
おはようございます。
午前9時半、帯広へ向かう。最短ルートを走ったが、除雪渋滞。30キロ走行。12時15分帰宅。昼食後、同友会事務所へ。1時からとかち経営者大学第8講。釧路公立大学経済学部の東裕三講師。「企業の行動理論基礎」「企業立地の理論」「地方公共財の最適供給」の3部構成。夕方からは休日として過ごす。
「利潤の最大化」より「適正利益の確保」
企業経営の目的は「人を幸せにする」という言葉に集約されるに違いない。そう思うようになったのは、道内各地で取材活動を行うようになった2004年以降のこと。幸せをつかむため、あるいは幸せであることに気づくため、魅力的な活動を行っている人が道内には大勢いる。個人も企業も本当に求めているものは幸せであり、それは「人を幸せにする」ための活動によって手に入れる(または気づく)ことができる。遅ればせながら、僕もそのような事実に気づくこととなりました。
会社が危機的状況にあると、その当たり前の事実に気づかなくなることがあります。また、同業他社との競争が激化すると、本来の目的を見失ってしまうことがある。企業の目的は「利潤の最大化」だと錯覚してしまうのです。それは手段であって目的ではない。多くの地域企業経営者はわかっているはずですが、厳しい現実が経営者の目を曇らせることもあるのです。
経営理念というものは、「自社の事業活動を通じてどのように人を幸せにするのか、その道筋を表したもの」ではないかと僕は考えています。世の中にはさまざまな経営理念がありますから、ひとくくりに考えることはできないかもしれません。しかし、究極的には「人の幸せ」につながっているはず。
そう考えていくと「利潤の最大化」というのは、経営目的とも経営理念とも相容れないものではないか? そんな疑問が湧いてきます。利潤を最大化しようとすると、そのしわ寄せがどこかに現れる。自社の利潤を最大化しようとして、仕入先への値引き圧力を強めると、自社の利幅が拡大し、仕入先の利幅が減少することになります。それは相手にとって幸せなことではない。同時に、自分にとっても幸せとはいえない。結局のところ、人を幸せにするような経済活動を行わなければ、人は幸せだと感じない。そうではないタイプの人もいるのかもしれませんが、僕の知る限り、人間はそのようにできているはずだと思います。
「利潤の最大化」ではなく、「適正利益の確保」というのが、経済活動においてもっとも妥当な基準となるでしょう。
2000年、ソーゴー印刷に入社したばかりの頃、組合のポスターだったと思いますが、「適正利益の確保」という言葉を見つけました。印刷業界は適正利益が確保できていない業界なのか……。すでに業界では過当競争となっていました。付加価値が目減りする中、どうすれば生き残れるか? 業界全体、いえ、日本全体がそんな不幸な状況にあるようでした。
今もその状況が大きく変わったとは思えません。他社の利益を削って自社に組み込もうとするような会社は少なくありませんし、何が幸せであるのかすらわからなくなっている会社、企業経営者がいることも事実。しかし、バブル崩壊後の20数年間を通じて、多くの人が「幸せとは何か」について深く考えるようになったのではないかと思います。僕自身考えさせられました。
僕にとって、経営指針成文化とは「幸せとは何か」を考えることでした。
理念体系と教育体系
幸せであるかどうか? それは本人が感じ取るものですから、「人を幸せにする」といっても、思い通りになるものではありません。幸せにつながるような活動をするということ。ここに企業の事業活動の方向性があるといえるでしょう。
我が社の場合は「価値ある情報の創造、発信、記録」というのが事業の方向性です。幸せにつながるような情報かどうか。そこに価値基準がある。ですから、人を傷つけたり不快にさせるような情報を発信するようなことがあってはならない。そう考えています。もちろん、我が社には未熟なところがたくさんあります。理念通りになっていない部分もあるでしょう。しかし、社員全員、それぞれの仕事を通じて、人を幸せにするような活動を行っていることと思います。
2002年10月。我が社の経営指針書(中期ビジョン及び第43期経営計画書)が完成し、その中で初めて我が社の経営理念が明文化されることとなりました。そのときの経営理念は次のようなものでした。
「ソーゴー印刷は価値ある情報を創造、発信、記録することによって、社会に貢献し続けます」
来る日も来る日も理念について考え続け、昔の社内報を丹念に読み返し、古参幹部から話を聴くなどしてまとめ上げた経営理念。自分としてはこれ以上のものはできない。そう思っていったん完成させました。ただ、何かが足りない……。そんな感触があって、さらに考え続けることになりました。
ある先輩経営者の言葉をヒントに、「人の幸せ」に関する言葉を加えるべきだ、と数年後気づくこととなりました。2008年改定。
「私たちは価値ある情報を創造、発信、記録することによって、豊かさと幸せの輪を広げます」
社会貢献=自分の幸せ。即座にそう解釈できる人は多いとはいえません。社会貢献を自分の幸せと捉えることのできる言葉に変換しよう。そう考えた結果、「輪を広げます」という言葉に落ち着きました。この言葉が浮かんだ瞬間のことをよく覚えています。
この経営理念改定をきっかけに、「もっと先のことを考えねばならない」と思って始めたのが次世代幹部養成塾です。幸せとは「豊かであることを実感している心の状態」であると僕は考えています。そのためには人格的成長が欠かせません。理念経営を行うには人材育成に熱心になる必要がある。必ずしも思い通りになっているとは言い難いのですが、理念体系を整備したように教育体系を整えていかねばなりません。