであるため、今後、我が社ではさまざまなツアー商品がつくられていくことになるでしょう。
ただ、どのようなツアーであっても、「旅行者の成長につながるもの」「地域の魅力や価値を高めるもの」であることが重要。そうしたコンセプトをもっとも短く表現すると「半住民型旅行」という言葉になります。語感がイマイチかな? もっと別な言葉を考えてみることにします。