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北海道の仕事と暮らし91 著作権セミナー

北海道の仕事と暮らし91 著作権セミナー

おはようございます。
 朝から午後6時まで、ほぼ一日自宅にこもってパソコンに向かう。午前11時までは社内報の原稿作成。続いて、写真選びと画質調整。午後2時頃からは次世代幹部養成塾の準備。いつも感じることだが、パワーポイントのスライドを美しく速くつくる方法はないものか? 80%仕上げた時点で時間切れ。とかちプラザへ。
 6時半から印刷工業組合の著作権セミナー。講師は全日本印刷工業組合連合会(全印工連)の池尻淳一専務理事。テーマは「身近な事例から学ぶ〝印刷会社の著作権〟 ~著作権の基礎と官公需における取り扱い~」というものだった。年度末とはいえ人が多い。我が社からも多数参加していた。関心度の高さがうかがえる。セミナーは非常にわかりやすいものだった。僕は同様のセミナーを受けたことがあるので、いい復習となった。

印刷会社は被害者にも加害者にもなり得る

19年前、ソーゴー印刷に入社して驚いたことのひとつ。それは「十勝は(北海道は……というべきか)著作権無法地帯かもしれない」ということでした。北海道には限らなかった思います。日本全国、同じような状況だったのでしょう。著作権法は1970年から存在していますが、その中身を知っている人も守ろうとする人も少なかった。それぞれ、自分の感覚で「このくらいならいいだろう」と思って著作権侵害が平然と行われていたというのが実態。
 当然、「このくらいなら」の感覚には個人差があります。当時はかなりゆるい(というか確信犯的な)人が多く、法破りを強要された印刷会社や著作権を侵害されても泣き寝入りせざるを得なかった著作権者が多かったのではないかと想像します。我が社でもたぶん日常茶飯事だった。
 この異常な状況を改めようと、当時の月刊しゅん編集長が動いたことがありました。著作物の適正な取り扱いについて、一部ルール化されたと記憶しています。2000年代は著作権に対する認識が少しずつ広がっていった時期。新聞にも著作権侵害に関する記事がときどき載っていました。
 10数年経って、著作権をめぐる環境はずいぶん変化してきました。すべていい方向へ向かっているのならよいのですが、そう簡単にはいかないものです。「まったく変わらないもの」と「かえって悪くなったもの」とがあります。
 SNSの普及により、個人による情報発信量が劇的に増えていきました。SNSは2010年代に生まれた著作権無法地帯。ただ、著作権侵害によるマイナス面だけではなく、拡散することでメリットが生じるというケースも多い。著作権侵害黙認地帯というべきでしょうか?
 著作権に関して多くの人は、「ちゃんとは知らないが何となく知っている」というレベルにあるでしょう。印刷会社や出版社は著作権侵害による被害を受けやすい業種。と同時に、気づかないうちに他者の著作権を侵害してしまう……という加害者にもなり得る業種。
 昨日のセミナーでは、被害者と加害者、どちらにもなり得るという両面のリスクに対する備えについて語られていました。

中間生成物の著作権

著作権の中にはわかりやすいものとわかりにくいものとがあります。よく考えるとわかることなのですが、中には知識不足によって著作権破りをするクライアントもいます。
 たとえば、「写真を無断で使った」となると明らかな著作権侵害。しかし、一度印刷物で使用した写真を別な媒体に使い回しをした……といった侵害事例となると、さほど悪意なく行われているのではないか? 悪意がないがゆえに著作権者にとっては扱いにくい。しかし、法の遵守を粘り強く訴えかけていく必要があるでしょう。一社だけでは「著作権にうるさい会社」と思われてしまいますから、業界全体で働きかけることが重要。組合の存在価値はこのあたりにあるといえそうです。
 日本中の印刷会社が被害を受けていると思われるもののひとつに「中間生成物」があります。印刷会社は顧客に印刷物を納品し、その対価を受け取る。そこで仕事が完了する。ところが、著作権を理解していない顧客の中には、中間生成物である版下、フィルム、各種データまで「自分の所有物」であるかのように思い込むというケースがあります。
 一番ありがちなのは、「PDFデータを一緒に納品して」というようなケースですね。調べたわけではありませんが、たぶん半ば常識にように行われているような気がします。顧客に渡したPDFはネット上にアップされたり、プリンタで出力され、配布されることになる。
 中間生成物には印刷会社に所有権があります。10年ほど前、日本グラフィックサービス工業会(ジャグラ)で受けたセミナーの中でも、この点が強調されていました。裁判でも100%「所有権は印刷会社に帰属する」という判例が出ています。それなのに、印刷会社は立場的に弱いためなのか、いとも簡単にPDFを渡してしまう。
 昨日のセミナーでは、印刷データの所有権は印刷会社にあっても「著作権が100%自社にあるとは限らない」という話が出てきました。写真、デザイン、イラストなどを外注しているようなケース。そんな印刷データ=PDFを顧客に渡してしまうと、今度は印刷会社が加害者ということになるわけです。本当に気をつけなければなりません。
 官公庁が知的財産権(著作権・産業財産権)の保護に向けて動いているという話もありました。「平成30年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の中には、「知的財産権の財産的価値について十分留意した契約内容とするよう努めるもの」と書かれています。中小企業庁のリーフレットには電子化データ(PDF等)への配慮についても追記されていました。
 著作権法は比較的わかりやすいものですが、グレーゾーンがやけに広いようなところがあります。社員の裁量に任せるのではなく、我が社としての判断基準が必要だと感じました。この問題はもっとシビアに捉えなければなりません。

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